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中国茶のある暮らし――2月のお茶「普洱生茶」

長い歴史に磨かれた豊かな中国茶の世界。
四季折々の甘味や食に合わせるお茶を、中国政府公認高級評茶員・茶藝師の澄川鈴が提案します。
心に余裕がなくなりがちな日々だからこそ、めぐる季節を愛で、自分を癒すひとときを。
そして、お茶を通して見える中国の人々の素顔と暮らしにも、ほんの少し触れていただけたらと思います。

2月のお茶請け「水餃子」

 春節快楽!
 先月に引き続き、あけましておめでとうございます! 中国最大のイベントである春節の到来です。

 春節とは、農暦(中国や台湾で用いられている暦。日本の旧暦にあたる)における正月(旧正月)のこと。新暦に置き換えると、今年はちょうど本日2月1日が春節となります。

 日本には大晦日に年越しそばを食べる風習がありますが、中国では東北地方(遼寧省・吉林省・黒竜江省)を中心に大晦日に水餃子(水餃・shuǐjiǎo)を食べる習慣があります。
 そこで今回は、水餃子と普洱(プーアール)生茶で新年をお祝いしようと思います。

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 普洱茶は、雲南省で栽培されている雲南大葉種という葉を主な原料としています。
 普洱茶という名称は日本の人々にも馴染みがあると思います。では、普洱生茶とはどんな茶なのでしょうか。

 先に答えを言うと、普洱茶には「生茶」と「熟茶」の2種類があります。名称だけですでにおわかりでしょうか。「生茶」は、摘み取った茶葉に①殺青(加熱)、②揉捻(揉む)、③乾燥――の3つの作業を施したもの。「熟茶」はそれを微生物の力を借りて発酵させたものです。

 今回、水餃子といただくのは、2007年に製造された〝15年もの〟の普洱生茶です。
「生茶」は、良好な保存環境で後熟させてから飲むのがおすすめですが、品質が良いものは製造後数年しか経っていなくても茶水が透き通っていてとても美味しくいただけます。

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 ちなみに、茶市場では毎年春節が近づいてくるとその年に製造された緑茶などの値段が安くなります。なぜなら、それらは新鮮な方が美味しく飲める茶葉であり、年を越すと市場には新茶が出回るからです。

 他方、普洱茶や岩茶など、一般的に熟成期間が長い方が美味しく飲めるとされている茶葉は、春節を迎えるたびに値段が上がります。

 茶の話はこれくらいにしておいて、ここからは水餃子にまつわる私の思い出を綴ろうと思います。2016年に、遼寧省瀋陽市にある親友の実家を訪問し、友人のお母さんから本場の水餃子の作り方を教わったお話です。

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