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読書録

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読んだ本の感想などです。
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読書録 「生きがいについて」

神谷美恵子「生きがいについて」(みすゞ書房) 書店や図書館で手に取った本の中で心に刺さる一文を見つけた時、生きていてよかったなと感じる。 本書はそんな一冊だ。 結局、人間の心のほんとうの幸福を知っているひとは、世にときめいているひとや、いわゆる幸福な人種ではない。かえって不幸なひと、悩んでいるひと、貧しいひとのほうが、人間らしい、そぼくな心を持ち、人間の持ちうる、朽ちぬよろこびを知っていることが多いのだ。 人間の存在意義は、その利用価値や有用性によるものではない。 野

今が辛い人へ~ある過去の日記から~

引っ越しに向けて部屋の片づけをしていたら10年以上前の日記が出てきた。 大分前に森山直太朗の「生きていることが辛いなら」を毎日聴いてしまうようなメンタル不調に陥った時期があった。 今思うと取るに足らないことで悩んでいたにも関わらず、当時は出家したいと本気で考え色々な、お寺を探していたことが日記からうかがえる。 余談だがnoteに投稿した記事で、タイトル脇に年月表記が付記される内容をリアルタイムで書いていたのは、そんな人生がうまくいかず悶々としていた暗い時期だった。 以

物語の効用

僕たちが分かることはほんの一部で、わからないことの方が圧倒的に多い。 現実世界は複雑怪奇。 数学で答えが出るのは、ほんの一部の簡単な問題だけ。 三体問題の事例を持ち出さなくとも完璧なシュミレーションを作れないことは容易に理解できるだろう。 だからと言って、安易にスピリチュアル的なものに走ってはいけない。 極端な例かもしれないが、僕がカラオケで歌っている楽曲が流行した90年代は、某新興宗教団体がカルト的な事件を起こして世間を震撼とさせた。 驚くべきことに首謀者たちは高学歴

祈りと社会的処方箋

先日、Instagramに投稿した通りアート・ミックス・ジャパン2024を見るべく新潟市民芸術文化会館、りゅーとぴあを訪ねた。 僕は法相宗大本山 薬師寺の「修二会花会式」を見たくて事前にチケットを購入していた。 花会式とは、意識・無意識のうちに犯している過ちを僧侶が国民に代わって懺悔し、国家繁栄・万民豊楽・天下泰平・風雨順次・五穀豊穣・病気平癒を薬師三尊様に祈願する、8世紀から続く日本の重要な法会である。 御本尊に10種類の造花を供えることから花会式と呼ばれる。 開演

新社会人だった僕に贈る言葉

たしか、伊集院静さんが毎年この時期に「新社会人へのメッセージ」という文章を新聞広告で発表されていた。 実は春になると、毎年この伊集院さんの文章を読むのが楽しみだった。 残念ながら昨年11月に旅立たれて今年は新社会人へのメッセージを読むことができない。 ないものねだりをしても仕方がないので、こんな時は何度も伊集院さんの著書の言葉を反芻してきた過去の自分へ語り掛けよう。 これは「13年前の僕へ」の続き。 新社会人になる僕へ 札幌からの引っ越しも済んでほっと、ひと段落つい

四月になれば彼氏は

やはり色々と誤解を招くような恐れがあるのでこの順番で読んで頂きたい。 ちなみにyoutubeは某第一興商からのクレームで強制的に削除されてしまったので現在は閲覧できない。 近々Instagramの動画に差し替える予定。 ①注意書き ②冷静と情熱のあいだ ③それって、どうなん? ④笑顔の明日を祈ること ⑤近況報告 ⑥ひとりぼっちを笑うな。 ⑦恋音と雨空 この記事を精読すれば誤解されることはないと期待したい。 よろしくお願いいたします。

読書録「海を眺めていた」

飛行機で移動するときは軽く読める短編小説やエッセイ集の文庫を機内に持ち込む。 今回、手元にある本はnoteで知り合った三鶴さんの「海を眺めていた」。 noteの記事では、さぁーと読み流していた。…すみません。 本を手に取って改めて精読すると表題作をはじめ繊細な文体に心が震えた。 中でも「ひたむきな、余りにひたむきな〜息子〜」を読んだ時の感動は言い尽くせない。いつも僕のnoteを読んで頂いている三鶴さんに、お礼と「海を眺めていた」の感想をどうしても伝えたいと思い、投稿した

