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すきなともだち

会うとかならず頭痛がするから
好きだけど苦手なのかな
と思っていた子がいて

笑いすぎて
酸欠起こしてる
ということに気がついてから
さらに好きになった

そんな大好きが一人暮らしを始めるにあたり
ミニマリストをめざしたいと

極小部屋に住んでいた
わたしに相談をしてくれた
(じぶんはこの部屋をかなり気に入っていたけれど監獄などなにかと言われやすい部屋だった
そんなところもいとおしく
彼女も何度も訪ねてくれていた)

ふたりで内見
その足で契約
空たかくひびく
とんとん拍子

ステンレスのすてきな鍋をえらび
弟くんが打ってくれた
お蕎麦をゆがいた

春の足どりスキップどころか
スケートしてた
スイ〜
おめでとう
たのしみだねえ

数日たって
新生活の様子をみにいった

近所の路地野菜たくさん食べていること
ケーキを焼いていること
ものを増やさないように気をつけて
ぴかぴかにみがいてること
うきうき暮らしているようで
一安心
けれど一緒にえらんだ
あのすてきなステンレスの鍋が見当たらない

そっとベランダにご案内され
ちょこんと置かれたすてき鍋

揚げ物してあつあつになったから
冷ますため外に置いたという

すっかり冷めたすてき鍋

そしていつもひまわりのような子が
しょんぼりとうつむく

打ちっぱなしにみえた
おしゃれなベランダには
保護のためにうすくコーティングがされており
熱々すてき鍋が
それとピッタリと融合してしまったのだった

あらためて見ると取手がないね
ひっぱったら取れたとのこと
そんなにうまくいきますか

すてき鍋に開いたちいさなよっつの穴
かつてのすてきな取手が
浮かんで見えた気がした


そこからまたしばらくして
ベランダにご案内してくれた
あの鍋と同じ大きさの
丸い跡
とれてるね◎

部屋の補修工の屈強なお兄さんが
外してくれたとのこと
よかったね
よかったね
よかったねえ

並んでベランダの鍋を見つめた日
あの子がまたひまわりになった日のことをわたしは忘れないのだ

横穴のあいた
すてき鍋で
漏れるからと
少量のお湯を沸かしながら
お茶を淹れてくれる子を
永遠に愛せずにはいられないのだ

夏がちらちらと見え隠れすると
会いたくなるのだ

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