探究テーマ決め方[自分の授業の話]
だいぶご無沙汰してしまいました。
年度も変わり、学年が1つ進み、高校生もラストスパートになってきたわけです。
今年から授業をやります。
あなた高校生でしょ!?と。
まぁそうなんですが、昨今の教員不足により、自分の高校ではいよいよ生徒まで授業を持たねばならない運びとなってしまいました。
嘘です。
ただ授業を持つこと自体は本当ですが、1〜6限のような授業ではなく、プロジェクトの運営者というのが正しいのでしょうか。部活のような感覚で、完全に任意参加です。
テーマは探究です。
今日これを執筆している時点で既に2回授業が終わっており、想像以上の高評価を頂いているわけなのですが、今回は次回やるテーマについて、自分の練習を兼ねて記事にしていきたいと思います。
テーマ: 探究テーマの決め方
※ちなみに以前「探究テーマ設定方法 探究テーマ46個」という記事も書いていますが、今回は完全に自分で考える前提です。
今回は全て現時点での次回授業を進める手順と同じ順序で書いています。
ToDo1 自分を知る
探究テーマを決めるのは往々にして難しいことでしょう。
しかし多くの場合、1年間向き合うものです。適当に決めてしまうと酷い目に遭います。
よく「自分の興味をあることを」や「なんでも良いんだよ」と言われると思います。実際、自分の所属している学校含め、多くの学校で聞かれる言葉です。
その言葉に異論はありませんが、無謀です。
高校生で自分の興味を具体的の把握している人は、少数派であるはずですし、興味があることに気づいていない場合も多いです。そして個人的に最も危惧していることは、抱いている興味を対外的に発信することが億劫になってしまっている場合です。
自分の好きなものを否定されるのはなかなかに辛いものがあります。
余談が長くなりましたが、だからこそ私は「自分が何者であるか」という「自分の探究」を先に行うべきだと思っています。
探究は「なんで」の連続、故にまずは自己探究
私のプロジェクト(便宜上「授業」とします)は基本90〜120分の構成ですが、最初20分程度は必ず「自己紹介」をします。
2分〜3分で1サイクル、これを5サイクル程度行います。
1サイクルごとに参加者には移動してもらい、都度違う人と話してもらいます。
自己紹介といっても、名前以外のお題は全てこちらから振ります。
1000万円貰ったら何に使う?
無人島に何か1つ持っていけるなら何?
習い事何してた?
1日だけ異性になったら何する?
どんな才能に長けてみたい?
など、たらればの話から自分の過去の話まで様々です。ルールは1つ、与えられた時間は喋り続ける。
この時、皆最初は時間を持て余してしまいます。そして多くの人にとって自己開示は不安だと思います。
そこでまずこちらの準備として、「この空間は何をいっても良いんだ」と思ってもらえる空間作りを行います。
そしてある程度慣れてきたら、「なんで」と聞いてみて。と伝えます。先の不安を逆手に取り、『答えたくないなら「なんで」って聞き続けてごらん』と。
こうすることで1段階深い談話が生まれます。
自分に少し向き合ってもらい、その上で周りの人のバックグラウンドを知り、共通点があれば共感を覚え、その空間を安心できる空間にでき(一種の帰属意識(?))、相違点があるならそこは興味に繋がると思います。
「他人の興味ない」では正直探究はしんどいです。
まだ2回しかやっていませんが、相当自分の深掘りには繋がっているのではないでしょうか。
ToDo2 ゴールを捉える
「出口の見えないトンネル」と「出口が見えるトンネル」仮に同じ距離でも心理的に後者の方が負担は少ないと思います。
つまり、ゴール(目指す先)が見えるだけで気持ちは軽減されるはずです。
探究は研究に近いです。
そこで参加者には、膨大な量の研究紀要から3つ好きなの(若干の制限は設ける)を選び、読んでもらいます。
ここでの目的は、研究とはどこまでやれば良いのかを知ってもらうことです。
本職にしてみれば研究に明確な終わりは存在しないのだとは思いますが、そこはご愛嬌でお願いします。
目的を知ってもらえば、得てしてそこまでのプロセスは漠然と見えてくるはずです。
ただし次で言及しますが、個々で大事なことは自分ごとにしてもらうことです。
「大人だからでしょ」を避けて「自分ごと」にしてもらう
