見出し画像

小説は過程を楽しむもの

さすがに作家のインタビューで「この小説で言いたいことはなんですか?」と訊かれることはないでしょうが、もしも訊かれたら結構困ってしまいます。
説明しようと思えば、「この小説では命の大切さを伝えたかった」とか言えますが、その言葉では、その小説の言いたいことを全て伝えられるとは思えません。だって、「命が大事」なんてわざわざ小説に書かなくてもわかりますよね。
一言では説明できない微妙なニュアンスを伝えるために、作者は長い物語を書いているわけです、きっと。さまざまな事件や人との会話を通じて、作者が言いたいテーマを伝えるのが小説です。

別にテーマはなくても良いと思います。テーマがなくても、ヒリヒする感覚とか心温まる感動を味わってもらいたいなど、なにかを感じてもらいたくて作家は小説を書いているのではないでしょうか。

言い換えれば、一言で伝えられないから、作家は小説を書くのだと思います。そう考えると、小説は物語を読む過程に意味があるのかもしれません。文字を追い、場面を頭に描き、登場人物と共に過ごす時間こそが小説の本質な気もします。
結論だけが欲しいなら、小説ではなく学術書や自己啓発本を読んだ方が手っ取り早いですから。

物語芸術の中でも終えるまでに長い時間を要する小説は、作者の想いや意図をじっくりと味わえるものだと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?