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ひがし北海道フリーパスで行く道東一周の旅


エスカロップが食べたくて

エスカロップという料理をご存知ですか? 北海道の東の端・根室で親しまれているご当地料理です。タケノコ入りのバターライスにポークカツを乗せてデミグラスソースをかけたその料理。今から何年か前に一度食べたことがあるのですが、その美味しさに感動し、今度は本場の根室に食べに行こうとずっと思っていました。
何度か行こうと思って予定を組んだこともあるのですが、コロナ禍もあってなぜか流れてしまうことが続きました。何しろ、根室は遠い。そして宿が少ない。そんな中、10月初旬に一週間のお休みをもらった私は宿泊サイトをチェック、奇跡的に3連休の最終日に空室を見つけ、今しかないと行くことにしたのです。

今回、根室への行程を探るにあたって見つけたのが、JR北海道がいくつかの航空会社と連携して販売している「ひがし北海道フリーパス」です。私はAIR DO版を使って、根室まで公共交通機関のみを使って行くことにしました。期間は4日間、しかも特急や快速列車の指定席も5回までは無料で指定可能というお得なきっぷ。せっかくですから、道東方面を一周してみようと旅程を組みました。

旅のお供はGoogle Pixel 7a。普段、撮影旅行の際は一眼レフを、乗り鉄の際はコンパクトデジカメを持っていくのですが、今回は荷物を減らすため、写真もきれいに撮れるスマートフォンで行くことにしました。

1日目(一気に根室へ)

現在住んでいる埼玉県所沢市から羽田空港へは少し距離がありますが、東京空港交通と西武バスによる高速リムジンバスが走っています。しかも7月にダイヤ改正があり、自宅の最寄り駅である小手指駅からの始発列車に乗ると間に合う早朝便が設定され便利になりました。これに乗って羽田空港へ向かいます。

小手指駅から始発列車に乗車
所沢駅から高速バスで羽田へ

この日は3連休の最終日。東京から地方へ行く観光客はそれほど多くはないかと思いましたが、意外や意外、多くのお客さんでごった返していました。

羽田空港第2ターミナルは人でいっぱい

さて、AIR DOの15便に乗り込みます。今回は運よく窓側席を取ることができました。関東地方はあいにくの雨模様でしたが、東北地方北部くらいから晴れてきました。青森市がきれいに見えました。

青森市上空

10時前、新千歳空港に到着。3連休最終日、東京などへ戻る人たちで既に空港は大混雑でした。
さて、ここで新千歳空港駅の指定席券売機のみで発売している「ひがし北海道フリーパス」を購入します。その後は少し時間があるので新千歳空港内のフードコートでラーメンを食し、お昼ごろ、新千歳空港駅から列車に乗り込みました。

新千歳空港は朝から大混雑
「ひがし北海道フリーパス」を購入(乗ってきたAIR DO機と絡めて)
新千歳空港で食べた塩ラーメン

新千歳空港駅には有名な看板があります。北海道と本州を重ねた地図。今日は一気に根室まで行くのですが、これを見ると、ちょうど岐阜から東京を通り越して水戸くらいまで行くイメージでしょうか。うん、遠い。

新千歳空港に来たらやっぱりこの看板

新千歳空港駅の隣にある南千歳駅から特急おおぞら5号に乗り込みます。多くの乗客が乗っていましたが、予め指定券を買っておいてよかった。
特急おおぞら号は石勝線から根室本線に入り、帯広を越えて、たっぷり3時間半近くをかけて釧路に到着しました。

南千歳駅から特急おおぞら号に乗車
音別駅のそばでは海沿いを走ります

16時前、釧路に到着。ここから先、根室本線の末端区間は特急列車が走らない閑散エリア。通称・花咲線と呼ばれるこの区間。走っているのは武骨な国鉄型ディーゼルカーのキハ54。もともと特急列車で使用されていたという、少し古さは感じながらもリクライニングする柔らかなシートで快適に旅をすることができました。

釧路駅で。根室行普通列車はキハ54
厚岸湾できれいな夕焼けを眺めました

列車は途中、線路内に頻繁に侵入するエゾシカさんたちの大歓迎を受けながらもほとんど遅れなく進みます。花咲線が一番海に近づく厚岸湾では見事な夕焼けを見ることもできました。

そして19時少し前、ついに日本最東端の終着駅・根室に到着しました。

根室に到着
夜の根室駅舎

この日宿泊するのはイーストハーバーホテル。根室を代表するシティホテルです。そして、ここで何と夕食でエスカロップをいただくことに。夢にまで見たエスカロップに舌鼓を打ちます。タケノコの入ったバターライス、薄いポークカツにデミグラスソース。あぁ、うれしい。何と美味しい。至福のひと時を楽しみました。

宿泊地・イーストハーバーホテル
そしてこれがエスカロップです!

