I was born
娘の高校の国語の教科書を読んでいた。
「I was born」
吉野弘さんの詩が目に入った。これは、私が高校1年生の時に教科書で読んで、いちばん印象に残っていた詩だ。高校生の時、何度も繰り返し読んだ。30年近くたったのに、まだ変わらず、ここにあった。
当時16歳の私は、この詩を読んだ時、表現の仕方に驚くと共に、鳥肌が立つような感覚をおぼえた。授業もしたのだろうが、先生の解説は全く覚えていない。この詩は、散文詩で、映画のワンシーンのように私の心に残っている。儚げな文章のなかに、強い想いを感じる詩だと思った。
ある日、身重の女性とすれ違った少年は、生まれることは受け身であるという文法的な発見を父に伝える。少年の母親は、少年を産んですぐに死んでしまっていた。子どもから、生まれることが受け身であると伝えられた父は、どのような気持ちだっただろうか。父は蜉蝣の話を少年に伝える。
父は、直接的に息子に何かを伝えたわけではない。それでも、直接的な文よりもたくさんのことが伝わるだろう。蜉蝣をこれほどに美しく、せつなく表現できることに感嘆した。何度読んでも、心の奥のところがつーんとする。
すっかり忘れてしまっていたけれど、今回また出会えたことがうれしい。大人になって読むと、印象が変わる詩もあるけれど、これは高校生の時と同じ気持ちになった。もう一度出会えてよかった。
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