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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

敗北でこそ煌めくシャニマスアイドルの輝き|GRAD特殊敗北集

※取り扱う内容の性質上、アホみたいに長い解説記事です。薄めのライトノベルだと思って読み始めた方がいいです。

シャニばんは〜。ベンプです。

突然ですが……
君はGRAD特殊敗北を知っているか?


上記画像の赤線の部分がGRAD特殊敗北だ。

GRADにはさまざまなルートがあり、

①予選勝利→本戦勝利の全勝ルート
②予選敗北→敗者復活戦勝利→本戦勝利の逆転優勝ルート
③予選敗北→敗者復活戦敗北の全敗ルート
④ルート問わず、本戦でブロック満足度201%未満での敗北(決勝後コミュ②)
⑤ルート問わず、本戦でブロック満足度201%以上での敗北(決勝後コミュ①)

とおおまかに5パターンがある。
ちなみに、③の全敗ルート後は本戦の日に本戦を観戦しにいくか休むかの2択でもルート分岐がある
分岐選択画面でアイドルをタッチするとここだけの特殊セリフを聞けたりもする。

この中でも⑤のブロック満足度201%以上での敗北を僕は特殊敗北と呼んでいる。
こちらのコミュは回収目的で敗北するためにGRADをプレイしなければほぼ回収できることはない、なかなかシャニマスというゲームの狂気が詰まったルートだと言えよう。
しかもこのゲーム、あろうことかこの敗北コミュを「決勝後コミュ 敗北①」と称していやがる。順序ではこちらが上らしい。狂気か?

ただ、GRAD実装からそろそろ4年も経つ、育成のメインはSTEPへと切り替わり、わざわざ今更GRADのクソめんどくさいコミュ回収をするプロデューサーは、なかなか珍しい、と言えよう。
新しくシャニマスを始めた、GRADのコミュも読んだ!というプロデューサーでもさすがに特殊敗北まで回収するのはシャニマスの才能が高すぎる

だが、GRADの特殊敗北は非常に名作揃いだ。こちらを見ずに、例えば新たにシャニマスを始め、コミュを追っかけていき「GRADは全部読んだな」となるのは、非常に惜しい。


そこでこのnoteでは、
各アイドルのGRADコミュの概要に触れつつ、特殊敗北はどのようなやりとりがあったのか
を紹介していこうと思う。

必然、ネタバレは超全開になるし、GRADを見ていない、あるいは特定のアイドルのみしか……というプロデューサーでネタバレが嫌な人は各自ブラウザバックするか気をつけながらこのnoteを読んでほしい。
もう実装からしばらく経つし、いいよな。あけちまうぞ、あのコミュ。


では……
ありうべからざる今を見ろ』。




櫻木真乃

今までの自分から変わりたい。そう思い櫻木真乃は283プロの門を叩いた。
WINGに出場し、アイドルとしての仕事も増えた。
"変わりたい"、その想いが"変わらなければ"になっていき、空回りしてしまう日々が続いた。

そんな時に一通のファンレターが届いた。桜の便せんのファンレター。いつも真乃に手紙をくれるファンの一人からだった。
そこには「前と変わらない、今までの真乃ちゃんでいてほしい」と書いてあった。

GRAD真乃「とまる歩みに」

"変わらなければ"の想いがファンを心配させていた、その事実に歩みが止まる真乃。
プロデューサーが声をかける。"変わるばかりが成長じゃない"

どうして真乃が変わりたいと思ったのか。
変わることは、『アイドルとして成長するために』必要なのか。
もう一度向き合って見つめ直してもいいんじゃないか、と。


後日、GRADを優勝した真乃はこう言った。

アイドル櫻木真乃に必要なのは『変わること』だけじゃない。
イルミネのみんな、283のみんな、ファンのみんな、何よりプロデューサーがいる。
臆病な自分はまだ自分の中にいる。けれど、そんな自分と向き合い、何ができるのかを考えて「ありがとう」をファンに返したい。

大きな成長を遂げた、自慢のアイドルがそこにいた。

GRAD真乃 「空はつづく」


では…………………

ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

この記事を読み始めた諸兄は順に読んでいれば最初にこの敗北コミュの画像を見ていることだろう。

いいか?この記事はこれがずっと続く。

実際ゲームではボイスもある。画像だけで見ると破壊力は低いかもしれない。
本来はここに泣くのをこらえるような真乃のボイスがしっかりある

ちなみに真乃は通常敗北である敗北②の方があっさり終わる。
つまり特殊敗北では、「ファンに支えられていることに気づいたがゆえに、ここで勝てなくては恩返しになりえない」と感じてしまっている真乃を見ることになる。

真乃通常敗北

ちなみにこれ以降も、敗北コミュはところどころ省いて掲載する。
全容を確認したい人はしっかり回収してきてくれ。

さぁ〜〜………
これアイドル25人分やるんだぞこの記事は
(執筆当時はコメティックにはGRADなし)
俺は覚悟できてるぞ。ついてこれるか?



風野灯織

きらきら輝きたい、誰かを笑顔にできるようになりたい。
風野灯織は、アイドルになる前の風野灯織は、学園祭に来てくれたアイドルを見て、キラキラ輝く彼女たちを見て、そう願った。
その衝動が283プロの門を叩くまでに時間はかからなかった。

アイドルになり、イルミネーションスターズになった。
隣にいてくれる二人、真乃とめぐるの隣に立つ資格のあるようなアイドルになれているのかな。
でも、自分には真乃のような愛される笑顔もめぐるのような元気な笑顔もできない。
自分が目指していたアイドルって、なんだっけ?

アイドルについて、考え込むことが多くなってきた灯織。
プロデューサーは悩みを聞き、他のアイドルのライブに連れ出した。

プロデューサーは灯織にこう告げた。
「今日は、"普通の女の子・風野灯織"としてライブを見てくれないか」

ライブを見て、あの時の気持ちがフラッシュバックする。
自分もキラキラ輝きたい、誰かを笑顔にしたい。
そんなアイドルになりたいと思った、あの日の気持ちが。

GRAD灯織「今、風野灯織になる」
このタイトルメチャクチャ好き

最初の気持ちを思い出し、迷いのなくなった灯織はそのままGRADを優勝する。

後日、プロデューサーは灯織に問いかけた。




GRAD灯織「そしてまた歩き出そう」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

平和でよかった。

灯織GRADでは、GRAD本戦に出ようが出まいが、シナリオ上原点に立ち返り目指したかった輝きがどこにあったかを思い出せている

なので、特殊敗北でも通常敗北でも、落ち込み度に差はあれど、他と比べると苦しいコミュにはなっていない印象だ。

個人的には敗者復活戦敗北のコミュの方がヤバすぎる

GRAD灯織 敗者復活後コミュ 敗北
苦しい



八宮めぐる

友達が事務所に勝手にオーディションに応募し、なし崩し的にアイドルを始めためぐるは、WINGに出場し、注目度があがり、多数の仕事が舞い込んできた。
休みがなくなることを危惧するプロデューサーだが、めぐるはできる限り全部受けたい!と答える。
今はいろんなことができるのが、お仕事をするのが楽しい、と。同様に『GRAD』も楽しみにしている、と。

仕事を順調にこなしていくめぐる、ある日事務所に戻るとそこには眠るプロデューサーの姿が。
ブランケットをかけてあげて気づく。
目の下にクマができている。
自分の仕事が増えたから、今まで以上にプロデューサーに負担をかけているかもしれない。
自分が無理をしているかどうかは、プロデューサーが見てくれる。でもプロデューサーのことは誰が見てくれるんだろう?

そこに、めぐるがアイドルになってやりたいことのヒントがあった。

GRADめぐる 「ぬくもり」

後日、プロデューサーと話す。
あの日、ブランケットをかけてあげた日のこと。プロデューサーが喜んでくれて嬉しかったこと。
アイドルになってやりたいこと

GRADめぐる 「届くところは全部」

今の自分なら、アイドルの自分なら、手の届く場所でなくても誰かに"ブランケット"をかけてあげられる
アイドルになってやりたいことが真の意味で定まった。
友達の応募がきっかけで、楽しいからアイドルをやっていた。
でも、今、八宮めぐるは自分の意志でアイドルに『なった』


勢いそのままに、GRADを優勝しためぐるの元には、たくさんの仕事が舞い込む。
今がすごく楽しい。忙しない日常だが、それを楽しんでいられる余裕がある。
でもたまにはゆっくりしようね。ホットミルクを飲みながら。
そんなことを言いながら、次の仕事場へめぐるを乗せた車が走っていく。

GRADめぐる 「こころはアンダンテで」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

俺めぐるに謝らせたくねえよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

失礼、本音が出てしまいました。

でもめぐるはどの敗北コミュも「届けられたか」を気にして、それほど落ち込まない。
次の機会には必ず!と前を向いてくれる。

通常敗北の方ではやはりファンの数の違いがあったのか、「少なくてもいい、誰かに届いていれば…」という旨の発言がある。

強いなぁ、と本当に思います。
負けている姿、というのは見たくないものですが、一緒に歩むプロデューサーだからこそ見れるアイドルの顔だとも思います。
そういうところも丁寧に描いてくれるシャニマスが僕は好きです。



月岡恋鐘

ぜーんぶ、うちにまかせとって!

