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年老いた両親にプレゼントした旅の話し。〜両親のリクエストその1〜

到着して、すぐ手配済みのレンタカーで父親の生まれ育った街へ。

父親のリクエストは、兄弟に会いにいく事と、ご先祖様のお墓参り。

あいにくの雨模様だったが、ひたすら車を走らせて、久しぶりのご先祖様にご挨拶。それから父の兄弟を訪ねて歩いておしゃべり。
父の弟叔父が、謎の手作り“ワキガが治る化粧水”をお土産にくれた。
「これが効くんだよ」自慢げに。
100均のまあまあ大きいボトルに、ご丁寧に1人一本づつ。私と母にはさらに美肌になるというボトル付き。怪しすぎる…苦笑
…私たち、今はレンタカーに乗ってますが、帰りは新幹線ですけど…
うちの田舎あるあるなのです。
新幹線なのに巨大なお土産…笑

その日、用意したホテルは、母親リクエスト。
昔から憧れていた“ホテル観洋”


いつも、お金持ちの親戚はここに泊まっていたらしい。自分は近くに実家があるので“もったいない”から行けなかったと。
ちょうど旅番組を見てたらこのホテルがでていたらしく、
「お母さんはいいからいいから」
が口癖で、いつも遠慮する母にしては珍しく、
「観洋に泊まってみたい」
即答だった。

車を走らせ、近づくに連れ、
“ここは…”
と複雑な気持ちに苛まれた。震災の時、ニュースでよく見た景色だった。
南三陸。

綺麗に整備された新しい道路。
不自然に何もない空き地。
その中にポツンと残る防災庁舎の鉄骨…

ここだったのか…

自然の脅威と人間の底力を感じた。
きっと、私たちには到底理解する事ができないほどの苦しみから立ち上がってきたのだろう。
こうして、道路を走れるようになっている事も、地元の方々の努力のおかげ。感謝が込み上げてきた。

ホテル観洋も被害に遭っていた。
強度な岩の上に立つ鉄筋だったおかげで、流される事はなかったが、3階まで津波が流れ込んできたらしい。
その後、無事だった上の階は、避難所や、ボランティア達の宿泊施設になっていた。

部屋から見る、南三陸の海はとても穏やかで美しかった。養殖筏が浮かんでいる。あんなに恐ろしい経験をしても、人間は海の恩恵を受け、共存する事ができるんだ。

偶然、その日は金環日食の日。
屋上で天体観測イベントが行われていた。空を見上げている私達の歓声や笑い声…目の前の静かな夜の海。
私達はこの宇宙の、この地球という星で生かされているんだなと、壮大なスケールの中で感じた夜だった。

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