渡辺(読書/散歩)

静岡県在住。読み書き歩きます。 散歩のこと、散歩中に考えたことなど500〜1000字く…

渡辺(読書/散歩)

静岡県在住。読み書き歩きます。 散歩のこと、散歩中に考えたことなど500〜1000字くらいで。 読んだ方が楽しくなるような、散歩したくなるような記事を目指して書きます。 ブログでは読んだ本を紹介してるので、そちらもどうぞ。 https://book-attic.com/

マガジン

  • 【奈良旅】吉野山の桜を求めて

    奈良県にある吉野山の桜、古刹、神社の有名どころを巡りました。 吉野山→万葉文化館→長谷寺→瀧蔵神社→大神神社→石上神宮→山の辺の道→檜原神社

記事一覧

紫陽花と詩人のこと(大鐘家、秋葉公園散歩)

公園や線路脇など、いたるところで紫陽花の花が見られる時期になった。花びらが集まり鞠のようにふわっと膨らんで見えるのは、西洋で品種改良されたもの。日本に元々あるの…

蓬莱橋とぼんぼり祭りのこと

5月25日、島田市にある蓬莱橋で行われたぼんぼり祭りを見にいった。蓬莱橋は明治期に大井川にかけられた世界最長の木造橋。不老長寿にちなんだ「蓬莱」の名と、897.4m(や…

夜の散歩と『モモ』に学ぶ「ぼんやり」礼賛

忙しい日々を送っていると、休日を、というより時間を無駄にしたくないという気持ちが強くなってくる。せっかくの休日をだらだらゴロゴロしているだけで終わらせるのはもっ…

三社祭の来場者数がやばい

先週末に行われた浅草三社祭に三日間でおよそ191万人が来場したというニュースを見た。当日の気温は今年最高の28.8度。ハレの日に暑さをぶつける神様の粋なはからいだ。画…

風が吹いた、花が揺れた

ぼんやりと歩く。なるたけ車の少ない道を選んで歩く。コンクリートの地面が土に変わる。緑が増えて、水の流れる音が聞こえてくる。それだけで心が落ち着いて穏やかな気分に…

蓮華寺池公園散歩、静岡とツツジのこと

木陰を歩くのが楽しい季節になってきた。藤枝市の蓮華寺池公園では桜のバトンは市花でもある藤の花へと渡される。藤まつりと平行して池を渡る鯉のぼり群は、晩春の風に吹か…

【奈良旅3日目④】山の辺の道、檜原神社

長岳寺を出てしばらく歩くと、でーんと巨大な森が見えてきた。周囲は茶色い水を貯めた広いお掘りで囲まれている。崇神(すじん)天皇陵だ。 多少遠回りになっても古墳のまわ…

【奈良旅3日目③】山の辺の道、長岳寺

「山の辺の道」は日本に現存する最古の道。天理市から桜井市あたりまでの山裾を南北に走っており、田畑や古墳、古跡、大和三山まで見渡せる景観良好なハイキングコースとし…

【奈良旅3日目②】石上神宮、山の辺の道

大神(おおみわ)神社への参拝を済ませてから、北上して石上(いそのかみ)神宮へと向かった。 石上神宮の祭神は布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)。日本神話でも屈指の武…

【奈良旅3日目①】大神神社、三輪山への登拝

4月12日は快晴。すき家で朝食をとってから大神(おおみわ)神社へと向かった。 大神神社は、大国主命(おおくにぬしのみこと)と共に国造りをしていた少名毘古那神(すくなびこ…

【奈良旅2日目④】長谷寺、瀧蔵神社

長谷寺の創建ははっきりしていないが、7世紀後半に道明(どうみょう)という僧が作ったといわれている。『源氏物語』『枕草子』『更級日記』にも名前が見られ、霊験あらた…

【奈良旅2日目③】日本人の心の故郷、明日香村と万葉文化館

コインパーキングで少し仮眠を取ってから、明日香村へと向かった。明日香村は6世紀半ばから7世紀終わり頃に栄えていた地域。その後は藤原京(694年〜710年)、平城京(710年〜…

