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あのたび -どんぶらこ-

 マナド(Manado)でのフィリピン行の船探しは難航した。行くことができる前提でフィリピンペソを手に入れようとBCAバンクなどへ行くが取り扱ってはいないという。

 するとマナドの東の町ビトゥン(Bitung)からなら船があるかもしれないという噂を聞いて移動することにした。まるでRPGだ。

 昼過ぎ4000Rpでビトゥンへ移動し、さらに港(Port)へ3000Rp。人が多い。漁師たちだけというわけではないだろう。しかしこれだけの人がどこへ移動しようとしているのか。逆に言えばフィリピンへ行こうとしている人もいるに違いない。

 小さい船会社の出張所みたいなオフィスを周るがどこも直接はフィリピンへ行かない。◯◯から行けるかも?というあいまいな情報しか手に入らず要領を得ない。やはり無理なのか。

 この日はあきらめて港の外の宿を探す。5万Rpと4万Rpの2軒があった。4万に泊まる。

 翌日、Fajar Lineという船会社を見つける。かつてはフィリピンへの就航ラインがあったそうだが今はないという。しかたなく本日発という、ビトゥンから北へ300キロほどの島のタフナ(Tahuna)行きを購入。22500Rp。
 カトリーナという船名に似合わずとにかくぼろい。汚い。客室や船室というものがなく、甲板にテントを張って陽射しを防いだだけの床に雑魚寝という形式だ。食料と水を買い込んで乗り込む。

 船は色々乗ってきたが最低クラスかもしれない。船速も遅く、まさしくどんぶらこといったノロノロとしたスピードで魚にも追い越されていく。どっちへ向かっているのか何時間かかるのかさっぱりわからない。不安でしかない。しかも揺れるので船酔いがひどくげえげえと吐く。そして暑い。熱射病のようなつらさだ。日が沈むと少し楽になったが。

 翌朝10時、タフナ着。さらに北のマロレ(Marore)に行けばフィリピンに入国できるのではないか?という。+20000Rpを支払えばマロレ行の切符を買ってくれるという。さらに10000Rpで食料も調達してきてくれるというのでお願いした。
 ナシ(ごはん)の葉っぱ包みとピサン(バナナ)で10000Rpは高いだろ!

 20年前の当時はスマホもないので今自分がどこにいるかもわからなかった。が今調べてみるとマロレというのは地図にも映らないような小さいマル島という島にある町(村?)で、インドネシアよりもフィリピンに近い。あと少し北へ行けばフィリピンのミンダナオ島のようだ。こんなに近くまで来ていたのかという印象だ。

ビトゥンからタフナ、マロレへ

 同じカトリーナ号で揺られながら一泊し、途中小さな島に2つほど立ち寄り翌日朝9時頃、マロレに到着した。船に乗った時から世話になっていたオヤジさんのオフィスに連れて行かれてとりあえず泊めてもらえることになった。

 パッと見、ただのかつらっぽい頭の太ったオヤジだが、そのオフィスの正面にあった建物はクロスボーダーオフィスと書かれており、どうやら彼はインドネシア側のイミグレーション職員らしい。これはもしかすると、国境越えができるかもと期待が持ててきた。

 誰も通ったことのないような自分だけのルート。そういった道を探すのが旅の目的にもなっていた…。

インドネシアルート

(つづく)


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