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日本古典の面白い人〜無住『沙石集』

サザエさんに出てくる人がバグっている、と金属バットが言ってる、ということを過日述べましたが、日本の古典文学・説話集なんかにも、ヤバい人、面白い人はいっぱいいるみたいです。

本日紹介申し上げるのは、無住『沙石集』の一部。模擬試験か何かで、古文の問題として出題されてたのを、何故かふと思い出しました。

ある山寺に上人がいました。あるとき、修行者の集まりがあって、そのうちの一人の僧が
「私はねぇ、怒ったことなんて無いんスよ」
とか言ったことに対して、上人が
「凡人は『貪る、怒る、愚か』なことがあるもんでね。聖者ならそんなことはないもんですが。凡人は大なり小なり、貪ったり、怒ったり、愚かだったりするもんでっせ」という。
この僧「いや、私、怒らへんて言うてますやん」
上人「んなことないでしょ。嘘言うてからに」
僧「せやから、怒ったことないて言うてるやろぉぉぉ!!!」
と顔真っ赤にして首をひん捻って、怒鳴ってしまいました。
上人「な、そういうこっちゃ(こいつやっぱり凡人や)」

『沙石集』(筆者の超ざっくり訳)

これを試験中に読んで、笑いをこらえるのに必死でした。
この僧が「怒ったこと無いんじゃあ!」と言って怒っているのが滑稽なのは勿論ですが、この上人もめっちゃ煽っててヤバい人ですね。
煽っても怒らないようなら、この修行僧は聖者だ、ということなのでしょうが、絶対聖者じゃないと最初から思ってるので、論破しにかかってますよね。このヤバさをもってしても「上人」て言っていいんですかね。

この『沙石集』が無住という僧によって編纂されたのが1279〜83年ごろとのこと。今から800年近く前にも、こういう「すべらない話」のようなものが既にあったなんて。人の営みは変わらないものですね。

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