彼女はGRAD決勝の舞台の袖で、プロデューサーにそう言った。


恋鐘が283プロに入る、面接の時のメモにはこう記してあった。
笑顔で自信満々、どこか人を惹きつけるような魅力がある』、と。
恋鐘はアンティーカというユニットのリーダーとして、いつでも頼もしく、みんなを引っ張ってくれている存在だ。
ステージの上以外でも「アイドル」であり、そのままでもよかったのかもしれない。

GRADシナリオでは恋鐘の過去に触れながら、さらに大きく羽ばたこうと努力する恋鐘が描かれる。
幾度となく所属オーディションに落ち、アイドルという舞台に立つその遥か手前でプロダクションに所属することすらできない。
本当に、なれるんだろうか。
心が折れそうになった日もあった。

GRAD恋鐘 「もう一歩先へ」

283プロに入ってからは、失敗の連続。
でも、落ち込んでいる暇があれば練習練習。
そうやって、自分を言い聞かせて、止まらないように走ってきたのかも。

GRAD予選では、練習したことを出しきれなかった。
アイドルになったらもっとうまくできるつもりだった。
でも現実はそうじゃない。
頑張ろうとして、ドジをして、そういうところも自分の良さ、と理解はしている。
けれども、本当にそれでいいんだろうか。
みんなが誇れるようなアイドルに、自分はなりたい。
そう、プロデューサーに打ち明けたのだった。

GRAD恋鐘 「みえないルート」

プロデューサーは最初に見出した彼女の魅力を発揮させようと、どこか軌道修正をしようとしていたかもしれない、と恋鐘に話す。
でも、恋鐘のなりたいアイドルになっていいんだよ




舞台から舞台袖へ、GRADを優勝したアイドルがこちらに駆け寄る。
そしてこう言った。
うちをアイドルにしてくれて、ありがとうね。」と。



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北







ああああああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣

このあとの微笑むような表情も本当によくて…………………………………

本当いつも素敵な月岡恋鐘さんを、素敵なステージを見せてくれてありがとうって、思っています。

これを見ることによって、勝利の世界線でも、
「いや、逆だよ恋鐘。アイドルになってくれて、アンティーカの月岡恋鐘になってくれてありがとう
って言いたくなりませんか?

GRAD恋鐘というシナリオがかなり好きで、今だからこそ言えることでもあるんですが、彼女が唯一弱みを見せるシナリオがこのGRAD恋鐘なんですよね。
表に出る恋鐘の笑顔だけじゃなくて、裏で頑張っている恋鐘も見ることができる。
プロデューサーという立場はあまりにも贅沢だ。



田中摩美々

さしたる理由もなかった。
ついていけば面白そうだったから。
名刺をもらった変なお兄さんをからかってみることにした。

283プロの門を叩いた理由は、それだけだった。
気づけば、WINGに出場し、様々な仕事が増え、アイドルとして順調にステップアップしている─────かに、思えた。

山積していく仕事、考えなければならないことは山ほどある。
コーディネート企画の案出し、GRAD出場のためのレッスン、アイドルとして目指したい場所。

………なんでこんなに頑張ってるんだっけ?

GRAD摩美々 「透明色だった、みたいに」

そう思った時、レッスンをサボった。
自販機でメロンソーダを買おうとした。
でも、売り切れだったからコーヒーを買った。
……苦い。


しばらくしてプロデューサーに見つかった。
歩きながらプロデューサーに摩美々は話し始める。
事務所に入った理由。面白そうだったから。
アイドルの仕事を続けて、悪くないかなあと思い始めたこと。
今でもその仕事は面白いままなこと。
でも、仕事が積み重なって、自分は何一つ消化できないままでいること。
それがめんどくさいなあ、と思うこと。
面白いという気持ちとめんどくさいという気持ちを天秤にかけて、答えが出ないこと。

GRAD摩美々 「ザ・グレイテスト・エスケイプ」


プロデューサーもそれに答える。
真剣に向き合ってくれて、手放さないでいてくれてありがとう。
レッスンを無断欠席した件ははづきさんに一緒に謝りに行こう。
自分には摩美々がアイドルの仕事が好きになってくれたように見える。
今考えていることに答えが出ないなら、もっとシンプルでいいんじゃないか。

摩美々はどうしたい?



後日、GRADを勝ち上がった優勝アイドルに、プロデューサーが言う。
アイドルになってくれて、ありがとう」。

悪い子、いや、そのアイドルはクサイですねーと言いながらも、受け取っておきますと、笑った。



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

これこれこれこれ、わかります?????

このコミュ、WING敗北と対称になっているコミュなんですよ。
WING敗北コミュでは、摩美々は頑張らなかったことを悔いている、けれど、GRAD特殊敗北では頑張ったのに結果が出せなかったことを悔しがるんですよ。

WING摩美々 敗退コミュ

真の意味でアイドルになったということが皮肉にも敗北で明かされる形になっていて、敗北コミュの中でもかなりのお気に入りになっています。



白瀬咲耶

モデルの頃の咲耶様に、戻って欲しいです

咲耶にとって見覚えのある封筒、その中のファンレターにはそう書かれていた。
モデルからアイドルへの転身。
言い換えれば、「モデルとしての白瀬咲耶」を切り捨てる行為になる。
そして「モデルとしての白瀬咲耶」が好きだったファンのことも
ファンレターをきっかけに、そんなことに気づいてしまった。

GRAD咲耶 「過去/ 現在→未来」

誰も悲しまない道を歩みたい。
全ての人を喜ばせるにはどうすればいいか。
でも、もう後戻りなどできない。いや、できるはずもない。
アイドルを、アンティーカを、そしてアナタを知ってしまったから

アイドルになってからもらう言葉の種類が増えた。

かっこいい。
綺麗。
可愛い。
素敵。
面白い。

わがままだから、どれかだけ、なんて選べるわけもない、そう白瀬咲耶は言って、微笑んだ。
そして、
だから、私は、そのすべてに応える私でいたい
そんな綺麗事を真剣な顔で言ってのけた。

咲耶GRAD 「かつての私が望んだ先を歩く」


GRAD決勝戦を、他の誰よりかっこいいステージで、勝ち上がったアイドルは、かつてのファンに向けてこう願った。
偶然でも構わない、あの子がまた私を目にし、その時の私が彼女にとって望むものであったなら──
その時は、また──

咲耶GRAD 「ラブレター・ディア」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

これマジでぜひ回収してほしい。
つぶやくような、悔しさを噛み締めるようなボイスがマジでキュウウウウゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜って胸を締め付けるから

あと通常敗北とのセリフの違いにも注目したい。
通常敗北ではブロックの満足度が違う→会場のファンの数に違いがあり、そこがセリフの差として出ることが咲耶のみならず他のアイドルでも多い。

GRAD決勝敗北②(通常敗北)



三峰結華

自己評価の低さが彼女のいいところでもあり、そして悪癖でもあった。
うちの自慢のアイドル、三峰結華はなんでもできる。
その可能性を自ら閉ざしてほしくない、がゆえにプロデューサーは三峰とぶつかることを選ぶ。

結華GRADは三峰自身の自己評価とファンでありプロデューサーであるPの三峰への評価のすり合わせのストーリーだ。
意地悪な手法で三峰は自分を認めざるを得なくなってしまう。
プロデューサーの「大切なもの=三峰結華」をバカにしたくはないから

三峰GRAD 「いつか、私も大事にするから」

この一件でプロデューサーへの信頼はより大きなものとなる。
理想の三峰を、夢をファンに見せ続けたい。
最初のファンには特に。

三峰GRAD 「だって息をするように息が合う」

そんな自慢のアイドルが、GRADを勝ち上がり、優勝した。
三峰さん、俺の自慢のアイドルのステージ、どうでしたか?

