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真夜中の空中ブランコ乗り〈決定版〉|#詩のようなもの





昨晩は  

せきにより 体力を失っているせいか

食事が 進まないせいか


快復したかに見えて すぐ|目眩《め

まい》がし

なるべく ベッドで横になっていた





この10日間ほど

ほとんど 外へも出ていない

必要最低限だけ



家でも外でもマスク生活

喉がからからになるのと

感染予防のため






都会を離れた地方の小さなまち

誰とも会わない 川沿いの道の

ながい 長い散歩が



空気が 清々しい

海へと続く一本道の 

見慣れた 道程みちのり


恋しくて 

仕方がない






空中ブランコ乗りのイメージが浮かぶ

―――ゆあーん ゆよーん

ゆやゆよん


中原中也がブランコ乗りに惹かれたの

も 


きっと


誰かが自分の想いを

たしかに受け取ってくれる



―――それを

命綱無しで 感じたせい

なのだろう……




―――とうに夜半を過ぎて


とりとめのない

まとまりのない


ひとりごとのつぶやき…










【サーカス】

幾時代かがありまして
   茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
   冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
   今夜此処ここでの一と殷盛ひとさか
      今夜此処での一と殷盛り

サーカス小屋は高い梁
   そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

頭倒《さかさ》に手を垂れて
   汚れ木綿の屋蓋《やね》のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯が
   安値《やす》いリボンと息を吐き

観客様はみな鰯
   咽喉《のんど》が鳴ります牡蠣殻と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

       屋外は真ッ闇 
闇《くら》の闇《くら》
       夜は劫々《こうこう》と更けまする
       落下傘奴《らっかがさ》めのノスタルヂアと
       ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

中原中也『山羊の歌』より



✢Sting/The Ballad Of Mack the Knife



✢✢✢



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