2日目(納沙布岬→生田原)

翌朝、目を覚ますと雨。予報通りとはいえ残念です。
この日の予定は、まずは納沙布岬へ行って、そこから再び釧路へと戻り、網走を越えて、生田原に泊まる行程。

まずは納沙布岬へ行く前に少し寄り道。
根室駅前のターミナルから花咲港行のバスに乗って降りたのは緑ヶ岡団地入口バス停。そこから10分ほど歩いたところに、日本最東端の駅・東根室駅があります。昨日は暗くなってから通過しただけでしたので、朝一番のバスで行ってみたのでした。

花咲港行のバスに乗り込みます

ホームが1線あるだけの簡素な駅ですが、記念の銘板のようなものがありました。

日本最東端の駅・東根室
東根室駅ホーム。列車には乗れず

さて、本当はここで7時59分発の根室行に乗車して、その後、8時20分発の納沙布岬行のバスに乗り継ぐというスケジュールでした。ところが、雨が激しく降り続ける中、時間を過ぎても列車が来ません。するとそこで根室駅からアナウンス。なんと、大雨の影響で現在50分遅れとのこと。
待合室もないここでは到底待てないですし、何より納沙布岬行のバスに間に合わない。これはマズい! 大慌てで大通りのある中学校の前まで行ってみたら、たまたま運よくタクシーの空車が通り掛かりました。慌てて乗り込み根室駅まで送ってもらいます。まさに幸運。そして何とか8時20分発の納沙布岬行のバスに乗ることができました。

納沙布岬行のバス。雨が激しく降っています

根室に来たからには、納沙布岬には行かないともったいない。根室駅の駅員さんに雨と運転の見通しを聞いて、何とかなりそうとのことで納沙布岬へ。バスには、私の他には、旅行客風と思われる乗客が1人いるだけ。寂しい限りですが、結局最後までそのおじさんと2人のみでした。

納沙布岬到着時は大雨。
岬ということもあって風も強く、傘は何度も煽られてずぶ濡れですが、それでも納沙布岬の銘板、灯台、そして北方領土返還の想いを込めて造られた「四島のかけはしと祈りの火」を見て、バスの待合室も兼ねている北方領土資料館で往時の暮らしや動物のはく製などを見学して、50分ほどのバス折返し時間を楽しみました。

納沙布岬の碑
納沙布岬灯台
四島のかけはし、祈りの火
北方領土資料館
折返しの根室駅行バス。背後はオーロラタワー

根室駅に戻ったのは10時前。駅員さんに聞いてみると、朝方は1時間近くの遅れがあった花咲線ですが、次の11時の列車は15分程度の遅れで済みそうとのこと。到着後すぐに折り返すとのことで慌ただしく撮影しましたが、快速はなさき号で根室を後にしました。あいにくの雨模様なので、昨日は夕焼けがきれいだった厚岸湾は灰色に沈んでいました。

根室駅で発車を待つ快速はなさき
雨に沈む厚岸湾

少しずつ遅れを取り戻していった快速はなさきは、2時間と少しで13時半前に釧路に到着。地方の拠点駅らしい重厚な駅舎が出迎えてくれました。
花咲線には「地球探索鉄道」と銘打ったラッピング列車がありますが、ちょうど入れ違いで根室へと発車していく列車にそれが充当されていましたのでSL冬の湿原号運行に合わせて設置された「湿原の鐘」といっしょに撮影。

あまりにも重厚な釧路駅舎
地球探索鉄道が発車

ここで昼食。駅構内にある「なつかし館蔵」というお店で釧路ラーメンとザンギをいただきます。釧路ラーメンは細打ちの麺とシンプルな具材が特徴。ザンギはニンニクが効いていました。

お昼は釧路ラーメンとザンギ

お腹もいっぱいになったところで、14時過ぎの釧網本線に乗り込みます。乗車するのは「ルパン三世」のキャラクターがラッピングされた車両。これは作者のモンキー・パンチさんが花咲線沿線の浜中町ご出身という縁で2012年から走っています。

釧路駅で発車を待つ釧網本線網走行

釧網本線はその名のとおり、釧路から網走を結ぶ路線。前半のハイライトは何といっても釧路湿原。野上峠を越えて海沿いの知床斜里を出ると、今度は後半のハイライトであるオホーツク海が車窓に広がります。雨はやみ、曇り空で釧路湿原はあまり色がありませんでしたが、知床斜里を出る頃には雲間から光が差し込み、見事な夕焼けを見ることができました。今やオホーツク海に沿う唯一の鉄道となった釧網本線の北浜付近では夕映えの海をたっぷりと見ることができました。

釧路湿原の中を走ります
夕焼けを運転席脇から撮影
オホーツク海の海岸線を走る北浜駅付近

たっぷり3時間かかって、17時過ぎ、列車は網走に到着。ここからは数分の接続で特急オホーツクに乗り継ぎます。停まっていた車両を見てビックリ。数年前まで特急おおぞらとして札幌と釧路を結ぶエース特急に充当されていたキハ283系がわずか3両の短い編成になって、特急オホーツクに使用されていたのです。何とも寂しい姿ですが、指定席に乗り込んだのは数人のみ。仕方がないのかも知れません。