イチャイチャすな



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

これは他の敗北ルートを見ないと良さがわからないかもしれない。
敗者復活戦敗北でも、満足度201%未満負けでも、「こんなんじゃまだまだダメだ」という結論に至るのだが、この特殊敗北のみが自分を認めた上でさらに良いものを目指す結論になる。

自己評価って、難しいよね。正確に自分を捉えられる人なんていないのかも。



幽谷霧子

ねずみさんは、パンが食べたくてたまりませんでした
仕事でくたくたになった帰り道、
ふかふか、ほかほかしたパンのことを考えると
幸せが心のすみずみまで満ち、
からだまであったかくなるようでした
でもねずみさんには、
ふかふかのパンを買えるお金がありません
しかたがない、ふかふかのパンのことを考えながら
固いパンと、薄いスープを飲むとしよう……
そう思いながら暮れかけた道を急いでいると、
お腹を空かせて動けなくなっているとりさんに出会いました
とりさんは、食べ物が欲しいと泣いています
冷たくてもいい、固くてもいい
お腹を満たすパンがあれば、飛んでいけるのに……
そこへ、いぬさんが通りかかりました
いぬさんが持っているのは、
ふかふかでほっかほかの、美味しそうなパン……!
ねずみさんもとりさんも、
それを見てごくりと喉を鳴らします
いぬさんはふたりを見て言いました
『パンをあげるよ』
『──でも、あいにくとひとつしかないんだ』
『ふたりのうち、どちらがパンをもらうのに
 ふさわしいんだい?』
それを聞いて、互いの顔を見合わせるねずみさんととりさん
いぬさんは続けます
『それを教えてもらえたら
 よろこんでこれを渡すよ──』

霧子GRAD 「ねずみさんととりさん」

幽谷霧子はGRADに向けた準備をする中、怪我でGRADに出られなくなったアイドルに出会う。

自分は十分に動ける、パンもスープもある。
それなのにふかふかのパンをもらおうとしている
それをもらうべきは───………

ついで、幽谷霧子は成績優秀がゆえに真剣に医学部を目指さないか、と担任に持ちかけられる。
ふかふかのパンをもらうべきは自分ではない。
けれど、お医者さんになれば、とりさんにふかふかのパンを渡せるかもしれない

プロデューサーと話し合い、模試を受けてみることに決めた。
霧子にとって、大事だと思うことをやってみよう。
霧子がどうするべきなのか、わかるまで全部。
たとえ、アイドルの道を進むとしても。
たとえ、医者の道を進むとしても。
たとえ、そうじゃない道を進むとしても。
今やれる全部にぶつかっていくのは、無駄にはならない。

霧子GRAD 「お日さま」


GRAD優勝後、怪我でGRADを欠場したアイドルの顛末を聞く。
最近、手術が終わった。
経過は良好で、簡単な振りなら半年ぐらいでできるようになる。
霧子のGRAD優勝を観客席で見ていた。感動して泣いていたそうだ。
そして、幽谷霧子に負けない、と頑張っている。

アイドルにだってきっと、ふかふかのパンは作れる。
希望と言う名のパンが。
その最初のパンを、霧子が作った。

プロデューサーが続ける。
霧子もパンをもらっちゃダメなんてことはない。
やっぱり、ねずみさんもとりさんもパンをもらう理由があると思う。
迷っていいんだ。
答えが出ないことがあったら、俺でも、ユキノシタさんでも、打ち明けてくれたらいい。
答えが出るまで、付き合うから。

霧子がうなづく。
そして気づく、最初のパンを霧子にくれたのが、誰だったのかを。

霧子GRAD 「ふかふかでほかほかしたもの」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

これは、ぜひ通常敗北と比較してほしい
通常敗北では、負けてしまったことによる気の迷いもあるだろうが、どちらの可能性も疑っている
そうすることで、希望のある負けだったのだ、と言える。
きっと、この世界線でも優勝した世界線と同じように、誰かにパンを与えられていることだろう。

敗北②(通常敗北)



小宮果穂

公開オーディション番組があるんだけど、それに出てみないか?

そう、プロデューサーは果穂に切り出した。
ユニットとしてではなく、個人のオーディション。
力を試す場だと思って、出てみないか。

それに果穂はこう返事した。
あたし、出てみたいです!

果穂GRAD 「自分のチカラ」

応援してもらえるように、PRの場所をふたりで考える。
相談の結果、バラエティ番組に絞って出演をしてみることにした。
たくさんの出演依頼をもらい、全部の依頼に応えることにした。
プロデューサーが一緒なら大丈夫、そう信じてくれる瞳。

果穂GRAD 「ふたりのチカラ」

今日の仕事はトーク番組だ。
果穂に楽屋挨拶を任せてみると、そつなくこなしてくれた。
教えたことがなかったのに……とプロデューサーが言うと、放クラのみんながいつも見せてくれるから覚えました!と教えてくれる果穂。

果穂GRAD 「仲間のチカラ」

そんな日々を過ごしていたある日、果穂がプロデューサーに言った。
放クラのみなさんみたいになりたいです!

聞けば、仕事に必要なことは気づいたらひとりでできるようになっていた。
それは放クラのみんなが見せてくれていたから。
ひとりで仕事する時に困らないように。
離れていても、一緒にお仕事していない時でも、みんなに守ってもらっている
だから、自分もみんなのために何かできるようになりたい。

果穂GRAD 「想いのチカラ」

それにプロデューサーが答える。
俺はもう果穂がみんなのためにできていることがあると思うよ。
放クラのみんなには果穂相手だから見せる顔がある。
それがユニットの魅力に繋がっている。
でも今すぐできることがあるなら………
放クラのみんなに言葉で伝えよう。
もっともっと放クラを大切にしよう。
みんなのことを今よりもっと考えてみよう。

大切に想う心は果穂の力になるから。



GRADを優勝し、どうだった?とプロデューサーが聞く。
ほめてもらったことは、全部全部、放クラのみなさんが教えてくれたことだった、と果穂は言う。

これからもいろんなことをみなさんに教わると思う。
でも自分にできることもたくさんあるってわかった。
だから、自分にできることで、放クラのみなさんのために、これからもがんばる、と夕暮れの事務所で元気いっぱいに言ってみせた。

果穂GRAD 「君は力を秘めしもの」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

なかないで
あやまらないで
元気出して
よかった

これ俺が全身シャニマス人間じゃなきゃ心がバラバラになってるぞ
小宮果穂が泣いているのマジで無条件で見たくね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
まぁでも、特殊敗北や通常敗北はまだマシなんですよね。
クッソ最悪なのが敗者復活戦敗北でして。


ここのボイスマジでゲロ吐きそうなくらい辛い
敗者復活後コミュ 敗北

マジで最悪になりたい人は、敗者復活戦敗北を回収してみてください。
涙声の小宮果穂で、すさまじく後悔する羽目になるので



園田智代子

おまじないは持った?
武器は選んだ?
それができたら大丈夫。
心配なことも、怯んじゃうことも
たくさんあるかもしれないけど、
それ以上の奇跡が、
絶対に支えてくれます。
自信を持って名乗ってください。
放課後クライマックスガールズの
チョコアイドルだ、って!
そして一生懸命進んでください。
私の夢に近づけるように。

4thライブ day1 過去への手紙・園田智代子

GRADへの出場を決めた智代子は、PR活動に勤しむ。
SNSへの投稿、さまざまな媒体への出演。
テレビ、ラジオ、ライブに、雑誌まで。

とある撮影の収録後、スタッフとの雑談の中で問いかけられた。
いつまでチョコだけでがんばるつもりなの?

智代子GRAD 「しなやかに したたかに」

GRADのための自主練に励む智代子にプロデューサーが休憩を持ちかける。
そこで園田智代子は胸に秘めた想いを伝える。
チョコアイドルを使い捨てたくない、と。
自分には個性がない。だから使えそうな要素を後付けした。
最初からチョコが大好きで、特別で………そういう人間ではなかった。
けれど、名前を覚えてもらうためのつなぎとして手に取った武器じゃない。
アイドルでいる限り、ずっと一緒に戦う武器として、"チョコアイドル"という武器を選んだ。

智代子GRAD 「マイ スイート♡ウェポン」

でもこの間のスタッフとの雑談のように、どれだけ本気でも伝わり切っていないことはままある。
だからGRADでは、今まで以上に伝えたいことを意識して、見てくれる人の笑顔は損なわないで、ステージを届けたい。


後日、ファンのみんなへの配信で、GRADへの想いを語った。
そして、公約(やくそく)をした。
応援してくれるみんなに。支えて、何度だって立ち上がらせてくれるみんなに、アイドルとして。

智代子GRAD 「公約(やくそく)」


とあるライブ会場。
GRADを優勝した、その普通で特別な女の子は、ファンの自分を呼ぶ声、プロデューサーのいってこいに押されてステージに飛び出した。
そして、こう言った。

放課後クライマックスガールズ
チョコアイドルの園田智代子です!

智代子GRAD 「きらめくここが私のステージ」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

マジですごすぎる、園田智代子。
俺はこんなにすぐ切り替えられないよ。アイドルすぎる
敗者復活敗北なんかもなかなかすごくて、ぜひ回収してほしい。
泣いてる場合じゃなーーーーいっ!は本当に名言だから。

智代子GRAD 敗者復活戦 敗北

シナリオ内でも明言されますが、本当にブレなくなったんですよね、園田智代子は。
WING→GRADという進歩が目にみえるシナリオ運びは、本当にこのゲームを、彼女たちを追いかけるファンとして嬉しい限りです。



西城樹里

GRADへの準備の中、トレーナーより指摘が入る。
しっかり動けてはいるが、表情が固まっている。
『アイドル』だからどんなに完璧に踊っていても、表情も含めて『魅力』がないとダメ。
その言葉に樹里は悩まされる。
自分の魅力』とは何なのか?
悩んでいる樹里にプロデューサーが言う。
それならラジオで募集してみるのはどうだ?