【奈良旅2日目②】吉野山の千本桜

脳天大神龍王院の階段を登り、金峯山寺(きんぷせんじ)に戻ってきた。奥千本行きの竹林院前バス停には大勢の人が並んでおり、二台目のマイクロバスに乗り込むことができた。…

【奈良旅2日目①】脳天大神龍王院

初の車中泊に不安はあったが、なかなか寝付けなかったこと、何度か覚醒したこと、深夜帯が寒かったこと以外は概ね快適であった(それを快適と呼んでよいのか…)。今度は毛布…

【奈良旅1日目】吉野山の桜を求めて/七曲りの夜桜

奈良の吉野山に行こうと思い立った。思い立ったという言い方には語弊がある。いつか必ず行くと決めていた場所の一つが吉野山だった。 その動機は吉野山が、詩人・西行が愛…

桜あれこれ(牛代の水目桜/蓮華寺池公園/金毘羅山緑地)

待ちわびた桜がほころびはじめた。平年より開花が遅れたのは、暖冬の影響があるらしい。桜の開花には暖かさが必要だが、振れ幅となる寒さも大切なのだ。とにもかくにも、浮…

紫陽花と詩人のこと(大鐘家、秋葉公園散歩)

公園や線路脇など、いたるところで紫陽花の花が見られる時期になった。花びらが集まり鞠のようにふわっと膨らんで見えるのは、西洋で品種改良されたもの。日本に元々あるのはガクアジサイという品種で、粒状の小さな花を縁取るように大きな装飾花(ガク)が咲く。 紫陽花の色は土壌の成分で変わるらしいが、想像のままに言わせてもらうなら、梅雨の湿気と朝晩の寒暖差が繊細なグラデーションを作っているように思える。自分にとっての紫陽花は、濃い花びらを雨粒で薄めて作る花だ。 先日は牧之原市にある大鐘家

蓬莱橋とぼんぼり祭りのこと

5月25日、島田市にある蓬莱橋で行われたぼんぼり祭りを見にいった。蓬莱橋は明治期に大井川にかけられた世界最長の木造橋。不老長寿にちなんだ「蓬莱」の名と、897.4m(やくなし)という縁起の良い語呂合わせで、健康を祈願して渡る人も多い。 近年では駐車場周りが整備され、橋の袂にちょっとした土産物屋とカフェがオープン。橋の下には広めのスペースが作られ、イベントや祭りに使えるようになっている。 ぼんぼり祭りは2024年で31回目をむかえるイベントで、地元近隣の人たちの絵を貼ったぼ

夜の散歩と『モモ』に学ぶ「ぼんやり」礼賛

忙しい日々を送っていると、休日を、というより時間を無駄にしたくないという気持ちが強くなってくる。せっかくの休日をだらだらゴロゴロしているだけで終わらせるのはもったいない。どこかに出かけようとか、建設的な何かを始めようと考え出す。そのくせ布団の中でいつまでもスマホをいじっていて、いつの間にか昼になっていたりするから始末に終えない。 学生時代、長い夏休み。暇を持て余して無意味でくだらないことばかりしていた頃を振り返る。なんて雑な時間の使い方をしていただろうと思う。同時にしかし待

三社祭の来場者数がやばい

先週末に行われた浅草三社祭に三日間でおよそ191万人が来場したというニュースを見た。当日の気温は今年最高の28.8度。ハレの日に暑さをぶつける神様の粋なはからいだ。画面に映る様子からその賑わいと熱気を感じることができたが、191万という数字が大きすぎていまいち想像ができない。 参考として調べたところ日本最大級のロックフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の来場者数が26万人(2023年)、「コミックマーケット」も同じく26万人(2023年夏)、「東京モーター

