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星空の下で、静かな海鮮バーベキュー 3段落エッセイ

夏、母の実家に帰省すると、決まって夜にバーベキューの日があった。

バーベキューというより、七輪を囲んで一族でゆっくり美味しいもの食べて飲んで語り合う晩ご飯だった。亡き祖父と叔父と父が素潜りで採ってきた貝(トコブシ)を炭で焼く。叔母が奮発して買ってくる牛肉の焼肉も。たまに、アワビが採れて刺身にして食べる。コリコリっとして旨みが強く、少し甘めの濃い醤油につけて食べたあの味。トコブシははじけるから蓋をして焼く。歯ごたえがあるから子どものうちは小さいサイズのを好んで食べた。ああ、また食べたいな。肉は炭でじゅうじゅうと炙られ脂がしたたる。焼き肉のタレってなんであんなに美味しいんだろうね。そしてビール。子どもはお茶か瓶のオレンジジュース。炊飯器を外に持ってきて白いご飯が欲しい人はそこからよそう。昼間は海で遊んで、縁側で昼寝して、そのあと祖父が七輪の炭を熾すのを手伝いたがる私は、そのころにはお腹ぺこぺこでモリモリ食べた。

祖父の家にはうってつけの庭があった。外から細く出入りできるけど中庭のような庭。田舎だから、滅多に人は通らないけど、たまにご近所さんが、いいですなぁ、とか、お孫さん?大きくなったわねぇなどとニコニコ声をかけて通り過ぎていった。外の細い通路以外は全部畑だったし、バーベキューなんてと眉を顰めるような人はいなかった。のどかだ。芝生にゴザを敷き、大きな厚い板の上にキンカの四角い七輪と普通の丸い七輪に網を乗せて。3方を囲む軒下に等間隔に灯りを吊り下げる。四方には蚊取り線香。笑いさざめく大人たちの話を聞くともなしに聞く。お腹いっぱいで寝転ぶと満点の星空。祖父(あるいは祖母も?)はアイデアマンだったなぁ。あんなシチュエーションで食べるものほど美味しいものはない。


ネットで見かけて懐かしすぎて購入した。あのシチュエーションごと買えたらいいのに。

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