樹里のラジオにたくさんのお便りが届く。
どれもこれも、ファンからの樹里の魅力について。

運動神経がよくて、ダンスが上手い。
放クラの常識人、貴重なツッコミ。
一見ヤンキー、でも優しくて思いやりがあるギャップ。

読みきれないほどの声がたくさんあった。
そしてラジオの終盤では「生電話」のコーナーになり、とあるファンへ電話が繋がる。
そのファンからはこう伝えられた。

『身体に気をつけて、怪我しないようにして、美味しいものをたくさん食べて、たくさん眠って
いつも楽しく元気で幸せに笑っていてね
それだけで、私たちはすごくすごく幸せだからね』

樹里GRAD 「元気をくれてありがとう」

そのメッセージに樹里は思う。
もらってばっかりで、全然返せてないんじゃないか。
どう、応えればいいんだろう。


ひとつひとつのファンレターを、ファイリングしながら内容に目を通す。

『いつも応援しています』
『怪我しないようにね』
『風邪引かないように気をつけてね』
『いつも元気で笑っていてね』

みんな決まってこう書いてくれる。
そんなに心配させているのかな、と樹里はプロデューサーに話しかける。

そうじゃないよ
とプロデューサーが答える。
みんな樹里のことが大切だから、そう書いてくれるんだ

樹里は何かを返さなきゃって思うかもしれないけど、もうファンはもらってるんだよ
だから何かを返したいと思って、言葉や手紙で伝えてくれる。
だからたぶん、もう樹里から届いているんだよ。

だから───

いつも、元気でいてくれ
迷ったり、悩んだりした時、一人でいなくてもいいんだよ。

アイドル、楽しんでくれ
アイドルっていう樹里が選んだ道が、少しでも楽しいものだったら嬉しい。

もっと自信を持ってくれ
樹里はちゃんとアイドルだよ。
自分のやってることを信じるのが難しいなら、ファンを信じてみればいい。

それに樹里は「でも」と答える。
やっぱこれからも、何か、きっと返したいと思う。
応援してもらうことを当たり前だと思いたくないし、思えないから。
だから、まずは『GRAD』で優勝したい
それで、サイッコーに笑いたい

樹里GRAD 「幸せでありますように」


ラジオの最終回、胸を張って伝えた。
アタシ、西城樹里は、『GRAD』で優勝しました。
アイドル、やっててよかった。

樹里GRAD 「_____より」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

無念すぎる。俺が全身シャニマス人間じゃなければ今無念をかかえて死んでいったオタクの怨霊になるところだった。
無理して気丈に振る舞う樹里をみるの辛すぎる

このGRAD樹里っていうシナリオはマジで、樹里を応援したくなる理由の言語化として最強のシナリオだと思っていて、初めて読んだ時は本当にびっくりした思い出がある。
笑顔で元気に幸せに、アイドルを続けていってほしい。
応援したくなるアイドルだと彼女を認識していたから。



杜野凛世

『あ』だけが残された人間の少女αと、
『あ』だけが与えられないAIの少女β。
GRADの選考と並行して、その二役を演じるネットドラマの主演となった凛世。
このシナリオは、そのストーリーを紐解くのと、同時進行で凛世の苦悩も描かれる。

といって、このあと1000文字くらい実際に今までのように物語調で省略した概要を記していたんだけど………
凛世GRADだけは、なしにします
自分の能力の限界を感じる

このストーリーを綺麗にまとめるのはかなり無謀で、ネットドラマと実際のストーリーが絡み合って、最後の結論もネットドラマの結末がわかることによって、カチッとハマる、そんな構成になっている。
概要を書ききって、気持ち悪い文章になってしまったというか、説明できる範囲を超え出したというか、ともかくそんな感じになっちゃった。

GRADシナリオでも指折りの名作になっているので、是非とも読んでくださいな。

でしたら、特殊敗北を見ましょうか。

ちなみに、当然なんですけどもしGRAD凛世を未読の方がいたら、絶対に特殊敗北について見ない方がいい

初見時の感動が薄れると思う。




特殊敗北

なあ、凛世Pでこれ回収していない人いたら、本当に損してるぞ
こんなに雄弁な『あ』を俺は聞いたことがなかった。
凛世GRAD本編では悲しげな『あ』を多く聞いたが、こんなに嬉しそうで楽しそうな『あ』を回収しないのはおかしいよ、理にかなっていない。

欲しがって欲しがって、やっと声が出る。『あ』でさえも。やっと。
耳を傾けられるプロデューサーでいたいよ、俺も。



有栖川夏葉

夏葉GRAD 「なれるわ」

有栖川夏葉のGRADは、大胆な優勝宣言から始まった。
ソロだろうと、ユニットだろうと、トップを目指すことには変わりない。
目標を口にして、そこに向かって一生懸命に努力することは、恥ずかしいことでも、カッコ悪いことでもない。
そう、夏葉はプロデューサーに言った。


GRADに向けた練習の風景が撮影され、SNSへ投稿された。
一生懸命にレッスンをする姿。一生懸命だからこそ……必死で、辛そうにみえる
その違和感に夏葉も気づく。
放クラとレッスンしている時は楽しそうなのに、どうして。

夏葉GRAD 「今日、これから」

夏葉にとって、入りすぎな肩の力を抜いてくれるのが、『放課後クライマックスガールズ』なのかもしれない、とプロデューサーが指摘する。
ユニットを離れている今だからこそ、気づけることもある。
ひとりのステージは、驚くほど広くて、寂しい。
でも変わらないものが一つだけある。
トップを目指すこと
いい報告をしなければ。


一人でレッスンをする中、思い返す。
このレッスン室で初めてプロデューサーと出会ったこと。
目指すならトップだけ、と宣言したこと。
アナタは何も考えなくていい、全部私に任せておきなさい、と言ったこと。
放課後クライマックスガールズというユニットに入ることになっている、と言われたこと。
ソロだろうとユニットだろうと関係ない、と言ったこと。

どうしてあんなことを言ったんだろう。
きっと、あの時はそれが正しいと思っていた。

そんなことを思い返していたら、プロデューサーがレッスン室に様子を見に来た。夏葉は過去の非礼を詫びた。

いつも正しくあろうとするところが自分の長所、とプロデューサーは言ってくれた。
でも過去そうであったように、自分も間違える。
今の私はちゃんと合っているか。

夏葉GRAD 「変わりない」

あっているよ、とプロデューサーが答える。
正しくあろうとする、というのは間違えないということではなく、
間違いを認めて正しいと思う方へ進める
、ということ。
夏葉の姿勢は羨ましいくらい、いつも正しい。


ソロだろうと、ユニットだろうと、トップを目指すことには変わりない。
昔は、他のメンバーは関係なく、全員を引っ張ってトップになればいいと思っていた。
でも今は違う。
みんなと一緒に『放課後クライマックスガールズ』としてトップを目指したい
『GRAD』で優勝して、トップに立ちたい

だからやっぱり────。
『ソロだろうとユニットだろうと、
私がトップを目指すことには変わりない。』


後日、GRAD優勝アイドルから、レッスン室に呼び出された。
そこにいるアイドルに、こう宣言された。

「いい?目指すならトップだけよ!」

いつかも聞いたような言葉だ。
そして、お願いがあるの、とそのアイドルはこう言い直した。

「私とトップアイドルを目指してちょうだい!」


夏葉GRAD 「なれるの」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

ちょっとちょっと、カッコ良すぎる。ほんまにカッコ良すぎる。
マジでいつか絶対トップになるに決まってるだろ、こんなん、って初めて見た時は思った。
というか、別に特殊敗北だけじゃなくてその他の敗北コミュでもまったくブレないんですよ
夏葉さんは持っている哲学がブレなくて、正しくて、知れば知るほど好きになっていく女性だと、出会ってもう直ぐ6年という今でも感じています。



大崎甘奈

『GRAD』は個人戦。
アルストロメリアじゃない甘奈』。
その言葉に思いの外心臓の鼓動は跳ね上がった。
ずっと、アルストロメリアでいたい。
自分にしかできないことは、なんだろう。
きっと甜花ちゃんや、千雪さんはすぐに見つけちゃう。
……この悩みを、この気持ちを知られたくない。
だって、甘奈だけがずっと同じところで止まっている

甘奈GRAD 「care,care,care」


GRAD予選でのつぶやきが、プロデューサーの耳には届いていた。
甘奈ひとりで、どうしたらいいの?

