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中性子星のやばい性質

先日、大学の授業(『現代天文学入門』)で「中性子星」について取り扱いました。

星の質量が太陽の約8倍よりも重い場合、超新星爆発を経て最終的に超新星残骸の中心に中性子星ができると考えられています。星が超新星爆発を起こして、最終的に中性子星へと至る過程は、星の中で起きる核融合反応、元素合成とも関係するので面白いのですが、その辺りの話はまた別の機会にするとして、中性子星というのは中々に「やばい」天体です。いかにやばいのかこれから紹介していこうと思います。

•大きさがやばい

「星の大きさ」と聞いたとき、どれくらいのサイズを想像しますか?例えば地球の場合だと半径は約6000㎞、太陽の半径は約70万㎞です。まぁ、「星の大きさ」と聞いたら、普通はこれくらいのサイズを想像しますよね。では、中性子星の大きさはどれくらいでしょうか?

中性子星の半径は約10㎞くらいです。

「えっ?10㎞??星なのに??」となりますよね。中性子星の大きさにもよりますが、JR山手線にすっぽりと入るくらいの大きさです。えっ、星なのに?

ちなみに、授業では以下のスライドを使って説明しました。

雲南大学が位置する昆明市に中性子星が現れるとこんな感じです。えっ、星なのに???

•密度がやばい

中性子星のサイズが大体数㎞程度であることを説明しましたが、中性子星の質量はどれくらいなのでしょうか?実は中性子星の典型的な質量は太陽の質量程度あります。太陽の質量は$${2\times 10^{30}}$$kg程度です。

えっ?大きさは数㎞程度なのに、質量は太陽くらいあるの??

と驚きますよね。大きさの割に質量は大きいので、密度はバカでかいです。


どれくらい密度が大きいかと言うと、スプーン1杯ぶんの中性子星をすくったらシロナガスクジラ100万頭くらいの重さが詰まっています。これではティーカップの底に穴が開いてしまいますね。

回転数がやばい

中性子星はものすごい勢いで回転しているという性質を持ちます。大体ですが、1秒間に100回転しています。えっ?1秒間に100回転と言われても分からない??地球は1日かけて1回自転ですよ?中性子星、めっちゃ回転しているじゃないですか!

じゃあ、もう少し具体例を考えてみましょう。皆さんの身の回りで勢いよく回転しているモノと聞いて何が思い浮かびますか?そう洗濯機です。

洗濯機はメーカーにもよりますが、大体、1分間に600−1000回転しています。これはこれですごい。

あれ?中性子星は1秒間に100回転しているということは、1分間だと6000回回転している・・・ということは、洗濯機よりも10倍近く速く回転しているということになります。中性子星で洗濯したら、衣服の汚れがとても落ちそうですし、多分、素早く乾かすこともできるでしょう。


•磁場がやばい

中性子星には磁場も存在していますが、その大きさも文字通り桁違いです。例えば、地球の磁場の大きさは大体$${10^{-4}}$$T(テスラ)です。肩こりや血行を良くするのに使う「ピップエレキバン」は大体$${10^{-2}-10^{-1}}$$Tくらいです。地球の磁場の大きさより大きい・・・ちなみに、太陽の磁場の大きさは大体$${10^{-1}}$$Tくらいで、病院で検査のために用いるMRIは大体1Tくらいの磁場です。

で、中性子星の持つ磁場の大きさですが、およそ$${10^8}$$Tくらいです。ピップエレキバンや太陽、MRIの磁場は一体何だったんだと思ってしまう磁場の大きさです。


さて、中性子星のやばい性質について紹介してきましたが、一言でまとめると中性子星は「めっちゃ密度が大きくて、めっちゃでかい磁場を持っており、超高速で回転している天体」と表現することが出来ます。どうです?中性子星がいかにやばい天体かご理解いただけましたか??

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