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隣の寺内貫太郎一家

年の瀬、隣の家が親子喧嘩を始めた。

隣の家は令和の時代に珍しく、不平不満があると、親子兄弟男女構わず、
「どういうつもりだー!」とか
「ふざけるなー!」
とか怒鳴りあって物にもあたってドンガラガッシャンな寺内貫太郎スタイルのご一家で、年に3−4回ほど荒ぶるものの、翌日はゴミ捨てなどで出会ってもスッキリした笑顔で、
「おはようございます!」
などと声をかけてくださったりするので、死者も出てないようだし、このお宅の恒例行事なのだな、と認識していた。

しかし、ASD長男には今回初めて聞こえたらしい。あれだけのものを今まで気がつかなかったことにも驚くが、とにかく恒例行事を始めたお隣さんに対し長男は、
「誰かが虐待している!」
と思ってしまい、窓を開けて隣の家に向かって、
「虐待をやめてください! 近所迷惑です!」
と怒鳴ってしまった。

私はその時、お笑い番組を見ながら年賀状を書いていた。

ん? なんか表で怒鳴ってるやついる? どっかの酔っぱらいが騒いでるのか? 誰も返事しないし、酩酊して見えない相手に説教か? やべーやついるな!

我が子が発した声とは思わず、深刻さゼロでTVを見続け、聞き流した。そしてお茶を飲みに部屋から出て来た長男に、
「さっきの表でなんかワーワー騒いでたアレ、聞いた?」
と、なんて言ってたのか詳細を聞こうとしたら、
「あれ俺」
と答えたので椅子から落ちそうになった。
「おまいか!」
ごんぎつねだったら撃っているところだ。なぜそんなことをした?
「誰かが誰かを虐待しているんだよ!」
俺が正義の鉄槌を下してやったんだよ、とでも言いたげなキメ顔でそう言ったのをみて、あっお隣さん今日寺内貫太郎デーだったのか、と気がついた。TV付けてて隣の家の声は全く聞こえなかった。というか、虐待をするのは近所迷惑だからやめろ、という理屈にも驚いた。さすが発達民。独特の発想力。

まじか、あれから結構時間経ってるけど…と思いつつ一応TVを切り、耳を澄ます。が、お隣からは何の音もしない。長男の変な理屈に気が削がれたのか? 1時間くらい(多分)経ってるし、寺内アワーが終了したのか? 寺内家が終了したのか? 

今朝、人の気配はあるようなので今年最後の荒ぶり納めだったようだ。多分そうだ。

長男には、虐待かと思ったらいきなり怒鳴るのではなく、まず私に教えるように、私も聞いた上で対応するから、と伝えた。

発達民がいる暮らしはなかなかスリリング。


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