甘奈GRAD 「突き放して(甘やかして)」

夜の事務所で、甘奈に話をするプロデューサー。
悩んでいること、話してくれないか。
俺を、助けると思って。

ぽつりぽつりと話を始める甘奈。
一人で仕事をする覚悟もないのに、できるふりをしている。
嘘をつきながら、アイドルをしている。
自分ではじめたはずなのに、どんどん辛くなっている。
ずっと無責任で、ずるい。

それにプロデューサーが答える。
そうやって、甘奈は頑張ってたんだな

プロデューサーは続ける。
ちゃんとしなくてもいい。
甘奈が思う『ちゃんとしていない甘奈』も、きっとたくさんの人に受け入れられる。
筆頭は、ここにいるよ、と。

それに甘奈が応えた。


ファッションショーの舞台袖で甘奈はプロデューサーに思いを告げる。
『死ぬ気』で頑張ることが今まで怖かったと。
頑張った先で、失敗したら、何もできなかったら。
それが今まで怖かった、と。
でも今は最後まで付き合ってくれるプロデューサーがいる。
自分が『アルストロメリアでい続ける』ためには、どんどん進んでいく甜花ちゃんと千雪さんに負けないアイドルでいなければならない。
───だから、もうひとりで頑張るのは怖くない

甘奈GRAD 「うそなき天使」


GRADの決勝の舞台では、今まで見たことのないアイドルがいた。
『アルストロメリアだけど、アルストロメリアじゃない』大崎甘奈というアイドル。
新たな魅力を見せたその女の子が、栄冠に輝くのは、誰から見ても明らかだった。



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

通常敗北と比較すると、違いがわかりやすい。
甘奈の特殊敗北は、「しっかり届けられた」ことと、「悔しいけど楽しかった」ことに違いがある。

GRAD決勝戦 敗北②

GRAD本戦前に、答えを見つけて一歩踏み出せている甘奈だからこそ、そこまで負けても落ち込まないシナリオになっている。
それは通常敗北でも、敗者復活戦敗北でも変わらない。
一人の女性の大きな成長を感じれるシナリオだったことが、敗北コミュを見ることでさらに浮き彫りになる



大崎甜花

GRADへの挑戦を決めた甜花。
そんな甜花にもう一つ、オファーが舞い込む。
アイドルフェスへの参加のオファー。
合同レッスンなどの結果に応じて、フェス当日のポジションなどが決まる、そういった内容も楽しむ企画だ。
甜花は、これにも参加を決める。
だって、一人じゃないから。プロデューサーと一緒にいれば、きっと大丈夫。

甜花GRAD 「I do」

アイドルフェスへ向けたレッスンの初日。
ハードな内容に甜花は参ってしまう。
でもプロデューサーがついてくれている。
甘奈も、千雪も、はづきさんも、事務所のみんなも、自分をサポートしてくれる。
きっと、大丈夫。大丈夫にしてくれる────

甜花GRAD 「Idle」

アイドルフェスへの合同レッスンは、日に日に激しさを増していった。
他のアイドルに比べ、どんどん遅れていってしまう甜花。
自分一人の力じゃ、どうしてもできない。
でも、プロデューサーが自分にはついている。
だからきっと大丈夫。今回もプロデューサーが大丈夫にしてくれる。
そんな気持ちで、プロデューサーに助けを求めた。
プロデューサーからの回答は、残酷だった

甜花GRAD 「Ideally」


他のアイドルとのダンスの練度で足並みが揃わない。
このままではフェス自体の進行に関わる。
甜花との話し合いが事務所で行われる。
ゆっくりでいいから、何を考えているのか、何に悩んでいるのか、聞かせて欲しいとプロデューサーは甜花に問いかけた。

自分は、何もできないこと。
何もできないけど、甘奈にアイドルに誘われ、アイドルになったこと。
やっぱり何もできないけど、色々な人の助けがあり、アイドルをやれていること。
プロデューサー、甘奈、千雪、事務所のみんな、はづきさん、社長、トレーナーさん、カメラマンさん、スタッフさん、様々な人の助けがあり、自分はアイドルでいられる。
でも、今は自分一人。
甜花一人では、何もできない。
みんなにも迷惑をかけている。
どうにかしなきゃって思うけど、どうすればいいのかすら、わからない。


プロデューサーが口を開く。
どうしたらいいかわからないなら────
───甜花は、何がしたい?

プロデューサーは続けた。
自分が信じられないなら、甜花を信じる俺を信じてくれ。
甜花は何がしたい?何がやりたい?
甜花がやりたいことを全力でサポートする。そのために自分がいる。
もしも本当に逃げたいって思うなら、ちゃんと逃げられるように、サポートする。
それを甜花が本当に望んでいるなら

心から望んでいること
静寂ののちに、重くるしい雰囲気を打破するように、アイドル・大崎甜花は口を開いた。






甜花GRAD 「Id」



後ろから二列目の、一番左端。
そこがアイドルフェス当日の甜花の位置だった。
モニターに抜かれることも、ソロも、センターもない。
もしかしたら、いなくても誰も気づかなかったかもしれない。
でも、それでも、諦めない彼女が勝ち取った、彼女だけの場所だった。

甜花GRAD 「Ideal」


勢いそのままに、彼女はGRADを優勝した。
でも、それは一人の力じゃない。
みんながいるから、優勝したいって思えた。
みんなの力が掴み取った、優勝だった。

甜花GRAD 決勝後コミュ 勝利



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

この甜花GRADというシナリオが僕は本当に好きで、だからこそ敗北コミュも非常に好きです。
なによりも彼女は、応援してくれる人のために諦めない、すごく芯の強い女性なんですよね。
はっきり言って才能があるわけでもない、努力しても人よりも劣ってしまう。そんな彼女が諦めずに何かを成し遂げる、その姿に勇気を貰う人間はたくさんいます
このGRADからLPへの接続もコミュの流れとして大好きで、誰かから応援してもらった自分が今度は誰かを応援する番、という幸せスパイラルが発生するところが、本当に彼女の大きな魅力なのだと、思います。



桑山千雪

1円。
それが『C.K』という人物が出した巾着袋につけられた値段だった。


桑山千雪はGRADへの出場を決定し、同時並行でラジオのチャリティ企画として制作した小物をオークションにかけていた。
値段は瞬く間に釣り上がり、通常同じような小物に支払う額とはかけ離れた値段になっていた。

千雪GRAD 「千雪って人が」

一方で、個人的に制作した巾着袋をオークションサイトに『C.K』という名前で素敵な説明文と共に出品した。
「アイドルの桑山千雪」としてではなく、「ただの桑山千雪」として。
小物がずっと好きだったのは、「ただの桑山千雪」だから。

千雪GRAD 「月へ出かけたキャラバンの鈴」

GRADの予選を終えた千雪は、自分が出品した巾着袋の値段がどこまで上がったのか、確認する。

1円。
閲覧者数、28。

番組で出した小物はそれと対照的に、非常に高額な値段がつけられている。
1円のこの巾着袋だって、桑山千雪が作ったものだ。
「値段が重要なんじゃない」と自分で自分に言い聞かせる。
でも、心は平穏を保っていられなかった。
「ただの桑山千雪」の価値は、1円なのか。

千雪GRAD 「意地があるの」


ある日、事務所に訪れた千雪にプロデューサーが話しかける。
俺に手芸を教えてくれないか?


ハサミで切るだけ。
それだけで、「フェルトのアイマスク」が出来上がった。
手芸を教えて欲しい、という要望に楽しく簡単に作り上げられるものを考えて持ってきてくれた。
どうせ作るなら楽しい方がいい、と千雪は言った。

雑貨や手芸、そしてアイドル活動。
全部を諦めない道を行くとかつて彼女は言った。
だけど、今はアイドルの活動で大半を占めてしまっている。
でも、こうやって一緒に手芸をしてくれて、楽しく笑顔にさせてくれる、「ただの千雪」をなくしたくない、そうプロデューサーが言う。

それに桑山千雪も答える。
自分も大事にしたい。アイドルではない「ただの千雪」を。
でも、それだと、1円の価値になる。
オークションに出した、「C.K」が作った巾着袋。
1円の価値にしかならなかった、「ただの桑山千雪」の小物。

千雪GRAD 「1円ベイビー」

プロデューサーは立ち上がって、窓を開けながら、千雪にこう言った。

このアイマスクに、名前を縫うことはできるかな。
これができあがって嬉しかったこと。
何かを作ること、それで誰かを笑顔にできること、それがすごく素敵なこと。
このアイマスクを作ったこと、それで一緒に笑えたことを讃えたい。
だから、このアイマスクに名前を入れたい。
そして、一緒に千雪の名前も入れて欲しい。
一緒にこのアイマスクを作った、「ただの千雪」の価値を誇って欲しいから。
「ただの千雪」の価値を、他でもない千雪自身が認めなきゃ。

「ただの千雪」は微笑んで言った。
刺繍は……針と糸を使うんですよ?
ちょっと難しいんですから、と。



GRADの本戦が終わった後、事務所にはミシンの音が響いていた。
プロデューサーと一緒に雑巾を作る千雪。
雑巾が出来上がったら、名前を縫おう。
「アイドルの桑山千雪」も、「ただの桑山千雪」も一緒に。
「C.K」というイニシャルを縫おう。
どの道も諦めない名前を。



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

幕引きがおしゃれ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

GRAD千雪はエピローグまるまる、勝っても負けてても成立するんですよね。なかなかない構造になっています。
負けても、そこまでで「ただの千雪」の価値を認められるようになっている。だからこその幕引きのおしゃれさ(?)が特殊敗北にも出ているのかなと思います。
ちなみに、通常敗北ではずっと悔しい悔しい、と言っています。
満足感に違いがあっていいんですよね。

GRAD決勝後コミュ 敗北②



芹沢あさひ

えっ……!で、弟子入りする……!?

