雪雪

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my love poetry reading.   フレデリック・ロルフの『THE DESIRE AND PURSUIT OF THE WHOLE』の翻訳を趣味で。 最も愛するのは稲垣足穂、マーロン・ブランド、ブレードランナー2049。

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  • タルホと月(稲垣足穂について)

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  • THE DESIRE AND PURSUIT OF〜翻訳版

    フレデリック・ロルフ、コルヴォー男爵の遺作『THE DESIRE AND PURSUIT OF THE WHOLE』の翻訳連載です。 意訳超訳お許しください。

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    私の理想とする文学への憧憬が込められた作品を集めています。

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The Ding Dong Song

夕暮れに青く染まったモスクから巡礼の声が聞こえ漏れてくる。瓦斯灯に灯りが点って、街々から人の気配が薄れていく。 僕は坂道を駆け上がって、滑り込みセーフで昆虫館の扉を叩く。館長は椋木の椅子に腰掛けていて、眠たそうにその黒い口髭を擦っていた。僕の姿を見ると立ち上がり、手を振ってくれた。 お父さんが僕をここに連れてきてくれたのだった。それから、もう毎週、毎週、通っている。本当には毎日来てもいいくらいだった。昆虫館とは言うけれども、小さな標本を扱った店だ。 日本だけではなく、台湾

    • 7日間ブックカバーチャレンジ DAY.1

      このような企画がコロナ禍の時に流行っていたのだという。 そういえば聞いたことがある。 毎日、7日間、何も言わずに、本のカバー(表紙)をSARASU。 人が晒す本、というのは面白いものである。まぁ、開チン、みたいなもんであり、その人の趣味嗜好がわかるからだ。本棚を見るとその人の念能力がわかる、というのは、よく聞く話だろう。 ちなみに私は強化系。単純一途なのだ。 そして、このブックカバーチャレンジ、というのは、細かいルールがあるようだが、そんなものは無視する。何故ならば、これ

      • ダリアバラ ふじゆりすみれ 聖五月

        • 恋文絵

          その著書の刊行物は全て欲しい、蒐めたい、そのような時、車谷長吉の本は比較的イージーな部類に入るだろう。 全集も3冊だけ(死後、4冊目を刊行するという話だったが……)、それでも全部で30,000円いかないし、あとは文庫やハードカバーなどで蒐めても、それほど法外な値段にはならない。 その中でも、いくつか限定本が存在していて、難関の一つは句集である『蜘蛛の巣』、それから『抜髪』の特装版限定100部。 『抜髪』は車谷長吉の母をモデルとした人物が延々と説教をする作品で その言葉の並

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          有名な人が評価した、だからその絵は1000万円なんだよ。 川端康成の話

          先日、なんでも鑑定団を観ていると、東山魁夷の絵が鑑定に出されていて、偽物っぽかったが、本物で、5000万円という査定だった。 5000万円、という額はあくまでも番組の評価額であって、これくらいの価値がありますよ、という総合値のようなものだが、まぁ、実際には1億円でも買いたいという人がいたり、100万円でもこれはないな、という人がいる。 美術品、というものは相場はあっても絶対的な価格は存在しない。 だから、運が良ければ数百万円のものを数万円で手に入れることができるし、逆も然り

          有名な人が評価した、だからその絵は1000万円なんだよ。 川端康成の話

          二つの俳句の星、『あかぼし俳句帖』と『ほしとんで』

          俳句漫画といえば、私の好きな作品は『あかぼし俳句帖』である。 これは全6巻の作品で、車メーカーの販促担当者である明星氏が主役だが、 彼は窓際族で、随分前に離婚して、今ではつまらない会社生活を送っている。生きがいがない。そんな男が、50代になり俳句に出会って(始めは20代の綺麗な女性目当てで)、俳句にハマっていく話である。 俳句漫画でもう一つ、『ほしとんで』という作品もある。 これは、主人公は芸大の学生で、ランダムに割り当てられるゼミの中の一つ、俳句ゼミに入ることで、俳句

          二つの俳句の星、『あかぼし俳句帖』と『ほしとんで』

          しょうもないで賞

          GWである。 GWなので、空き時間に本を読んでいる。いや、本は常に読んでいるのだが。 今は吉田修一の『国宝』の上巻を読み進めている。読み進めてはいるが、この小説が藝術推奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞、の二つを授賞している、と識り、え!こんな雑な話運びの平易な文章、滑りまくりの講談調の文体で!?と衝撃を覚えている。 ものすごく、ものすごく歌舞伎の勉強をしたのだろう。それは伝わる。文章の端々から。けれども、識ったことや取材に囚われすぎて、説明口調がひどく、読んでいて白けてし

          しょうもないで賞

          書店パトロール44 ホグワーツよりキャメロット

          漫画本を購入ついでに漫画コーナーの新刊の棚を眺める。 相変わらず、一体何冊の漫画がこの世には存在しているんだと、私は慄いた。 そして、その中の1冊(正確には2冊)に目を奪われる。 鈴木央の『ライジングインパクト』である。 あの、週刊少年ジャンプで、二回打ち切りを食らった伝説の漫画……。 その新装版である。そう、今年、ついにNetflixでアニメ化するのだ。 私はライパクが大好きであり、まぁ、それは、ちょうど連載時に小学生から中学生だったからだが、この鈴木央先生の漫画という

