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レッドムーダンという蠱毒

『レッドムーダン』の1巻を読む。

武則天の漫画である。武則天は中国史上唯一の女帝(と、調べて識ったのだ)で、この漫画は彼女が13歳の頃より始まる。

後宮もの、というジャンルがある。いや、あるのか識らないが、要は大奥である。キャバクラものである。つまりは、女の園の闘いの、最大規模の権力を争うものである。

今作はグランドジャンプで連載している。無論、私はグランドジャンプは購読してないので、今作は新刊の棚で見つけた。主人公武則天と目が合ったのである。要はジャケ買いである。

で、この漫画は貧困、けれども元々は財産家の家で育った武照は、義兄に献上される形で後宮入するが、そこは血なまぐさい女の戦場いくさばであった……的な話である。
まぁ、『千と千尋の神隠し』みたいなもんで、無垢な少女(千尋は無気力だが)、権力と欲望の坩堝に飲み込まれて、そこで這い上がろと闘う話で、少年漫画の趣もある。それから、脱走映画ものの趣も。と、いうのも、後宮でずらりと美女が並ぶ中、やはり今後敵対しそうな奴もいれば、後で仲間になるであろう奴など、既に色々と目配せをしつつ描かれている様子。

なにせ、四妃なる天上の美女4名を筆頭にした階級社会、そこの一番下のレベルの才人である武照が如何にのし上がって行くのか……、そういう話で、まぁ1巻は辱められて、痛めつけられて、最後には後宮の残酷地獄絵巻を見せられる、導入の巻である。今後は闘いの話にシフトしていくのだろう。

主人公の武照には幼馴染がいて、男は武照を好いているのだが、その思いを告げることもなく、武照は覚悟を決めて後宮へと赴く。この最後の純情というのは、私には樋口一葉の『たけくらべ』を思わせて、あれほどに縹渺たる美しさはもちろんないけれども、然し、やはり男はどこまでも幻想に遊んで、女性はリアリストである。武照の心は先に大人へと変っていく。

若干、絵がバタ臭い気がするが、それもご愛嬌である。
ここは蠱毒である。全てを曝け出して、1人頂点に昇るまで、全員の血肉を喰らう、そのような蠱毒に堕とされた、イノセントの話である。


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