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長い目で見れば(3月21日~3月27日)

3月21日(月)曇りのち晴れ

最近の目標は、もっぱら住む街と仲良くなること。この街には、Instagramで話題になったり、POPEYEやHanakoに載るようなお店はない。でも、誰かが丁寧に編集してくれた情報を受け取るよりも、自ら足を運んで見つける方がずっとわくわくする。

だからのんびり読書するのに、みんなが「おいしい」と口を揃えるカフェではなく、敢えて、「家の近くにある」を第一条件にくつろげる場所を探した。

すると、家から車で5分ほど離れた場所に、ログハウス風の喫茶店を発見。こじんまりとした駐車場でもたもたしていると、中からマスターが出てきて親切に「バックオーライ!」の指示を出してくれた(そうでもしないと、どこかにぶつけそうだと心配だったのだろうけど・・・)。

店内に入ると、やっぱり素敵だった。外から見てログハウス風の建物は、内装もあたたかなかわいらしさがあり、懐かしい心地のするジャズが響いていた。きっと彼も好きだろうなぁと思って、LINEを送る。毎日の通勤路にこんな隠れ家があったとは、本当に灯台下暗しである。

3月22日(火)雨のち晴れ

今日は終日撮影。初めての布陣で臨む撮影はどっと疲れる。日頃の運動不足も疲れやすさの原因だろうか・・・。すぐにでも帰ってお風呂に浸かりたい気分だったけれど、今日中にやっておきたい仕事があり、今宵も今宵とてグリーンマークのカフェへ。1時間ほど作業をし、くたびれて帰る。

眠気に勝てず、彼が帰ってくるギリギリのところで眠りに落ちてしまった。彼が寝る直前にぼんやりと起き、「二人で過ごす時間が足りていない」と言われて、「そうだね」と思う。

生活がすれ違いコミュニケーションの量が減ると、ふと、お互いの楽しみを応援できなくなる瞬間がある。自分との時間よりも”その他あまたのこと”を優先される寂しさから来るのだろうか。好きな人の幸せを願えないだなんて、そんなのいちばん寂しい。お互いが一緒に幸せになれる生活の形を、手探りしている。

3月23日(水)晴れのち雨

先日、ドライブのお土産で買ってきた「蒜山やきそば」を彼が作ってくれた。やきそばとビールの組み合わせは、まだ春なのに夏祭りみたいな味がした。夕方に目覚め、すき家で牛丼とカレーを食べたという彼は(なんて豪快な休日!)お皿の半分以上を残し、私が1.5人分食べた。

最近、お行儀は悪いかもしれないけれど(?)湯船に浸かり、ある程度身体が温まったらお風呂のドアを開けながら入るのがすき。ひんやりとした空気がお風呂に流れ込み、露天風呂のような感覚を味わえるのだ。

擬似露天風呂で疲れをとった後は、溜まった朝ドラを一緒に観て眠った。なんて平和な一日。

3月24日(木)晴れ

久々の取材。おうち取材って大好きだ。家そのものや家具のひとつひとつに、その方の生活や大切にしているものが垣間見え、より深く想像することができる。

夜ご飯までご馳走になって、賑やかな家族の食卓に混ぜてもらうひとときは、とても幸せな時間だった。後ろ髪を引かれながらも、「早く彼に会いたいな」と思い急ぐ帰り道もいい。家の最寄駅に着くと、駅前で彼が待っていてくれて、こういうささやかな優しさがだいすきだなと思う。

彼は彼でひとりの休日をうんと満喫し、私は私で貴重な時間を過ごし、彼のことをもっと好きになれた夜だった。目の前のことだけでなく、長い目で見たら、こんな夜になった。彼と過ごす時間よりも仕事でのご縁を優先してよかった。それぞれが選んだ1日を楽しみ尽くし、手を繋いで家路に着ける関係に感謝した。

3月25日(金)晴れ

今週は4日出勤にも関わらず、一週間がとても長かった。なぜだろう、2週連続でそんなことを思っている。1日あたりの睡眠時間が足りていないのか。すべきことに集中できていないのか。

3月26日(土)雨時々曇り

心ゆくまで一日中だらっだらした。昼間から日が沈む直前まで、ぶっ続けでNetflixのドキュメンタリー番組『FOMULA1 栄光のグランプリ』を観た。レースはとっくのとうに終わっているというのに、将来の行方に手に汗握りながら観てしまう。

F1は3月末にシーズンが始まり、シーズンが終わる11月中頃まで、世界の国を転々として進んでいく。その間、ドライバーとチームメンバーは家族と離れて戦うことになる(奥さんや彼女が観戦に来ることもよくあるようだけれど)。

生活をあからさまに犠牲にし、いつ命を落とすかすらもわからない。番組の『栄光のグランプリ』というのは邦題で、原題は『Drive To Survive』。生き残りをかけて走っているのだけど、事実として、彼らは命懸けで闘っている。彼らの”本気度”が観ている者にも伝わり、たとえサーキットにいなくとも、アパートの一室でアドレナリンがドバドバ湧き出てしまうのだ。

私の普段の価値観からすれば、F1なんてスポーツは、命を顧みず高価なマシンを平気で粉々にし、お金持ちだけのやる、なんて馬鹿げたスポーツだ、と吐き捨てたっておかしくない。でも彼らの燃えたぎる情熱を、弛まぬ努力を、そこから生み出される技術を、「意味がない」だなんて到底思えない。いいときも、悪いときも。積み上げた努力に何度裏切られても走ることを辞めない彼らを見ていると、こんなにも力をもらえる。

この頃、大抵のことに「絶対」などないのだと、やっと頭ではなく実感としてわかってきた感覚がある。すべてはどこから見るかで変わり、おもしろいも、美しいも、かっこいいも、自分の有り様で変わってしまう。そんなグレーだらけの世界だからこそ、楽しくてたまらないんだと思えるようになった。

3月27日(日)晴れ

朝早く起きてひとり車で瀬戸大橋を渡るはずだったのに、目覚めたらお昼前でがっかり。予定変更で、岡山側から瀬戸内海を臨むことに。この景色を見るたび、岡山に住むことを迷いなく決めたときのときめきを思い出す。

夜、過去で一番忙しかったらしい一日を乗り切った彼が0時過ぎに帰ってくる。いつも通りソファに座っておしゃべりをすると、「仕事の鬱憤は仕事で回収したい」と今後の意気込み(?)を話してくれた。今の彼にとっても、私にとっても必要な言葉だと感じ、うれしかった。休日、どんなに自分を甘やかしても、やるべきことがやれていないうちは真の休息は得られない。

長い目で見たら、「今が踏ん張りどき」なんだろう。「踏ん張りどき」はそんなに長く続けられないからこそ、メリハリつけて、今だけの時代をめいっぱい味わえたらなと思う。


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