本物の論文を見せたら、間違いなく↑と言われます。おそらくabstractを読んでくれる人が過半数ならそのクラスは上出来です。
具体的にいきなり、「〇〇大学の〇〇教授が書いた〇〇〇〇って論文を読むとね~~~~~」
誰も聞きませんし、帰宅します。
そこで私はこの要綱を推奨しています。
ここに掲載されている研究要綱は全て高校生が書いていて、オフィシャルに認められたものです。そして全てがA4で2ページにまとまっています。
探究でコンテストに出したいと思っている人たちが多い自分のプロジェクト参加者たちにとっては、間違いなく超えなければならない壁であり、ライバルたちです。
1番皆が驚く言葉で言うと、
「これを書いているのはみんなと同い年だよ」
という文言でしょうか。
それを先に提示することは、臆する要因にもなりかねますが、それで良いと思っています。
2つのもののギャップを言語化するトレーニングじみたアクティビティを初回で行いました。
そこで既に伝えていますが、結果を出した人の成果と自分の成果の違いを言語化出来ずして、超えることはできません。
ToDo3 将来について考える
ここまでは言ってもウォーミングアップです。
ここが本場です。
「将来、やりたいことを考えて」
これは自分の解釈ですが、
探究はそれぞれが将来やりたいことを見据えてから行うことで、本来の価値が発揮されると考えています。
だからこそ自分の将来像を、変わっても良いので、一度見据えて欲しいと思います。
そこから逆算したら、知りたいことが自ずと見えてくるのではないかと。
この時、ToDo1で書いてもらったワークシート見ながら、ToDo2で読んだ論文や紀要、要綱から興味を持ったテーマを調べてながらで良いわけです。
初手から「好きなことを調べろ」と言っても、好きなことがわかりませんと突き放されるのが関の山でしょう。だからこそ潜在的にある興味や関心ごとを可視化しておくのです。
その上で
などを流し読みしてもらい、あとは進路指導の先生方と手口は相似です。
そのため(その仕事をする or その学問学ぶ)ためには何が必要?何をベースに知らないといけない?
例えば法曹界(法学部)に行きたい人が三権分立を説明することは前提条件以前の話です。
じゃぁなんで三権分立って大事なんだろうね。
これで探究テーマの出来上がりです。
これが気に食わないならば
もし三権分立が無かったら
三権分立制度より良い制度を考える
三権分立は機能してる?
などテーマは有象無象しています。
そして三権分立にこだわる必要はありません。
ここで初めて「なんでもいい」と伝えます。
このテーマを決める際にグループでも行えます。
ToDo1で書いたのをもとに、「へーこーゆーのが好きなんだー」という会話が生まれたら、また新たな気づきが自分に生まれるかも分かりません。
このあとは放置+雑談
テーマがある程度決まったら、背中を優しく押して、ではなく蹴っ飛ばして前に押し出してあげましょう。
そしてその後は野となれ山となれです。
僕の先生もよく言います
そして助けを求められたり、ドツボにハマっていたら、その窮地から抜け出すための術を提示します。行使はしまえん。
本当にやばかったら行使してしまうかもしれませんが。
あとは頻繁に軽く雑談です。
ここは話せる人がいて、みんなに相談できる場所、つまり安心できる空間を作り維持するためにです。
結論
ダラダラ大それたことのように書きましたが、つまるところ、自分が行なっていることは、『「参加者に長い目で捉えてもらう」という視点を経験』してもらっているに過ぎません。
真っ暗なトンネルに出口が見えれば、歩いている側は気持ちが大分楽になります。
しかしその出口を提示してはいけません。
あくまで出口の例を見せるのが上限でしょう。
授業を受け持たせていただくにあたり、相当準備に時間を要しています。先生方が1つの授業を作るのにどれだけ時間と労力をかけているのか、身に沁みて分かりました。
ただ面白いもので、この立場になったからこそ、準備ゼロで来ている先生は授業開始3分で分かるようになりました。
(1言多いのが僕の悪い癖)
受験も授業もちゃんとやんないと。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?