僕のエンゲル係数

僕のエンゲル係数は低い方かも。 エンゲル係数とは、「家計の消費支出にしめる食料費の比率」のこと。総支出にしめる食料費の割合が低下する場合、エンゲル係数が低いという。 すなわち食料品以外にお金を使っているのだ。 多分、一番お金を使っているのは書籍。 カラオケではない笑 でも心の栄養には本は欠かせない。 本を抱えて帰宅すると家族からは、 また買ってきたの? と眉をひそめられてしまう。 別に変な本を買っているわけではないけれど購入した後、積読している僕の部屋の本を見て色

続・心を込めて花束を

今日の午後に半年ぶりに歯医者に行った。 来週、保険証を会社に返却するからそれまでに受診しないといけないと考えていた。 本日担当して頂いた歯科衛生士の方がめちゃくちゃ美人で性格も良く気分が良かったので結局、カラオケに行った笑 著作権に配慮した「プラチナ」も歌ったのでよろしければご視聴下さいませ。 プラチナ 復興支援カラオケについて そして、もう一つ嬉しすぎるニュースが。 それは、大谷翔平選手のご結婚ではなく、僕の友人、いや姐さんと慕っているCamomilleさんが僕の

読書録 最大のライバルは自分自身

月刊武道2023年12月号 巻頭リレーエッセイ203 坂東眞理子「己に克つ」 武道もオリンピックや国体の種目に取り入れられているので、勝負は重要である。勝つことを目指して練習を重ね、体を鍛える。勝つために手段を択ばず何でもありではなく、ルールにのっとり、チームのメンバーと協力して堂々と戦う。それでも力及ばず敗れることもあり、人生を知る良い経験になる。 多くのスポーツもトップに近づくと技や体を鍛えるだけでなく、集中力などの精神力が重要になってくる。中でも武道は他のスポーツに

スキナー「動機、意図およびテクストの解釈」の再構成レポート

経済学部一年 竹内 康司  解釈に際して著者の動機や意図を考慮すべきではないと主張する批評家は、「動機」と「意図」を知る目的について混同した議論をしているとスキナーは指摘した。そこで、スキナーは、まず意図と動機を知る目的についてそれぞれ区別して議論を進める。  著者の動機について知ることは、特定の言語行為を促すきっかけを知ることである。著者の動機は作品の出現に先行し、作品との結びつきは偶然的なものと見なされる。したがって、「動機」はテクストとは無関係であることを彼は認めて

社会学レポート課題

【論文タイトル】 田中 善紀,2010,「グローバリゼーションへの対応:シンガポールにおける外国人労働者問題と市民社会(西口清勝教授退任記念論文集)」『立命館經濟学』58(5/6), 992-1008 【要約】 シンガポールのように人口が少なく、労働資源が重要な国にとっては、外国人労働者の導入は重要である。実際、外国人労働者は労働人口の30.3%を占め、シンガポール経済は著しく外国人労働者に依存している。また政府の外国人労働者(移住労働者)政策はシンガポール政府のグローバリ

暴君殺しについての一考察

経済学部一年 竹内 康司 1人の偉大な政治指導者を殺害する個人的暴力は、いかにして正当化されるのか。この問題を考えるにあたって、参考資料を踏まえ、二つの側面からアプローチする。一つは古代ローマの著作物における「暴君誅殺」の合法性と、もう一つは「偉大な指導者」が「暴君」となりうる経緯についてだ。 まず、前者では、古代ギリシャ、ローマの著作家たちは、「暴君誅殺」は善きこと、「国王暗殺」は悪しきこと、と見なしていた。その背景には個人の権力濫用を抑制する目的がある。これは自由主義者

思想史とは何か。学期末レポート

(1)リチャード・ローティの議論を踏まえて、丸山眞男「思想史の考え方について―類型・範囲・対象―」を検討する。 リチャード・ローティは「哲学史」の記述法として、合理的再構成・歴史的再構成・精神史・学説史の4つのジャンルを提示している。 大雑把に捉えれば、ローティの説く合理的再構成は、現代に、歴史的再構成は過去に軸足を置くものだ。「哲学史」を記述する際、合理的再構成の支持者は、「過去の人間が論じた諸問題に関する今日の最良の仕事」に照会して、過去の偉大な哲学者を見ることを強調す