「時が叶えてくれること」

「時が叶えてくれること」

 双子を持つ親の離婚率は、そうでない人よりも高いのだと、かつて聞いたことがあります。ホントなのかどうか知りませんが、そんなこともあるのだろうなとは思います。双子を育てる日常は半端なく大変だからです。

 私たち夫婦にも双子の女の子が生まれました。知っている限りでは、双方の親戚には双子はいませんでした。それだけに驚きもしました。双子を育てるのはどんなふうだろうと、のんきに思っていました。

 もうずいぶん昔のことになりますが、しかし、子どもたちが赤ん坊の時には、夫婦二人きりで双子を育てるのは実に大変でした。想像をはるかに超えていました。

 わたしたちにとっては初めての子供であり、通常の育児の本のほかに、「双子の育て方」という本も平行して読んでいました。(そんな本があるのです)。双子を持つ親が集まる「ツインマザーの会」というものがあって、わたしたちも随分通い、悩みを打ち明けました。

 それでも分からないことが多く、ふたりとも連日くたくたになっていました。

 今でも思い出すことがあります。子どもたちが寝たあとで、やっと少しの時間ができ、ほっとして、家内と一緒によく狛江駅前へ出てゆきました。深夜に二人でビールを飲み、ラーメンを食べました。いちにちの中のほんの少しの時間でしたが、解放された気持ちになることができ、こよなく嬉しい瞬間でした。

 そんなときにはたいてい、「いつかあの子たちも大きくなって、中学生になり、高校生になるんだね」という話をしました。そうなったら日常はどんなふうだろう、どんなに楽になるだろう、どんなに楽しいだろうと、夢のようにその日を想像していました。子どもたちの大きくなった姿を夢見ていました。

 その夢はあっというまに現実になり、二人の子は今はもう大人です。依然、我が家はそれぞれに大忙しで、息せき切って生きています。大変な毎日ではありますが、あの頃に比べればたしかに楽になりました。

 それでもときどきは、ふと思うのです。またあの深夜にもどって、くたくたな表情で家内と一緒に、深夜のラーメンを食べに行きたいと。顔を見合わせて、ビールの一杯を飲みたいと。今よりもずっと若かったふたりにもどって。

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