          書店パトロール44 ホグワーツよりキャメロット

          瘋蝶聖

          蝶狂いの息子の遊楽が高じるのにつれて屋敷の庭に温室まで与えてやったほどの息子狂いである。 以前よりも身体の嵩が増した先生と向かい合うと、彼は遠くを見つめながら、あれだけ飛んでいても翅音が聞こえないんだ、とそう呟いた。先生の言葉の方に目を向けると、成る程、温室のドーム状のガラスの屋根がこちらかも見えて、ひらひらと数頭の蝶が舞っている。 「何頭いるんですか?」 「数百はいるだろう。」 事も無げにそう言うが、ざっと試算してみただけで、それが言語学の一大学教授に賄える額ではないことが

          瘋蝶聖

          書店パトロール43 俺はいつだって回り道を選ぶぜ。

          結局、いくら書店に行こうとも、毎回同じ場所に行っているわけだ。 哀しいかな、趣味嗜好というものは、そうそう変わるものではない。なので、私はいつものように、映画や美術本のコーナーを見る。大抵はラインナップは代わり映えしない。 その中で、一つ気になったのは淡交社から発売されているこの本。 落語と文学。そして、淡交社。淡交社は京都の出版社で、お茶関係の本を出している。私の家の近くにあるのだ。この近くの寺町通りこそ、茶道のお店などが集まる茶道ストリートであり、表千家会館などがある。

          書店パトロール43 俺はいつだって回り道を選ぶぜ。

          九龍大厦

          唐突だが、私は九龍城砦、九龍城が好きである。 私の物心がつく頃には、九龍城は取り壊されていた。九龍城は1994年に取り壊されたのだという。 これは、『ゴジラVSスペースゴジラ』が公開された年で、私はこれを、京都宝塚劇場で観ていた。スペースゴジラは格好良かった。 やはり平成ゴジラのVSシリーズは最高だ。スペースゴジラも好きだが、 『デストロイア』も最高に好きだ。作品としては、実は『VSモスラ』が好きだ。 小林聡美と別所哲也が元夫婦の役で出ていて、なんというか、男女の一度終わっ

          九龍大厦

          孤独と愛と『異人たち』

          『異人たち』を鑑賞。TOHOシネマズ二条にて。 お客さんは私を含めて4名だった。然し、映画館には人がそれなりにいた。恐らく、コナンやブルーロックを観に来たのであろう。私は空いている映画館が好きなので、貸し切りでも構わない。けれども、映画館側は困るだろう。 さて『異人たち』。 原作は山田太一の小説『異人たちとの夏』で、映画化もされているが、今回はイギリス映画である。 私は小説も、それを元にした映画版や舞台も鑑賞していないので全くの初見だった。 内容はざっくり識っていたが、

          孤独と愛と『異人たち』

          積読抄

          本が好きな人間なら誰しもが陥るのが積読という現象である。 無論、私もその例に漏れることはなく、大量に、本当に大量に積読がある。買って、紙とインクの匂いを嗅いで、それから本棚の肥やし。 まぁ、然し、けれども、なんというか、本、というものは全てを読む必要性や義務などないから、それでもいいのだ。 寧ろ、御弁当箱の米粒一つまで余す所なく食す、そのようなことは本では必要もない。全ての文字を拾うなど土台不可能である(そうか?)。 そもそも、本、というのは、作者の、執筆者の、書き手のそ

          積読抄

          春に目ざめる男性の秘密

          微温い風に起こされて窓外を見ると、天が紫に染まっている。 腕時計を見ると18時を回って、そろそろ日も暮れるだろう。 合唱部の練習で遅くなるから、帰り道に寄って迎えに行ってあげてー。 そう妻に頼まれて、学校の最寄りのバス停で降りる予定だった。 会社帰りの紳士や淑女、学校帰りの学生や観光客でごった返していた車内もいつの間にか乗客は減り、ポツポツと座席が埋まるばかりだった。 開いた窓から涼しい風が流れ込んできて、私はじっとりとしたワイシャツの襟元にその初夏の息吹を入れてやった。 ど

          春に目ざめる男性の秘密

          書店パトロール42 

          『本の雑誌』の増刊号が出ていた。本屋大賞の特集である。『成瀬は天下を取りにいく』を祝!本屋大賞!という感じお祝いしているが、めちゃくちゃ早いな。まぁ、こういうのは、そもそも発表の前に通達がされているのだろうか。 4/10に発表されて、そこから順位などの箇所や一部以外を残して制作していたとしても、印刷から納品まで最短でも2日〜3日はかかると思われるし、突貫で作ってもかなり大変そうだ。 4/10〜4/13くらいで土日も動いて作って、4/14に入稿、印刷、4/15とか16に発送

          書店パトロール42 

          書店パトロール41

          書店を彷徨く。書店を彷徨いていると、書店員さんの目が気になる。 ああ、また買いもしないのに来てるよあのバカ、一度その汚れた面にシュリンク巻いてやろうかって、思われていそうだ。いや、偶には買っているダロ!ユルシテオクレヨ!とそう、心中で謝りながら、やはり彷徨く。 まずは目に入った本、『名画の中の美しいカラス』。 私はカラスが好きだ。烏。鴉。カラス。CROW。この本は、烏が描かれた絵画を紹介している本で、まぁ、勉強になる。 私は識らないものを識るのが好きだ。なので、本屋という

          書店パトロール41