そんな声が283プロダクションに響いた。
GRADへの参戦を控えたあさひが、そば屋に弟子入りするというのだ。
そば屋の出前のすごさを語るあさひ。
そんなあさひをプロデューサーは頭ごなしに否定してしまう。

あさひGRAD 「出前っす」

後日、プロデューサーは時間をとってあさひと話し合う。
出前の件はお店に直接行って話を聞いてきたこと。ひとまず、危険なことじゃなくてよかった。
いろんなことをやってみるのはいいことだけど、今あさひにとって何が大事かを考えて欲しい。
GRADの予選が近い。予選のことを大事に思っているなら、集中しなきゃ。
GRADは甘くない。しっかり練習しないと───

そこにあさひの言葉が飛ぶ。

それはプロデューサーさんのやりたいことじゃないんすか?

あさひGRAD 「……」

事務所を出て走り去ってしまうあさひ。
一人になった事務所でプロデューサーはつぶやいた。
俺が、間違ってるのか……?


確かに、あさひのパフォーマンスは頭ひとつ、抜けている。
でも、そこにはファンへ届けたい気持ちがない。
ファンは、すごいパフォーマンスを見にきたわけではない。あさひを見にきている
どうすることがあさひのためになるのか。

GRAD予選後、プロデューサーはあさひにこう切り出した。
「俺もさ、出前の修行に混ぜてもらえないかな。」

あさひGRAD 予選後コミュ 敗北


GRADへのレッスン、そば屋の出前、どちらもできる限り付き合う中で、
ある日そば屋へ行くと、大将が手を火傷してしまい、岡持ちを持つことが難しくなってしまったと言う。
出前を頼んだお客さんへは、事情を話してキャンセルにしてもらうしかない、と言う大将と、自分が岡持ちを持って配達に行くというあさひ。
大将はまだちょっと任せられない、と返答する。

そこにプロデューサーが、あさひに言う。
ただ、届けるってだけじゃダメなんだ

その姿を見て、大将はプロデューサーに岡持ちを持ってもらうことを決める。
そばのことはわからない、でも、何を届けなくちゃいけないのかはわかる。


老夫婦の元へ熱々のそばが届けられる。
そばだけじゃなく、心も。
作った人、食べる人のことを考えるプロデューサーによって。

そばを届けられた老婦人はこう言った。
ありがとう。大将じゃなくても、気持ちのいいおそばを届けてくれるのね。

老婦人とプロデューサーのやりとりを見たあさひは、こう言った。

毎度、ありがとうございます」と───

あさひGRAD 「競争っす」


それからあさひは、どんな練習のあとでも必ず先生にありがとうございますを言うようになった。

GRAD決勝前のステージ袖で、あさひにプロデューサーが言う。
出前と同じだよ。届ける準備、できてるか───?

あさひGRAD 決勝前コミュ



GRADから日にちも経ったある日、事務所のプロデューサーにそばが届けられた。
他でもない、そのGRADを優勝したアイドルによって。

聞けば、卒業試験だそうだ。
GRADを優勝して忙しくなること。
だからちゃんと卒業できるように、岡持ちを持ち、ちゃんと届けられるか試験をしている。
プロデューサーの前に、熱々の月見そばが置かれた。
そばを啜る。
───美味しい。
ありがとう、美味しいよ、とあさひに言う。
やったっす、出前に戻るっす!とあさひ。
そして─────

あさひGRAD 「毎度ありがとうございます」


事務所を足早に出ていき、出前に戻っていくあさひ。

毎度ありがとうございます』。
もう一度そばをすする。
ああ、美味しい
そしてなにより、嬉しい



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

ただ、届けるだけじゃダメ、ということと「毎度ありがとうございます」の真の意味が言葉ではなく心でわかりかけているからこその、敗北コミュになっているんですよね。
これ、最悪なパターンを今から見てもらおうと思うんですが、敗者復活戦で敗北するとかなり気分の悪い終わりを迎えます。


あさひGRAD 敗者復活後コミュ 敗北

………………え?………終わり?これで?……………………………………え??????????????????????

というのが初見時の感想です。
「毎度ありがとうございます」の真の意味がわからずにGRAD編が幕を下すんですよね。
敗者復活で負けると、そこで本戦を見にいくか休むかを選べるんですが、本戦を見にいくとやっぱりかなり気分悪いコミュを見れます。
ぜひ、回収して自分の目で確かめてみてください。



黛冬優子

GRADの選考を控えた冬優子に密着取材の依頼が入った。
即答で受けると答える冬優子、懸念を示すプロデューサー。
密着取材ともなると、一瞬たりとも気は抜けない。
それが冬優子の負担になりはしないか
お気遣いどーも、と冬優子。
GRADという大きなオーディションを控え、このチャンスを逃すわけがない。
もちろん取材が善意だけできているなんて微塵も思わない。
清純アイドルの裏の顔を暴こうと思ってきている可能性もある。
その上で受ける、と言っている。
誰かの予想を裏切るの、大好きなの
そう意地悪く笑った。

冬優子GRAD 「その勝負、退きません」

GRADについてどう思われますか?
強力なライバルと競うことについて恐怖は?
GRADへの自信はありますか?

取材スタッフからの容赦のない質問攻めを完璧な受け答えで捌く。

GRADの予選にもカメラは入り込む。
しかし、変わらない『ふゆ』を見せ続ける冬優子。

完全に杞憂だった
全ての取材日程で、完璧なアイドルを見せ続けていた。

GRAD選考を間近に控えたある日、プロデューサーは冬優子を夜景スポットに連れ出した。
激励とお詫びだ、疑ってすまなかった、とプロデューサーは頭を下げた。

信じられなかったのなら信じるに足る自分を見せられていなかった、と冬優子も答える。
あんたが思っているよりも長くふゆは『ふゆ』をやっている、思っているより大変な作業じゃない。
もう、自分にとってはどちらのふゆも本物だから
自分が、ふゆのまま愛されないのは悲しいけど。
ふゆが作った『ふゆ』が、たくさんの人に受け入れられるのは気持ちいい。

冬優子GRAD 「ひとりじゃなくてふたり」
このコミュ名、ダブルミーニングなのマジで好き

まぁ、次の選考、見ておきなさいよ。
二度とふゆのことを見誤らないようにしてあげるから




『可愛いだけじゃなくてアイドルに真面目なんだな』
『俺たちのふゆは大天使』
『マジで健気。応援したい』
『黛のファンになった』

後部座席で密着取材の感想を見てほくそ笑む、GRAD優勝アイドルがそこにいた。
まーったくみんなチョロいったら!と高笑いする彼女。

言い方を気をつけろよ、と言うプロデューサーに対して、カメラもないのにいい子ちゃんぶって、と冬優子。

これは大勢を騙くらかした、自分の力の証明なのだ、と胸を張る。

だからその力を証明し続け、大きな仕事を一緒にやっていく義務がある。
こんな自分、プロデューサーやあさひや愛依に見せる自分は、他の誰にも悟らせない
だから、綺麗に言う必要はない。
自分はファンを『騙して』いる。

だからあんたはせいぜいレアなふゆを見れる幸運を噛みしめておけば?

悪戯な微笑みを浮かべた詐欺師を乗せて、車は次の仕事へと走った。

冬優子GRAD 「詐欺師ですから」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

これ、マジで伝わりにくいんですけど考えれば考えるほどヤバいんですよね、このコミュ。
GRAD決勝で負けて、激情家の側面もある冬優子は、内心はらわた煮え繰り返ってないとおかしいと思いませんか?

でもいきなり取材が入っている部分から入る。
プロデューサーに普段見せる冬優子の姿はそこには微塵もなく、『ふゆ』だけがそこにある
本物のアイドル、間違いなくそう言い切れると思います。

ちなみに通常敗北は普通に素の冬優子が見れるが、それでもすぐにアイドルの顔になる。
マジでプロすぎる。

冬優子GRAD 決勝後コミュ 敗北② 冒頭



和泉愛依

GRAD出場を決めた愛依。
プロデューサーとの電話の中で、なんとなくその言葉が口から出てしまう。
アイドルになってから、ずっと競争してる』───。

愛依GRAD 「うち、なんで」

GRADの出場を決定してから、ツイスタ(SNS)の更新を増やした。
事務所で自撮りを撮っていると、プロデューサーから「愛依のSNSをフォローしてくれる人も増えたんじゃないか」と声をかけられる。
きっと、愛依のプロモーションがうまくなって、どんどんアピールできるようになっているからだ、と。

愛依はそれに、「きっと冬優子ちゃんに教えてもらったおかげ」と言う。
この前、あさひが撮ってくれた写真もかっこよく撮れていた
やっぱり、二人はすごい


学校での一幕、愛依は友人のさなぴーと出会う。
愛依のツイスタを見た。GRADに出るらしいね。
やっぱり愛依、無理してるように見える。
クールなアイドルとして振る舞う愛依より、自分たちと一緒にいる自然体の愛依の方がいい笑顔をしている。
オーディションで順位をつけられるのは嫌じゃないのか?
順位が上だったら嬉しい?
───じゃあ、下だったら?

