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[法案調査]グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)政府間機関の設立に関する条約の締結について承認を求めるの件

要旨 - Summery

2024年参議院第213会国会にて議論される「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)政府間機関の設立に関する条約の締結について承認を求めるの件(1)」について浜田聡参議院議員の依頼で調査を行ったので、その結果を依頼に基づき公表する。

(1)グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)政府間機関の設立に関する条約 - 外務省

背景 - Background

航空優勢は現代線を優位に戦うための必要条件であり各国は、最先端の戦闘機開発を競っている。

アメリカはすでにF-16の後継機として最新鋭の第5世代ステルス戦闘機F-35の国際共同開発に成功し、現在配備を進めている。NATOのF-16運用国もF-35への更新を進めている。

現在、日本は第3世代機F-4の後継機としてF-35を導入済みであり、さらにF-16をベースに日米共同開発したF-2好景気の2035年導入を目指して、英国、イタリアと次世代戦闘機を共同開発する「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」に着手した。

GCAPは開発費だけでも数兆円が見込まれる巨大な事業であり、日英伊にとって国内の航空・防衛産業活性化の目玉プロジェクトとなっている。また日本にとっては同盟国アメリカ以外と組む初めての戦闘機共同開発であり、政治外交面での意義は大きい。それゆえに、コストやスケジュール等の事業管理は難しく、日米の相互運用性の確保などの重要課題も多いのである。

一方で、ドイツ、フランス、スペインもGCAPのライバルとなる次世代戦闘機の共同開発(FCAS)を進めており、中国やロシアも第6世代戦闘機の国内開発に取り組んでいる。

これらの最新戦闘機開発の行方は将来戦の優位のみならず、航空・防衛産業の供給網や海外輸出、さらには同盟関係のあり方まで左右する可能性すらあるのである。

その様な流れで2022年12月9日にGCAPに関する日英伊共同首脳声明が発表された。

その開発、配備、運用は数十年の長期に渡り、3カ国の政府、軍、多数の企業が多くの分野で重層的に共同・協力することになる。成功すれば日英伊の安全保障・軍事の絆は極めて深くなる。共同訓練や部隊展開が一時的な軍事協力のフローであるとすれば、共同開発はストックすなわち構造化であり、GCAPはまさに英国の言う「新たな同盟」の象徴となると言われている。

GCAPに至る背景には日英両国の安全保障パートナーとしての相互重視があった。

2013年6月には日英首脳会談で、アメリカ以外の国との初めての防衛装備品に係る強力で合意し、7月に「日英防衛装備品・技術移転協定」に署名。2015年1月、日英外務・防衛閣僚会合で共同研究の開始に合意した新たな対空対ミサイルは2022年プロトタイプの試作を終了し2023年度末にプロジェクトを完了する見込みである。

英国は、現有のユーロファイター・タイフーンの後継機「テンペスト」の開発について2019年にスウェーデンと2021年にイタリアと覚書(MOU)を締結している。

英国のテンペストと日本のF-2後継機は要求性能や導入時期等の共通点が多く、お互いにとって利益のある関係が期待できる。

巨額な開発費用と技術リスクの底下法案調査んもメリットでありJNAAM(新型対空ミサイル)の経験で積み上げてきた技術協力の実績が日英共同開発を後押しした。これにテンペストMOU締結国のイタリアが加わり、日英伊の3カ国共同開発としてスタートした。

また2022年12月の日英伊共同首脳声明と同時に、防衛省とアメリカ国防省はアメリカがGCAPを支持すること、日米が「日本の次期戦闘機をはじめとした装備を保管しうる、自律型システムに関する重要な連携を開始した」ことを共同発表したことにより、日米同盟とGCAPの枠組みを可能となった。

条約の概要 - Method

外務省が発表した条約の概要

1.「GCAP政府間機関(GIGO)」の地位、任務等

・産業界とのGCAPに係る契約は、実施期間がGIGOを代表して交渉し、締結し、及び管理する。(第13条)

