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小学校の校長先生

もう40年も前、通っていた小学校の校長先生は、朝、校門の前で挨拶をしていた。まだ私は小1だったのに、ちゃんと名前を覚えてくれていて、「○○さん、おはよう」と声をかけてくれていた。今から思えば、すごいよね。その頃はまだまだ子どもの数が多くて、確か1学年に5クラスあったし、ひとクラスは40人くらいいた気がする。200人分の名前と顔を毎年覚えてたってことだよね。

だから、子どもたちは、校長先生のことが好きだった。名前を呼ばれるって嬉しい。

家の近くに、広い公園があった。丘のような小さい山のような広い公園。春は桜が咲き、そのあとツツジが咲く。近所の何家族かでお弁当を持って桜のお花見をしたし、ツツジは蜜を吸い放題だった。夏休みには蝉を取りに行った。小学校の遠足はその公園でかくれんぼをした記憶もある。幼なじみと遊びに行くといえば、その公園だった。

休みの日、校長先生はよく公園を散策していた。皆慕っていたから、校長先生〜何してるの〜?と話しかける。たしか、先生は植物が好きで植物を見ていると答えてくれたと思う。ふぅん。私達には植物を見る楽しみはよくわからなかったから、そのままさよなら〜と別れた。どんな楽しみ方をしていたんだろう。もしかしたら、メモ帳に描いてあとで辞典で調べたりしていたのだろうか。植生を地図に書き込んだりしていたのだろうか。それともただただ見るだけを楽しんでいたのだろうか。

南方熊楠記念館に行ったとき、粘菌やきのこ、シダ植物などの標本の図と細やかな記載を見て、ナウシカと校長先生を思い出した。そして、静かで穏やかなたたずまい、力のある澄んだ目が一緒だと思った。

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