愛依GRAD 「ふたりは」


レッスン後、愛依を自宅まで送る車内、プロデューサーは愛依に問いかける。
愛依は、何で悩んでる?
少し前から、よく何かを考えているように見える。

愛依は自分の行動を思い返しながら自分でもよくわかってないけど…と話し始める。
GRADには参加できてよかった。頑張らなきゃって、思ってる。
ただ、一人だとどうしようと迷う時も───


そっか。
いつも冬優子ちゃんとあさひちゃんがいたから
二人といれば、なんだか大丈夫だと思っていたみたい。

愛依GRAD 「大丈夫って、思ってた」

GRAD予選でもふたりがいないことがこんなに不安だと思っていなかった。
一人のステージ。
あまりに広く、寂しい。
でも、ひとりでも勝たなきゃ───

愛依GRAD 「予選前コミュ」

予選後、レッスン室で一人練習に打ち込む愛依。
見にきたプロデューサーに繰り返す。
一人でも、勝たないと。
冬優子ちゃん、あさひちゃんはすごい。
一人で色々やって、改めてそう思った。

愛依だって、すごいよ
プロデューサーが言う。

アイドルになってから競争してばかり、前に言っていた。
確かにこういうオーディションや、順位がつくようなアイドル選挙がいい側面ばかりだとは言わない。
だけど、証明にはなるかもしれない。
愛依はすごいんだ』って、愛依が自信を持って言うための。

『GRAD』でトップのアイドル。
そんな肩書きなんてなくっても、俺も、周りのみんなも、ファンのみんなも、愛依がすごいアイドルだって知ってる
だから、GRADで優勝してほしい。

愛依が胸を張って自分を誇れるように。

愛依もそれに応える。
どこかで、冬優子ちゃんとあさひちゃんがいないのになんのために勝つんだろうって考えてた。
GRADで優勝したい
うちと、プロデューサーと、周りのみんなと、ファンのみんなのために。

愛依GRAD 「ひとりでも」


GRADの選考が間近になり、事務所で愛依は自撮りをしながら表情の研究をしていた。
そんな中、にこっと笑っていた写真がプロデューサーの目に止まる。
でもそれじゃ『ミステリアスキャラ』にならない、と愛依。

プロデューサーが愛依に言う。
キャラを守って大切にしてくれているのはわかる。
でも無理して笑うのを我慢してくれなくていい。
そしてなにより─────
ギャップは間違いなく、ウケる!!

真剣な顔して何言うのかと思ったら……と愛依は笑う。
じゃあさ。
GRADで優勝したら、プロデューサーが撮ってよ
優勝したうちが、笑ってる写真!

愛依GRAD 「じゃあさ」




カシャリ、とシャッターが切られる。
うん、よく撮れてる。
いい笑顔の、いい写真だ。

その笑顔の主に告げる。
『GRAD』、優勝だ。
愛依はすごいよ、本当に。
それを証明してくれてありがとう。

愛依もそれに応じる。
写真載せて、報告しなきゃ。
───GRADで優勝しました、って!

決勝後コミュ 勝利



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

愛依GRADは、もしかしたらGRADシナリオ内でも最も勝つことに大きな意義のあるシナリオかもしれません。
勝つことこそが彼女のアイドルとしての証明になる
それは、優勝を宣言し努力する様を通じてその姿勢の美しさ正しさを示したかった夏葉でも、密着取材を利用し優勝することで注目度を最大にしたかった冬優子でも、そこまではGRADに賭けていなかった。

そのため、彼女は通常敗北だろうが特殊敗北だろうがコミュに大きな違いがなく、自身の価値を勝利で証明はできなかったが、それでもすごいアイドルだと自分を誇ってほしい、という結びで終わります。

ただここでどうしても我儘なんですが、とあるコミュを見てほしい。
みんな、【メイ・ビー】>GRAD愛依>LP愛依>【あたし・マスト】の順でコミュを見てくれないか?

俺は、和泉愛依がすごいアイドルだってことみんなに知ってもらうの、諦めたくねえよ!!!!!!!!!!!!!

よろしくお願いします。



浅倉透

凛とした涼やかな、落ち着いた声が響く。

『今日は、私たちの身近にある湿地に焦点を当て、その貴重な生態系について学んでいきましょう。』
『ナレーションは2年4組、浅倉透がお送りします。』


GRADの選考を控えた浅倉透は、同時並行でクラスでの研究発表のナレーションをお願いされ、受ける。
ナレーションを受けることは構わない、とプロデューサー。
GRADの選考も控えた今、ひとつひとつの仕事に向き合ってくれれば。


『湿地において、食物連鎖は植物性プランクトンから始まる。
最初にそれを食べるのは動物性プランクトン。
生命の繋がりの中の、最初の動物。』
たとえば、ミジンコ。
……ミジンコにも、心臓はあるのかな。
もしあるんだったら。
───どきどき、してるか。ミジンコ

浅倉GRAD 「鼓動」


スマートフォンの通知が鳴り止まない。
どうやら、以前の仕事のリハーサル時、著名なDJのSNSの自撮りに赤いジャージを着た浅倉が映り込み、その存在感から偶然話題になったようだ。
フォローされた、という通知が鳴り止まない。
まだ何も投稿していないSNSのアカウントに

時は遡り、教室で時を過ごす浅倉にクラスの委員長が話しかける。
クラスの発表会のナレーションを務めてほしい。
きっと、とても雰囲気が合うから。

いいよ、と返事する透。
浅倉さん忙しいよね、あまり負担がかからないようにするから、と委員長。
学年で2番……1番だっけ?の委員長の方が忙しいでしょ、勉強とか、と返す。
そんな、と謙遜する委員長。
大変と言うか、だって………どうやってなるの?アイドルに
……………え。なんか、なった。ていうか──
なってないかも?


時は戻り、どんどん増えていくSNSの♡やフォロー通知を見る透。
アイドルみたい。そんな呟きが出る。

どちらの時間でも、同様にこう感じた。
息、してるだけで。

透GRAD 「息してるだけ」


委員長とのやりとりのために連絡先を交換する。
浅倉さんに引き受けてもらえたの、本当に嬉しい。
クールな感じだから、クラスのことに協力してくれるんだって。
そう言う委員長に微笑んで返す透。
言われる。ちゃんとやれーって。
───ちゃんとやるから。これ。
即レスするから。委員長からチェイン来たら。
やれるかな。委員長みたいにめっちゃ頑張るの


ダンスレッスン中に着信音が鳴る。
見てもいいですか、大事な連絡かもしれなくて。
それを聞いたダンス講師は透にこう返した。
大事な連絡なら構わない。でも、マナーモードにするようにお伝えしていましたよね?

着信の件以外にも、普段からの態度にも目に余る部分があり、レッスンを取りやめ、ダンス講師はこう透に言った。
河原コース100周してから出直してきなさい


───100周したら、わかりますか。


ミジンコには、心臓はあるか。
その心臓は真面目に動いているか。

ダンス講師から今日の透のレッスンの顛末について聞いたプロデューサーは、その後透に連絡するもつながらないことを怪しむ。
透の家を訪ねてみるが、透はここにもいなかった。

河原コース100周してから出直してきなさい

まさか……


河原コースで倒れ込む透を見つけ、すぐに駆け寄る。
大丈夫か、まさか100周走った───
息も絶え絶えな透から、5周、とかろうじて伝えられた。
休もう。休んだら送るから。
肩で息をする少女はこう言う。
……じゃ…………ぶんかつ………ばらい……で…………

透GRAD 「どうしたいのかとか、聞かれても」


『川の水と海の水が混じり合う河口付近は、
底質が泥であることが多く、有機物も豊富に含まれます』
『それは無数の命を育む、あたたかい泥』
『川の水、海の水、あたたかい泥
そこに沈めば、きっと』
『こなごなの命に戻る
名前もない、ただの命に

SNSでのバズりがきっかけで透には多くの仕事が舞い込む。
そんなある日、中途半端なタイミングで仕事が終わり、透にこの後事務所によるか、そのまま自宅に戻るかを問いかける。
じゃ、座ろ。と透はバスの待合席を指す。
そうするとバス来たら停まっちゃうんじゃないか、と返す。
じゃ、乗ろ。
乗って、どこに行くんだ。
どっか。湿地?

