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「マイノリティ・リポート」はなぜ、傑作なのか

フィリップ・k・ディックの短編小説「マイノリティ・リポート」は、傑作である。言うまでもないが、スピルバーグの映画ではない。あの映画は、アクションに逃げた駄作であった。  マイノリティ・リポートの筋は、シンプルだ。未来予知によって発生が予見された犯罪を、捜査当局が阻止している近未来。捜査当局の長官である主人公は、「自分が殺人を行う」という予知を知り、逮捕を逃れるために逃亡する。その過程で、自分の犯罪についての三つの予知のうち、一つだけ異なった未来を述べた報告=「マイノリティ・リ

    • 藤子F不二雄先生の異色短編SFの魅力について

       私は、小学生の頃に、初めて「ミノタウロスの皿」を読んだ時の衝撃を、忘れない。  多くの子どもたちがそうであるように、私も「ドラえもん」の愛好者だった。私の父親は、「ドラえもん」だけでなく、「パーマン」も「オバQ」も「21エモン」も、買ってきてくれた。与えられるものならどんなものでもどん欲に読んでしまう子どもだった私のために。ある日、父がそれまでと同じように、藤子F不二雄のコミックスを買ってきた。「藤子F不二雄 異色短編集」という、彼が大人を意識し創作した作品に限定したセレク

      • スーパー戦隊が終わるとき

         スーパー戦隊の歴史が、終わろうとしている。  今月の三日、スーパー戦隊シリーズの新番組「爆上戦隊ブンブンジャー」の放送が始まった。1975年に放送された「秘密戦隊ゴレンジャー」から数えて、48作目だ。現時点までに放送された第一話、二話を、私は見ていない(私はもう20年以上、スーパー戦隊を見ていない)。SNS等で視聴者の感想を漁ってみると、こんな言葉が目立つ。 「久しぶりに、戦隊らしい一話を見た」  近年のシリーズが、いかに「戦隊らしさ」からはなれていたか、ということが、よく

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