・GCAP実施期間はGCAPのすべての段階の管理、調整及び実施を引き受け、そのための必要な能力を有するものとする。(第9条、第11条)

2.締約国の義務等

・締約国は実施機関とともに、GIGOの財政的利益を不正から保護するためにその行動を調整すること。(第22条から第27条)

・締約国はGCAPのための装備、技術等の非締約国への輸出を円滑にするための共通の仕組みを創設し、及び維持すること。(第51条)

・本条約の解釈又は適用に関する締約国間又はGIGOと締約国との間の紛争は協議によって解決すること。(第57条から第60条)


事前評価 - Assessment

1.「GCAP政府間機関(GIGO)」の地位、任務等

GIGOの本部はイギリスに置かれることになっておりこれと引き換えに初代トップは日本人がつくことになった。それ自体は良いのだが本部はそう簡単に変わらないがトップは任期制でいくらでも変えられるので、今後も2代目以降のトップは日本人が着く様にして主導権を完全に奪われない様にするべきだと考える。

ただやはり本部を日本ではなくイギリスにしてしまったのは失策の感が否めない。

2.締約国の義務等

主な内容はありきたりのものだが第51条の非締約国への武器輸出に関する部分は非常に良い内容であると評価できる。
今までの日本は武器を作るが諸外国に売らないので、武器を作る企業の利潤が少なくなってしまうが今後こうして武器を売っていく流れを作っていくことは未来の日本の軍需産業にとってとても有益なものであると考えられる。

想定質問 - Discussion

1.GIGOの本部の位置について

GIGOの本部の位置について人事と本部の所在地で形式上日英伊3カ国はバランスを取ったが、両組織の本部が英国に置かれることで日本政府が掲げる「日本主導の開発」が後退するとも考えられるが、今後日本主導の開発が後退しないためにどの様な対策を取るつもりなのかを外務省に問いたい。

2.今後の起こりうる内部問題への対処について

国際共同開発は参加国の優れた技術を持ち寄って、開発コストや技術理数を分担提言できるメリットがあるので西側諸国ではあるが運用要求の相違や経費分担と製造部位等のワークシェア、知財の貴族等、各国の思惑と利害が衝突する要因も多い。

実際にフランスはユーロファイター共同開発から離脱し、ラファールの独自国産に成功している。GCAPのライバルとも言える独仏のFCASはスペインが参画したことでワークシェアの合意が崩れたため、開発作業が中断した結果、運用開始が大幅に遅れる見込みである。

GCAPは日英伊の政府間及び参画する三菱重工、BAE、レオナルド社当の間で英伊の間で協力の座組や製造分担等を交渉中であり今後の発展を見守る必要があると言われている。

こういった問題が起こる可能性を日本政府は把握しているのか、また問題が発生した場合にどうやって解決していくつもりかを外務省に聞きたい。

3.開発したGCAPの輸出について

日英伊首脳共同声明には「このプログラムは、まさにその本質として、我々の同盟国やパートナー国を念頭に置いて設計されてきたものである」と記されている通り輸出が前提となっている。

実際、開発した戦闘機の輸出は機数増による量産単価の低下や生産・技術基盤の維持だけでなく、輸出先運用国との相互依存関係の深化につながる。日英伊の更新予定機数の合計は約350機だが、潜在的な輸出先はサウジアラビアを筆頭に数百機の可能性が見積もられている。

独仏のFCASが大幅に停滞し、アメリカのNGADの輸出が想定されない状況で、英伊がGCAPの輸出にかける期待は大きい。もちろん日本の防衛産業にとっても完成機輸出のメリットは計り知れない。よって防衛装備移転三原則の見直しの政治決断が必要である。

そこで外務省に防衛装備移転三原則の見直しの具体的な予定や見通しを問いたい。

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