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【徒然草 現代語訳】第百十段

神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

雙六の上手といひし人に、その行を問ひ侍りしかば、勝たむと打つべからず。負けじと打つべきなり。いづれの手かとく負けぬべきと案じて、その手をつかはずして、一めなりともおそく負くべき手につくべしといふ。

道を知れる教、身を治め、国を保たむ道も、またしかなり。

翻訳

双六の強豪とうたわれた人に、その戦法を訊ねましたところ、勝とう勝とうと思って打ってはいけない、負けぬよう負けぬようと打つのがよろしい。どんな手を打てばとっとと負けてしまうのかを熟慮した上で、そのような手だけは決して使わず、一目でも遅く負けてしまいそうな手を使って打たねばならない、と云う。

その道に精通した者ならではの教訓で、自らを律し、国を治める道も、また同じなのである。

註釈

○雙六
今の双六(絵双六)とは違い、こちらは白黒各12個の石と賽子を使う盤双六。「源氏物語」に出てくる近江の君が大の双六好き。

○行
読みは「てだて」。


ギャンブラーもまたまぎれもない職人であります。

追記

盤双六って、バックギャモンに似ているそうですが、そもそもバックギャモンをやったことがないのでよく解りません。

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