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短歌って面白い!いつもの生活がちょっと違って見える本3冊


短歌って面白くない?って思ったこと

 義務教育期間中に家族で百人一首を散々やって遊んだおかげか、三十一文字のリズムだけは身体に未だに残っている。昔覚えた歌の数々もだいぶ忘れてしまったけれど、それでもいくつか覚えてる。
 だけど現代の短歌や歌人に興味はあんまりない。そんなふうに過ごしてたんだけど、ここ最近短歌って面白いって思ってる。本屋でなんとなく買った『短歌と俳句の五十番勝負』が面白くって、久しぶりに三十一文字の世界を泳いでる。
 詩っていうのは難しい。読むのが簡単なようでいて、いつもの読書とリズムが違うから滅多なことじゃ読めない。なので、あまり詩を読むことはしないし、無知に等しい。
 でも、ここ最近これは自分の思い込みな気がしてきた。三十一文字と同様に、詩のリズムに自分を合わせるか、その時の自分にあうリズムの詩を読めばいいのかもしれない。
 そんな新しい出会いが楽しくて、最近読んですごかった歌集と本をまとめておく。


文字数の違いが映し出す世界観の違い『短歌と俳句の五十番勝負』

 出題されたお題に対して歌人の穂村弘と俳人の堀本裕樹が短歌と俳句を作る。そのお題に対してのインスピレーションや、内容についての解説が数行続く。
 サクッと読めて、それでいて短歌と俳句の違いが味わえて大変楽しい。俳句の方が季語に、語数の縛りがあってかタイトで出来上がりがカチッとするなーって思えた。
 対して短歌はリズムを変えるのが可能なためか、俳句より叙情的な印象でより茫漠とした世界が広がっていて面白い。
 個人的には俳句の方が理論的な組み立てがいるから大変そうだなって気がする。


これってこの世の人が読んだ歌なの?ぶっ飛び先鋭歌集『Lilith』

 人生でこんなに辞書を引きながら読んだ歌集もないし、読んでて世界観が歪んだのも初めてですっ。
 短歌なのに、同じ地上にいる人が詠んだとは思えない世界観が凄すぎる。正直、異世界の歌人が吟じたのを受信しましたって言われたほうが納得できる。
 もう、短歌舐めてたというか。詩っていうか、言葉を使うプロの凄さっていうか歌人ってすげーってかっ飛ばされました。
 よくそんな発想しますね?っていう身体感覚についての歌や、ひりつくようなこの世の不条理、ジェンダーにまつわる歌といい、本当にゾワッとする歌ばかりで目が覚まさせられる。
 尖りきって、澄み切ったクリアな視界で垣間見るこの世とどこかの淡い。元気な時に、どうぞ。

韓国語話者による歌集『まだまだです』

 図書館で何気なく見つけて一気読み。作者は韓国から来日して日本語を学んだカン・ハンナ氏。つまり作者にとっての外国語で作った詩なわけ、もうこの時点ですごいと思う。外国語を操るのと詩を作るのって違う才能だと思うし。
 詩はなんかほっこりするものが多い。韓国文学を読むときに感じるほっとする雰囲気をこの作者の歌にも感じる。
 でもその一方でこれはこの作者ならではだなって歌も多くてすごく面白かった。街中で聞く片言の日本語や、微妙な政治情勢と住んでる世界の実態の乖離状態とか。
 視点が鋭くて、母親への思慕といい、ひとり暮らしでふっと感じる寂しさといい。日常の感覚を掬い取る感覚が素晴らしい。

気楽に読める歌集がいっぱい、現代短歌の入り口的出版社:書肆侃侃房

 書肆侃侃房っていう出版社をここ数年前に知った。最近の出版社で、強いジャンルの一つが現代短歌。とにかくいろんな歌人の歌集をいっぱい出しててとっつきやすいのがありがたい。
 上記に上げた川野芽生も書肆侃侃房から出ている歌集の一つ。他にも現代歌人シリーズとか、現代歌人クラシックスみたいなシリーズものがあるから、なんとなく短歌の世界をさまよいたち時にぴったりだ。
 俵万智や穂村弘とかの有名どころもいいけど、ちょっと自分だけが知ってる歌人が欲しいとかって背伸びしたい時にも心強いし。
 ちょっと本屋で図書館でなんとなく何かを読みたいなーってとき、ジャケットで選ぶでもいいし。書肆侃侃房にはこれからも色んな歌集を出していって欲しいなー。新たな出会いをいっぱいくれてありがとう。

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