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【Destination】第41話 兵器


「戦争がはじまる」

それは「国家機構崩壊」、「法と秩序の消滅」、「性暴力と破壊の恐怖」これらが同時にはじまることを意味する。

戦争は人間の尊厳に対する直接的攻撃、個人や民族の存在を完全否定するもの。

戦場は人間がおかれる最悪の極限状況。

生身の人間が銃で撃ち合い、手榴弾を投げあい、刃物をもって殺し合う。精神状態はつねに異常。そうでなければ人を殺して平気でいられない。

そして、異常な精神状態が倫理や良心を簡単に乗り越えさせる。

他国民に性的暴力をくわえ、ためらいもなく惨殺して家に火をつける。そうすることが普通だと思えば迷いはなくなる。「なんのために殺すのか」という疑問をもった瞬間、兵士として失格。

戦争と紛争の歴史には、必ず組織的な性暴力がついてまわる。現代の戦争では戦闘員による兵器として、性暴力が大規模かつ無差別に展開されている。

性暴力は戦争において「兵器」「武器」「戦略」となる。紛争下における性暴力の被害者は多くが女性。なぜ性暴力が戦争で戦略的につかわれるのか。

それは、性暴力が敵の民族をただ虐殺する以上に、民族としての尊厳の部分を深く傷つけ、すべてを奪い支配する手段だから。

女性を襲うことは、「女性を守るため」に戦う敵の男性兵士に「女ひとり守れなかった」という無力さを知らしめ、精神的ダメージを与え、軍そのものを弱体化に追い込む意味がある。

今後、敵国の女性らが性交渉を嫌悪し、子供をもてなくする、「敵」の子孫繁栄を阻むのも狙い。

肉体的・心理的要因

・軍隊は男所帯であり、戦場での生活が長丁場となるため女性に飢えている。

・娯楽のない生活から、より快楽を求めようとする。

・戦争は人殺しであることから、兵士の精神状態は通常とはちがい、良心が麻痺して本能に走りやすい。

・戦場での極度の緊張状態から、ストレスにより攻撃的になっている。

・死の危険が多い環境から、なんらかの「メリット」を得ようとする意識が高まる。苦労した分だけ利益を欲する人間にありがちな心理。

・生物のオスは、本能的に命の危険を感じると子孫を残そうと躍起になる傾向がある。

その一方で、メスは妊娠すると命のリスクが高くなるため、オスを避ける傾向がある。こうなると双方の合意が得られず性暴力となりやすい。

メスは環境が安定したときに産んだほうがよいと考えるが、オスは1体で複数のメスを妊娠させられる。

危険の多い環境であればあるほど、オスは自分の子孫を残そうとする本能が働き、より多くのメスと交尾したいと考える。

これは生殖の際にかかるリスクとコストがオスとメスでちがうために生じる。

また「兵士は敵国の女性に対しては敬意をもたず、陵辱に対する罪悪感が薄れる」のも原因として挙げられる。

戦争が起きなくとも、国が少子高齢化に歯止めをかけるため、「女性の人権を剥奪する」「男性は女性をすきに扱ってかまわない」「女性に拒否権はない」。そんな法律ができるかもしれない。

もし、そうなれば、よろこんで受け入れる者がいるだろう。それが普通になれば、すべての男性が良心と理性を保っていられるのか。「それはまちがっている」と、ともに戦ってくれるのか。

どんなにつらくとも、悔しくとも、泣き叫ぼうが喚こうが助けはこない。助けを求めて声をだせば、くるのはまた暴漢。女性に抗う術はない。

そうなれば、女性は弱肉強食のジャングルで生きる小動物のように、周囲をうかがって隠れながら生活しなければならない。

体内にGPSを埋め込まれ、位置情報を把握されることになれば、逃げるのも困難となる。

一般社会でも80代の男性が20代の女性に性的暴行を加える事件が起こった。この事件からもわかるように、相手が80歳の老人であろうと、女性のほうが若かろうと腕力では男性に勝てない。

医学的にみても、80歳の男性のほうが明らかに筋力がある。

なにより、暴漢は最初から「怪我をさせてもかまわない、抵抗するなら攻撃するまで」と考えて犯行におよぶ。

そして、理性のない男性は欲望を満たすためなら、ありとあらゆる手段をつかう。

刃物を準備して脅す、背後から襲いかかる、周到に準備して助けを呼べない状況をつくり、口をおさえて羽交い締めにし、密室に連れ込んで暴行するとも考えられる。

そのため、かりに女性が格闘技や護身術を完ペキに身につけていたとしても、本気で襲いかかってくる男性の前では、なんのやくにもたたない。

「今からかかってくる、こうすれば倒せる」と打ち合わせした練習とは状況がちがう。暴漢が「今からアナタを襲いますので準備してください」と言ってかかってくるワケがない。過信は禁物。

同じ年齢、同じ身長、同じ体重の男女が、同じ期間、同じトレーニングを積み、ハンデなしのルール(急所への攻撃はなしとする)で殴り合った場合、女性が勝つ確率はゼロ。無謀であるというほかない。

急所攻撃や関節技を認めた、なんでもありの場合(武器をもつのはなし。素手での殴り合い)でも男性の勝率は95%とされている。

格闘技において女性が男性に勝つことは不可能で、同じトレーニングで鍛えたとしても通用しない。

その前に、女性が男性と同じトレーニングをすると、ホルモンバランスに乱れが生じ、心身ともに異常をきたす。

普段の生活で女性のほうが強くみえるのは、心優しく包容力のある男性が「本気をだせば傷つけてしまう」と理解し、力を抑えてくれているから。

女性を認め、ともに生きていこうと寄り添い、「弱いからこそ守ってあげなくてはならない」と考えているから。

女性が考える強さとは自己主張を強さ、それはたんなる「図太さ」。男と女の強さは箇所や意味合いが異なる。

「女性だから女性の武器を使う、男性だから威圧的な力を駆使する」これはただの敵対関係で男女差別や性暴力はなくならない。

男女間だけではなく、民族間、宗教、習慣の違い、見た目のちがいにおいても同じ。

互いにちがいを認め合い尊重し合って、尊敬と敬意をもった関係を築いていかなければ、搾取や貧困、差別のサイクルは絶対に断ち切れない。

「この世から争いがなくなることはない」



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