風が吹いた、花が揺れた

ぼんやりと歩く。なるたけ車の少ない道を選んで歩く。コンクリートの地面が土に変わる。緑が増えて、水の流れる音が聞こえてくる。それだけで心が落ち着いて穏やかな気分になってくるから不思議だ。何か色々と考えていたはずだが、歩くほど言葉は少なくなっていく。「これでいいのだ」とバカになっていく。 詩人の山村暮鳥は詩集『雲』のまえがきに「詩が書けなくなればなるほど、いよいよ、詩人は詩人になる」と書いている。冗長な表現を削ぎ落とし、よく見せようとか、上手く見せようといったさかしら心を消して

蓮華寺池公園散歩、静岡とツツジのこと

木陰を歩くのが楽しい季節になってきた。藤枝市の蓮華寺池公園では桜のバトンは市花でもある藤の花へと渡される。藤まつりと平行して池を渡る鯉のぼり群は、晩春の風に吹かれながら気持ちよさそうに泳いでいた。 今年の藤は特に足が早かった。連休に突入したときには花の大半が見頃を過ぎており、夜間にライトアップする庭園はジャングルのように緑化が進んでいた。この時期は駐車場が有料になるので、藤を目的で来た人には気の毒なことだと思う。しかし、ツツジの花は満開を迎えており、その後には睡蓮やアジサイ

【奈良旅3日目④】山の辺の道、檜原神社

長岳寺を出てしばらく歩くと、でーんと巨大な森が見えてきた。周囲は茶色い水を貯めた広いお掘りで囲まれている。崇神(すじん)天皇陵だ。 多少遠回りになっても古墳のまわりを歩いてみた。広い、大きい。上空から形を見ることができないのは残念だが、古墳作りが大規模なプロジェクトであったことが肌でわかる。 続けて景行天皇陵を横目に進みながら、大和三山が見渡せるというビューポイントに立ち寄った。大和三山とは香久山(かぐやま)、畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)を指す。美しい畝傍

【奈良旅3日目③】山の辺の道、長岳寺

「山の辺の道」は日本に現存する最古の道。天理市から桜井市あたりまでの山裾を南北に走っており、田畑や古墳、古跡、大和三山まで見渡せる景観良好なハイキングコースとして現在も親しまれている。 自分が歩くのは石上神宮から大神神社までのおよそ15キロの道のり。道中にはこまめに道標が立っているので、迷うことはないはずだ。 池があり、林があり、寺社があり、田畑の間をひたすら歩く。景色は地元の田舎道に似ていないでもないが、いたるところに万葉の歌碑や古墳があるところに、歴史の重みを感じる。

【奈良旅3日目②】石上神宮、山の辺の道

大神(おおみわ)神社への参拝を済ませてから、北上して石上(いそのかみ)神宮へと向かった。 石上神宮の祭神は布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)。日本神話でも屈指の武闘派として知られる、建御雷神(たけみかづちのかみ)が持っている剣に宿る神様だ。スピンオフ過ぎると言いたいところだが、剣を御神体としていたり、剣に宿る神様を祀っている神社は他にもある。 木漏れ日がさす参道を進んでいくと、けたたましく鳴くニワトリたちが境内を闊歩している。石上神宮ではニワトリは神使として大切にされ

【奈良旅3日目①】大神神社、三輪山への登拝

4月12日は快晴。すき家で朝食をとってから大神(おおみわ)神社へと向かった。 大神神社は、大国主命(おおくにぬしのみこと)と共に国造りをしていた少名毘古那神(すくなびこなのかみ)が去ってしまった際、自分を祀ることを条件に国造りを手伝った大物主神(おおものぬしのかみ)を祭神とする、日本最古の神社の一つ。御神体は大物主神が宿る三輪山そのもので、原始的な信仰形態を残す神社だ。 大物主神に関して、神話の時代を経てからもこんな話が残っている。 時は崇神(すじん)天皇の時代(弥生〜

