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「ある風景」〜人生初のエッセイ(風)を書いてみた。note113日目


1/6 noteをはじめ、
4/27から1年間かけて3冊のミニブック(エッセイor小説)制作に挑戦。(「書きたいが書けるに変わる創作講座」に月1回計12回参加)

5/17までに「ある風景」をテーマに4,000字、というお題をいただいています。
Noteで1,000字は書いたことありますが、4,000字って、たかが4倍されど4倍。
<全体を俯瞰して>見れない気がして、
<書き始め>がとても緊張します。

4/27の初回講義では、「任意の一点」を打つことで、そこから“歩くように動くように書く”ことを教わったので、まず1,000字にいまから挑戦してみます。

人生初エッセイ(風)で、こっぱずかしいです。エッセイって思って書いたこともなければ、普段、ビジネス書ばっかり読んでいるのに、書けるのか。きっとエッセイ風にしかならないので、ご容赦ください。そして、コメント、いただけたら嬉しいです。

いつもは、書きおえて、お読みいただいてありがとうございます、とお伝えするのですが、きょうは、先に、御礼をお伝えします。そして、ここから、「歩くように書き」はじめます。
どこに着地するのか、自分でもわからないので、なんだかドキドキします。



「屋根より低い鯉のぼりと、梅田スカイビル」

 ある初夏の昼下がり。3か月の間切らずに、伸びきった長い髪をすっきり切るべく、行きつけの床屋さんに向かう。もうかれこれ10年近く通っている。美容師さんはいつも決まっており、年は自分より5歳ほど年上の美容師さん。ほとんど会話はないのだが、それがいい。

「髪、伸びましたね。きょうはどうしましょう?」というその言葉にどこか、「あ、髪が伸びた分を生きた自分がいた」という安心にも似た気持ちと、「それを知っている人がいる」という居場所を求めていっている。

 店の前にでて見送ってくれる。「きょうもありがとうございました」といういつもの言葉。「いやいや、こちらがありがとうございました、です」という気持ちで、「また来ます」と言ってその場を去る。その時の自分の表情は自分が見ると恥ずかしい、微笑みの顔をしている。

 そこから、阪急・大阪梅田駅に向かって家路につくのだが、必ず「梅田スカイビル」を通る。縦長の細長のレゴブロックを2つ立て、上に横長の平たいレゴブロック橋をかけるようにして繋いだ、一見風変りなビルである。「風変りだから、大阪らしい」と言われると、大阪生まれ大阪育ちの私としては、やや心外ではあるが、どこかで「風変り」が、誇らしいアイデンティティでもあるのだ。「どっちやねん」という、面倒くささをもったまま42歳になってしまった。
 そうしてまた話しが脱線した。
 この日は、横長に平たいレゴブロック橋の真下には、鯉のぼりが、20匹くらいいた。赤青黄、緑の鯉のぼりたちは、悠々と泳いでいるようで、泳いでいない。垂れ下がっている。風がないからなのか、生きた鯉ではないから意志をもって泳げないのか。都会だからか。わからない。そんな、どこか切なさに共感したのか、反発したのか、思わずスマホのカメラを向けてしまった。下から撮ってみた。梅田スカイビルには、いろんな切ない恋の思い出があるから切なく見えたのか。故意に撮ったのかも、わからない。無意識にカメラを向けていた。


やねよりたかい こいのぼり
おおきいまごいは おとうさん
ちいさいひごいは こどもたち
おもしろそうに およいでる


 こいのぼりには、屋根より高くあってほしい。身勝手である。スカイビルより低い。おかあさんはいない。時代を表している。休日に子どもたちを置いて一人梅田に散髪に来た自分。おもしろそうではない。川でおよいでいる鯉のぼりたちのほうがおもしろそうにおよいでる。「泳いでいる」ではなく、「およいでる」で、文法的にいいのか?語呂はいいけれど。

 と、ここまで書いて気づくのは、完全に自分は、「屋根より低い鯉のぼり」をおもしろがっている。「梅田スカイビル」とセットだから、おもしろがっている。切なさはどこにいったのか。カメラに収めたのは、むなしい鯉のぼりではなかったのか? そうではなかった。
 カメラに収めたのは、「解放されたい、自分という鯉」だった。スマホで見返した時に、床屋さんを出た時のような、はずかしい微笑みをしていた。

 髪をばっさり切って、再出発した自分。人生初のエッセイまたは小説を書くための講座に初めて出た日。鯉のぼりを真下から撮ってしまった自分。まわりには、外国人観光客の方々も50人近くはいただろうなかで。カメラを上に向け、スマホを見て、微笑んでしまっていた。不思議と恥ずかしくはなかった。過去も、未来も置き去りにして、今を生き切った瞬間だった。

 横長にしたレゴブロックの天井の先に、青い空が見える。吹き抜けのようになっている。ふっと風が吹いた。刈り上げたばかりの耳の上。3mmの髪のあいだを、ここちよい春風が吹き抜けていった。屋根より低い鯉のぼりたちは、おもしろそうに、泳ぎ始めた。

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