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日本が移民を拒む理由『自由の限界』より、エマニュエル・トッドの考察

 日本はなぜ移民を拒むのでしょう。人種差別主義、あるいは外国人嫌いなのでしょうか。やがて私は問題の確信を理解します。外国人を敵視するのではなく、日本人どうしでいる状態を失うことが怖いのです。日本人どうしの居心地は申し分なく、幸せなのです。日本社会は自己完結の域に達していると言えます。
 それは極めて特殊です。フランスの場合、誰もが身勝手で不作法。フランス人どうしでいると不愉快になります。だから移民受け入れに特段の不安はなかった。公序良俗を脅かす可能性があるのは移民に限りません。フランスは十九世紀、先進国で初めて人口減少を経験しました。ナポレオン戦争の後、低い合計特殊出生率と高い幼児死亡率が続いたのです。移民政策を講じ、十九世紀末には移民大国になります。

「日本人どうし」抜け出せ、『自由の限界』中央公論新社、2021年より、エマニュエル・トッド


 日本の少子高齢化問題の解決策の一つ、移民政策。一応毎年10万人くらいでここ最近は受け入れてるらしいけど、いまいち実感は伴わない。日々の生活のニュースにもならないし、ぶっちゃけまだまだ他人事、な空気があると思う。
 その理由はなんでか?という答えが上記引用のところ。納得。同意しかない。日本人どうしでいると、面倒なコミュニケーションのあれこれのストレスとか基本ないものね。慣れ親しんだ環境を手放したくないもんね。
 ぅうううわーーーと叫びながら、床をゴロゴロしちゃいそうなほど納得がいった。
 
ひるがえって自国のフランスについての物言いもなかなかだけども、言い得て妙だなと感心した。結局、移民どうこうというよりも、人間は他人にとってお互い鬱陶しく、どうでもいい存在なんだよな、特に集団となると。
 という身も蓋もない現実にハッとした一冊でした。

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