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この読書感想文を自己紹介として

川上弘美の作品を読んだのは半年ぶりくらいだろうか。
川上弘美の作品は日常と非日常を暖簾一枚の気軽さで行ったり来たりしていると誰かがレビューで書いていた。
私は行ったり来たりというよりは常にそこにあって、それを不思議と思うこともなく共存しているというように思う。

神様やパワースポット、パワーストーンや心霊現象、そういったスピリチュアルな話は人が作り上げたような、信じる力とかとても人間らしさを感じるのに対して、川上弘美の小説には不思議なことも日常、生命としてそこに息づいて共存しているのだから仕方ないという諦めすら感じる。

今回読んだ「ぼくの死体をよろしくたのむ」は18篇の物語が収録されている。どれも川上ワールドで一気に読むと結構お腹いっぱいになる。
代表としてあげるならば「二百十日」と「廊下」が秀逸で川上ワールドに浸ることが出来ると思う。

だけど私が一番心に残ったのは「ルル秋桜」である。
主人公のひとみは少し変わった女の子で、死体の写真を切り抜きラミネートして名前を付け集めている。
姉のみのりは容姿が良く、人からも好かれて一般的にはひとみより生きやすそうであるのに妹であるひとみに時々意地悪をするのだ。
そのことをひとみはお絵かき教室の先生、杏子に相談してみる。
どうして意地悪をするのだろうという質問に対して杏子は「そういう生まれつきの人だから」と答えた。
そしてまた意地悪をされた時には「やっぱり意地悪な生まれつきだね、そしてちゃんとその筋を通しているね、えらいよ」と言うのである。
このシーンは主人公同様に私も目から鱗で読みながらニヤニヤしてしまった。
だって、嫌な奴が生まれつきならもうそれは仕方のないことのように諦めがついてしまうし、自分のダメな部分も受け入れればいい、生まれつきなのだからと許された気持ちになる。そういう発想があるところを含め、川上弘美が好きだなぁと思う。

私の好きな女性作家は、不思議な話を当たり前のように扱う。
作家たちの目からどんな世界が見えているのだろうか。

私は自分が悩んだ時、考えた時、いつだって自分に行き着く。
相手がどう、環境がどう、そういうことではなくそのことにネガティブになる自分をどうにかしなければならないと思う。
正すのは相手ではなく常に自分。
だってそうでしょう自分の人生なのだから。

ただ落ち込むこともある。
私にも感情や思いというものはあるから。
そんな時小説というものはすごく有効に作用して、違う価値観、抗えないものに対して俯瞰して見るということを教えてくれる。

最近すごく好きな作家がいて、その人のことはまだ口に出せていない。
昔からそうなのだ。
大好きすぎると人に言いたくなくて、一定の距離をとって自分の中だけで大切に大切に楽しむ。
共感なんてされたくないのだ。
だから内緒。

おかしいかな?
仕方ないよ、生まれつきなのだから。笑


この読書感想文を私の自己紹介として。
読んでいただきありがとうございました。

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