網走駅に到着。ルパンに撃たれそう
特急オホーツクは寂しい3両編成

17時26分に網走駅を発車。石北本線には、札幌まで行く特急オホーツクと、旭川までしか行かない特急大雪がありますが、この列車はオホーツク。札幌まで行きます(ただし札幌到着は22時51分で5時間半もかかります)が、私は遠軽の手前にある生田原で途中下車。
今日の宿泊地は生田原駅前にあるホテルノースキング。石北本線の有名撮影地常紋峠を撮影しに行くカメラマンの定宿として知られたホテルで、こちらもいずれは泊まりに行きたいと思っていたホテルでした。
夕食付きのプランで、美味しいデミグラスハンバーグを堪能。温泉にもつかり、疲れを癒やしました。

生田原駅で下車
ホテルノースキングに宿泊
美味しいデミグラスハンバーグをいただきました

3日目(札幌観光して帰路へ)

ホテルノースキングは線路沿いにあって、いわゆるトレインビューの宿。翌朝、部屋から撮影した北見方面へと向かう1番列車はキハ40の間にキハ54がサンドイッチされる珍しい編成でした。

部屋から列車を見ることができます

この日は急ぎます。ホテルにご無理をお願いして少し早く朝食をいただき、7時25分発の特急オホーツク2号で札幌へと向かいます。本当は8時半頃に特急大雪旭川行があるのですが、利用客低迷で平日は運休とのことで、この7時台の特急を逃すと昼前まで列車がありません。

生田原駅舎。図書館や文学館と併設
生田原駅に入線してくる特急オホーツク

遠軽でスイッチバックした後は北見峠越え。この辺りは屈指の無人地帯で、途中にあった駅はほとんど廃止され、白滝駅の次は上川駅まで37kmにわたって駅がありません。その上川駅、ホームの上屋が特徴的で、いつ見ても目が行きます。

特徴的な上屋を持つ上川駅

列車は道北の中心都市・旭川を抜け、函館本線を快走して、生田原から約4時間をかけて11時過ぎ、札幌駅に到着しました。

札幌駅に到着した特急オホーツク

少し時間があるので、札幌駅周辺を観光してみることにします。秋晴れの札幌駅は実にきれいでした。

素晴らしい青空になった札幌駅

札幌駅から札幌中心部の大通公園までは歩いても10分ほど。気持ちのよい秋の空気を感じながらお散歩を楽しみました。まだ10月の上旬ですので、大通公園の木は色づき始めといったところ。ここで焼きとうきびを買いまして、大通公園のベンチで食しました。なまら美味いっ!

大通公園(秋空にそびえるテレビ塔)
焼きとうきび(なまら美味いっ!)

焼きとうきびを食べた後は今度は違う通りを歩いて札幌駅方向へ。その途中には時計台があります。周りを高層ビルで囲まれている中にあって孤高の存在感を誇る時計台。はりまや橋、オランダ坂と並ぶ日本三大がっかり名所のひとつと呼ばれることもあるらしいのですが、いやいや、私はその孤高さが大好きです。

札幌時計台が凛として建つ

札幌駅まで戻ってきました。8月末を持って閉店した札幌エスタと札幌駅バスターミナル。北海道新幹線の札幌延伸へ向けて、札幌駅の工事はこれから本格化していきます。

閉店したエスタとJRタワー

札幌駅から、最後の列車となる快速エアポートに乗り込みます。せっかくですから、指定席Uシートで向かいます。新千歳空港までは40分ほど。

最後の列車は快速エアポート

新千歳空港ではお土産を買ったり、展望デッキで飛行機を見たりして時間をつぶします。先ほど大通公園でとうきびを食べてはいますが、ちゃんとしたお昼は食べていないので、海鮮丼をいただきました。いつもの撮影旅行では食にはほとんど頓着しないのですが、今回はエスカロップにラーメンに焼きとうきびに、そして海鮮丼と、北海道の味を満喫しましたね。

新千歳空港で海鮮丼をば

最後はAIR DOで。ちょうと雲間から夕陽が差し込み、北海道と別れを告げました。機内では「ひがし北海道フリーパス」を買うと付いてくる1,000円分のお土産券を使ってAIR DO特性のスープセットをいただきました。

AIR DOが新千歳空港を離陸

むすびに

こうして、2泊3日大満足の旅程を終えました。憧れであった根室のエスカロップを食べられたことにも大満足ですし、本土最東端・納沙布岬に行ったり、車窓から美しい景色を堪能したりと、かなり充実した旅となりました。

JR北海道を取り巻く環境は依然として厳しいです。今回乗車した花咲線や釧網本線、石北本線などは人口が希薄な地帯を走ります。エゾシカなども線路沿いに頻繁に出没しており、動物との接触事故は平均で1日1件以上と聞きます。こうした企画きっぷなどを使って、これからもJR北海道を超微力ながらも支援していきたいと思います。

(掲載写真はすべて筆者撮影。Google Pixel 7aを使用)

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