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2024チェンマイの旅#1|カーム・ヴィレッジ・チェンマイを親戚のおばちゃんになったつもりで絶賛する話|Travelogue

日本がGWの頃のチェンマイはとにかく暑い。大気が淀んで薄曇りのような空でもいやはや暑い。コロナ前にバンコク〜パタヤを縦断したとき、同じように暑さに苦しんだことをすっかり忘れていたんだなあ〜 あれから何年か年老いて、自分の体力も落ちているので、余計に暑さが身にしみた。

この季節バンコクより2,3℃涼しいというのは夜の事情で、日中は40℃くらいになり、外出するのが苦痛だった。なので今回の旅ログは、暑い日中にチェンマイの旧市街で時間をつぶす最高のスポットを紹介する企画にしよう。

それがKalm​ Village​ Chiangmai(以下ではカーム)だ。2021年5月にオープン。ここは博物館でもありアートセンターでもありコワーキングスペースでもありで、しかも入場無料なのだ。この施設の魅力は、旧市街南側の落ち着いたエリアにある/建築的にいかしてる/エアコンがきいている/レストランもカフェもある/雑貨も売っている/それほど混んでいない、などいくつもある。


場所性と建築性

Kalmとは東北地方イサーンの言葉で「村」を意味するそう。8つの建物で構成された3階建てのツインビルで、2つの中庭を囲むように敷地全体で村をイメージしているのではないかと推測する。

エスニックとモダンがデザイン融合したかのような印象。実際「あらゆる文化を受け入れる空間をつくり、アート・工芸・文化を通じて人々を結びつけることをめざしていて、内外装のデザイン全体にアジア文化がミックスされています」と、この施設の設立者の一人アチャリヤル・ロジャナピロム氏は述べる。

釘を使わない伝統技法で建てられた木の螺旋階段など、細部にもこだわりがみられる。あちこちにオブジェや彫刻、ベンチがあり、芸術的な雰囲気を醸している。

カームがある一帯は閑静な住宅街で、近くにはPhor Liang Meun Terracotta Arts Hotelという3つ星とは思えないとても芸術性の高いホテルがある(泊まっていないが)。このあたりのストリートは熱帯湿潤的でステキだと思う。

施設のすぐ近くに市民が愛するカオソーイ屋がある。なかなかイケる。

施設内容

開放されているゾーンは、中庭を囲むようにギャラリー、ワークスペース、セレクトショップ、カフェなどが配置されている。スタジオやホールはふだんは開放していないようだった。

全体的にスタイリッシュで居心地がよい。トイレの調度品もセンスがいい。アートセンターだけあって、ショップで販売している服や生地、器、バッグなどのクオリティは高い。

1階にはカフェやレストラン、2階には図書室がある。ゆっくり本を眺めながら快適な時間を過ごすことができる。3階の緑豊かな屋外スペースからは、暑さでどよ~んとした近隣の風景が見渡せる。

展示のアーカイブス

来訪時は「アジアのジュエリーが語る(語られない)物語」というテーマの企画展だった。宝石類が単なる装飾品ではなく、社会状況や政治史を反映した万華鏡のようにいかに機能してきたかを掘り下げるという目標があった。

でもそれ以上にすごかったのが常設展のほうで、とくに織物のアーカイブには感動した。そこにはロジャナピロム氏の母親が何十年も集めてきたコレクションが保管・展示されていて、タイの北東部/北部/南部/北部のテキスタイルの違いを実感することができる。

展示解説の一部を紹介しよう。

  • タイの織物は、スコータイ時代以前から伝統的に行われてきた手工芸品です。機織りは勤勉と忍耐が必要な芸術であり、先人から代々受け継がれてきた大切な知恵です。

  • 織りとは、繊維を絡み合わせて布地を形成するプロセスです。2組の糸があり、1組は事前に巻かれた縦糸で、垂直に走り張力で保たれます。もう1組は、通常は直角に縦糸に通され、横糸と呼ばれます。

  • バティック(タイ南部地方)は、布地全体に施されるワックス防染の技法、またはその技法を使用して作られた布地です。

  • 塗布されたワックスは染料に耐性があるため、職人は布を一つの色に浸し、熱湯でワックスを除去し、複数の色が必要な場合はこれを繰り返すことで選択的に色をつけます。

  • イカット(タイ東北地方)は、布地を織る前に縦糸または横糸を染織する織物の模様づけの技術です。イカットという言葉は、「結ぶ」を意味するマレー・インドネシア語の「メンギカット」に由来します。

  • マトミ(マドミ、ムドミとも)と呼ばれる織布は、主にスリン、シーサケート、ブリーラムなどイサーン南部に住むクメール民族によるシルク製品です。

設立ビジョン(背景にある思い)

ウェブサイトにオクタビオ・パスの言葉 “Every view of the world that becomes extinct, every culture that disappears, diminishes a possibility of life.” を載せている。それぞれの文化や世界観が消滅することへの危機感だ。

「チェンマイは非常に活気があり、優れた才能がたくさんいますが、都市として私たちに欠けているのは、人を集める場所だと思います」とロジャナピロム氏は言う。

「チェンマイにはイノベーティブな人々だけでなく、伝統的で職人的なコミュニティもまだ繁栄しています。それは私たちの活動にとって重要だと思います」、「カームは私たち固有の文化だけでなく、他文化からのインスピレーションや、文化要素の組み合わせにも共鳴します」と語る彼女の目的は、あらゆる立場の人々を歓迎し、タイのみならず芸術や工芸の伝統について学べるスペースをつくることだそうだ。


チェンマイでの滞在を忘れられない体験にしたい方には、カームを強くお勧めするわよ。


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