【奈良旅2日目④】長谷寺、瀧蔵神社

長谷寺の創建ははっきりしていないが、7世紀後半に道明(どうみょう)という僧が作ったといわれている。『源氏物語』『枕草子』『更級日記』にも名前が見られ、霊験あらたかな噂は唐にまで届いていたという。古くより絶大な信仰を集めていたお寺だ。 長谷寺に到着したのは15時30分。コインパーキングの従業員に招かれるままに駐車して、流れるように参道へと向かった。遅めの時間でも大勢の人で賑わっているのはさすがの古刹。399段ある登廊(のぼりろう)は、緩やかな作りになっていたので段数ほどの苦労

【奈良旅2日目③】日本人の心の故郷、明日香村と万葉文化館

コインパーキングで少し仮眠を取ってから、明日香村へと向かった。明日香村は6世紀半ばから7世紀終わり頃に栄えていた地域。その後は藤原京(694年〜710年)、平城京(710年〜784年)、長岡京(784年〜794年)と北上しながら目まぐるしく変わっていったが、一時は実質の日本の首都だった場所だ。そのため明日香村は「日本人の心の故郷」と呼ばれており、数少ない古都保存法対象地域にもなっている。 ここまでとってつけたようなハリボテの調べを披露したのは、実際に明日香村の中を走っていて

【奈良旅2日目②】吉野山の千本桜

脳天大神龍王院の階段を登り、金峯山寺(きんぷせんじ)に戻ってきた。奥千本行きの竹林院前バス停には大勢の人が並んでおり、二台目のマイクロバスに乗り込むことができた。 吉野山の桜は標高に合わせて下千本、中千本、上千本、奥千本と呼ばれ、それぞれ開花の時期が微妙にずれている。今回の旅の救いは、奥千本が満開だったということ。バス停前で交通整備をしているおじさんは、「上千本、中千本の散った花びらが下から吹き上がってくる様子も美しいので、帰りはぜひ歩いて下山してみて下さい」と教えてくれた

【奈良旅2日目①】脳天大神龍王院

初の車中泊に不安はあったが、なかなか寝付けなかったこと、何度か覚醒したこと、深夜帯が寒かったこと以外は概ね快適であった(それを快適と呼んでよいのか…)。今度は毛布、アイマスク、耳栓があれば、環境はなおよくなると思う。4月11日の吉野は快晴。6時頃は霧がかっていたが、7時にはすっかり晴れていた。 吉野駅は人が少なかった。出店の屋台が準備を始めているものの、くすんだ紅茶色になった葉桜を見に来る人は少ないのかもしれない。奥千本に向かうバスの始発は8時30分。時間に余裕があったので

【奈良旅1日目】吉野山の桜を求めて/七曲りの夜桜

奈良の吉野山に行こうと思い立った。思い立ったという言い方には語弊がある。いつか必ず行くと決めていた場所の一つが吉野山だった。 その動機は吉野山が、詩人・西行が愛した古くからの桜の名所であったことが挙げられる。 別冊太陽の西行特集号に吉野山の写真が多く載せられていた。一目千本満開の桜と、静けさを漂わせる神さびた雰囲気、そして西行の詩。いつかはと思う間に数年が過ぎて、これは「まとまった時間が取れたら…」などと待ち続けてはいけないと思い、旅の時間を捻出したわけだ。 出発前に吉野

桜あれこれ(牛代の水目桜/蓮華寺池公園/金毘羅山緑地)

待ちわびた桜がほころびはじめた。平年より開花が遅れたのは、暖冬の影響があるらしい。桜の開花には暖かさが必要だが、振れ幅となる寒さも大切なのだ。とにもかくにも、浮かれ出るように花見へと繰り出した。 河原や公園だけでなく、街中のあらゆる場所に桜が植えられていることに気づく。山野の緑に溶けた桜もいいが、コンクリートのねずみ色に添えられた桜もこちらの目を引く。 サムネ画像にもなっているのは牛代の水目桜。平日だが道路脇にはたくさんの車が止まっており、西は熊本、東は横浜まで県外ナンバ