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皮肉の言い回し超見事『反逆の神話』ジョセフ・ヒース&アンドルー・ポター

ルソーの主張はこうだ。文明の出現は「弱い者たちには新しい軛を加え、富めるも者には新たな力を与えるものだった。自然の自由をもはや取り返しのないまでに破壊し、私有財産と不平等を定める法を永久的なものとして打ち立てるものだった。巧妙な簒奪にすぎないものを。取り消すことのできない権利とするものだった。わずかな野心家の利益を守るために、人類の全体を労働と、隷属と、貧困に服させるものだった。」
 徹底した社会批判としては、最大級のものだ。これを読んだヴォルテールはルソーに手紙を書くことにした。「人類に反抗する新著をいただき、感謝致します。私たち人間が愚かであることを示そうとして、かつてこれほどの才気が用いられたことはありません。あなたの作品を読んでいると、四つ足で歩きたくなります。でも、その習慣を失って六〇年以上もたつ私は、不幸にして、それを取り戻すのは不可能と感じます。また宣告された病気のためにヨーロッパの意思が必要ですから、カナダのみ怪人を発見しにいくこともかないません」

『反逆の神話 反体制派はカネになる』ジョセフ・ヒース&アンドルー・ポター、早川書房、2021年

皮肉が効いてる。というのはこういう事か、と納得いく。加えて思わず笑ってしまう。
 翻訳された文章特有のリズムというか、言い回しが好きなので、ニヤニヤしてしまう。随所にここまでキレのいい皮肉があるわけではないが、(こちらの感応不慮の可能性ありだが)チクリとする毒が効いてて楽しい一冊である。

なぜ社会革新は難しいのか、新しい思想とかに関して何となく胡散臭いと思ってしまうのはなぜなのか。(例えばSDGSを誰もが言うと、急に真剣さが失われるような感じとでもいうか)
 現代社会を理解するのに気楽に読める上に、ポップカルチャーへの目配せが多々合って懐かしさもあり、面白い。

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