考え込んだのち、いいぞ、行こう。湿地。と返す。
冗談だから、と返す透。
冗談じゃないぞ、俺は。とプロデューサー。
教えてくれ。透が勉強したこと。
────透の考えてること。


知ってたんだ?湿地だって、こういうとこも。
おう、とプロデューサーが笑う。
『川の水と海の水が混じり合う河口付近』、例えば潟。
これでも透のプロデューサーだからな?と言う。

先生、謝ってた。頭ごなしに怒鳴りつけてしまったって。と透に言う。
ううん、まだ終わってないし、50周くらい。
でも、もう走っても関係ないかも

透はそのまま続ける。
ウケるじゃん。別に、走らなくても。踊れなくても。
大変じゃなくて……全然。してるだけだから、息
のぼってるって思ってたけど…
わかんないや、最近。

委員長とした会話が思い出される。
はじめにあるのは太陽の光。それが植物プランクトンを育てる。
それを、ミジンコとかが食べて。ミジンコを次の動物が食べて。
その次が食べて。食べて。食べて。
どんどん命がつながって。
湿地を営む。世界中がそうやって命をつないでいる。
そのくらい命はシンプル。
だから、ここにいると良い。
息してるだけで、命になる


わかったよ、と透に言う。
ここに来てよかった。
頑張りたいんだな、透。
頑張れてるのかどうかってこと、透が決めて良いんだ。
大丈夫だ、合ってる。
───ちゃんと……立派に、命に見えるよ

透GRAD 「息したいだけ」



顕微鏡を覗く彼女が言う。
心臓。ある、心臓。
どきどきしてる。
ミジンコにも心臓はあって、めっちゃ動いてる。
生きてる。

GRAD選考で栄光を掴み、クラス発表会でも金賞を獲り、河原を100周した透は自分自身の心を掴んだ。
顕微鏡から顔を上げた彼女は言う。
どきどきしたい。ミジンコみたいに。
そうやって命の一つになって、いつか誰かが食べてくれたら。
そういうところにいたい。泥の中に。

透GRAD 「泥の中」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

こ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜れマジですごくないですか????????????????

GRAD透自体、非常に秀逸と言わざるを得ないシナリオで、(整然とまとめるの苦しかった)その特殊敗北がこれ。
まさにさまざまな命がいる中に透がいる。これ泥の中にいますよね。
非常に清々しい幕引きといいますか、ここまでポジティブに負けられるキャラクター性が羨ましくもあります。

ちなみに敗者復活戦敗北後、本戦を見に行く選択肢のコミュも見てほしい。
すげえなあこのゲーム!って叫びたくなるので。



樋口円香

「乗ります…!」
プロデューサーと円香が乗り込んだエレベーターに急ぎ足で乗り込む女性。
その女性がこちらを見て「あっ、樋口さん!」と言う。

円香から聞くに、以前オーディションで同席したアイドルだそうだ。
それ以来仲良くなり、チェインをやりとりする仲だと言う。

送ってくれたGRADのPR動画、かなり再生されてたね、と円香が話しかける。
見てくれたんだ、と女性は言う。
黙り込んだあと、意を決したように女性は口を開いた。
…私、これが最後のトライにしようと思っていて。
最後?と聞き返す。
前に樋口さんが言ってくれた言葉、覚えてますか?
願いは叶う、願い続けることが大事だって。
だから……終わる時は他の誰でもない、自分の意志で
でも終わらせるつもりはありませんよ!GRADで優勝することが目標です!

円香GRAD 「脈を打て」

ポーン、と目的の階に着いたことを告げる音が鳴る。
あ、着いちゃった。では私はここで!
と、その女性は一歩を踏み出した


円香にオファーがあった、CMの収録中。
広告代理店の営業の男性に声をかけられるプロデューサー。
いいですね、283さんの子。
恐れ入ります、と返す。話し続ける男性。
軽やかに───
樋口さんは本当に軽やかに踊りますね……。

CMの収録が終わり、CDショップの前を通る。
そこのCDショップのイベント、毎週やっているんじゃなかったんでしたっけ、と円香。
そういえば……スケジュールが変わったのかな。と返答。

初めて宣材写真を撮った帰り、このCDショップ前でアイドルがライブしていた。
あの時はアイドルを「笑っておけばなんとかなる、楽な商売」と言った。

円香WING 「カメラ・レンズに笑う」

今はもうライブはやっていない。
……………………
………………彼女は。
未熟で、未完成のまま──終わろうとしている

宣材写真は撮り直してもいいんでしたっけ、とプロデューサーに訊く円香。
ああ、もちろん。よかったら手配しておこうか?
お願いします、と円香。

円香GRAD 「空は晴れている」


誰もいないであろう夜の事務所に一人戻るプロデューサー。
デスクに、今日届いたであろう撮り直した円香の宣材写真をチェックする。
今回の宣材写真もよく撮れている。
以前と変わりなく、いい写真。
俺がこれに見合う働きができなくてどうする。
頑張ろうな…と呟く。

ここかなり好き おちゃめ円香

突然表れる円香に驚く。
人の宣材写真を見てにやにやするのやめてもらえます?と円香。
家まで送るよ、みっともないところを見せた口止め料がわりに。
結構です、バスがあります、口止め料ならなおさら。と返答が返ってくる。
ご心配なく、言いませんよ。今回は。

円香が去った後に、携帯へメッセージが来た。円香から。
バラエティ番組用のアンケートは机に置きました。
本当だ、とデスクを見る。
当日は付き添えなくてすまない、と返事を送る。
台本がありますし、現場の意向に沿ってやります、とレスが来る。

円香はさまざまな才能に恵まれている。
そして聡い、物事の奥を見ようとする。
気を抜かずにしっかりしよう、安心して頼ってもらえるように。
円香のプロデューサーとして

円香GRAD 「息遣いを聞く」
ここでは『プロデューサーとアイドル』の関係性なので、施しは受けない

バスで自宅に帰る間に、思い返す。
終わりにする時は誰でもない、自分の意志で、と言った彼女。
本当に軽やかに踊っていると絶賛してくれていた、とCM撮影の現場での評価を伝えてくれたプロデューサー。

軽やか───、というより



先方との打ち合わせが終わった。
今ごろ、円香はバラエティ番組の収録が終わったころだろうか。
と思案を巡らせているとちょうど着信音が鳴る。

申し訳ありません。失敗しました』という文字があった。

円香GRAD 「無機質な廊下」


どうして私を、台本通りに笑ってくれなかったんですか?
以前エレベーターで出会った彼女から問いかけられる。
沈黙ののち、ごめんなさい、と返す。
もしかしてなんですが……樋口さんはずっと私のことを───
哀れんでいました?


私って何やってもダメで!そんな私の起死回生の策がこれ!
『無能系アイドル!』
フリップからその文字が出て、他の出演者の笑い声が響く。
………そうすべきじゃないのはわかる。でも───
司会から話が振られる。
どうしました?樋口さーん?と。
………そうすべきじゃない。
なんか真顔?怒ってます?

……無理です。笑えない
その言葉が軽はずみに出てしまった。
「他の人にも笑ってほしくない」
あなたは、あなたのままで、間違ってない



呼び出し音が鳴った後、はい、と落ち着いた声が携帯越しに響く。
番組お疲れ様!もしスタジオの近くにいるなら迎えに行くよ。家まで送ろう。と話しかける。
少し思案したような静寂ののち、
はい。では、待っています
と、いつもと同じ、冷静な声を聞いた。



遅くなってすまん!カフェにいてくれて助かった!
と円香に声をかける。
この店、どのメニューもおいしそうだよな、円香は何にした?と問いかける。
場を和ます雑談なら遠慮します、と厳しい返答。

なんて言うべきだろう。
バラエティ番組の映像は確認した。
今、円香に一番伝えなくてはいけないことは───

バラエティ番組の件、申し訳ありませんでした
少しの静寂の後、円香がそう口を開いた。
本当に余計なことを言いました、と次いで話す。

確かに台本通りではなく、場が凍りついたと聞いている。
でもそこから上手いこと話が転がり、予想以上に話が盛り上がったとも聞いている。
番組をきっかけにしたオファーも多数来ている。
結果的には成功と言っていい。

つまり進め方としては失敗ですよね、と落ち着いた答え。
あの瞬間、発言の後始末を考えていなかった。
何より───
彼女のチャンスを潰した

なんて言えば──

思案していると、料理が運ばれてきた。
食べながらで適当に聞き流してもらいたいのですが、と円香。
話しかけるような、それでいて誰に聞かせるでもないような独白じみた声が卓上を通り過ぎる。
ありがたいことに、自分は恵まれている。
アイドル活動を抜きにしても苦労してきた方ではない。
必要な努力はするが、だいたいでもなんとなくはできる。
多分、とても恵まれている。
───だから、軽い
私の言葉は重さを持たない。
みんなから笑われていた、彼女の言葉の方がずっと重い。
…食器の音がカチカチと、静かに鳴っていた。

カチャ、とフォークが静かに置かれる音がした。
黙っていればよかった。
薄っぺらい言葉なんて、言うんじゃなかった。
落ち着いた声だが、確かに悔いるような響きを持っていた。

なんて言えば、正しく───
円香の、プロデューサーとして。

あなたは、あなたのままで、間違っていない
バラエティ番組での円香の発言が、思い起こされる。


そうか……と声が出る。

プロデューサーとして、言えることを、円香のためにできることを考えていた。
……………だけど

ここからは俺の独り言だと思って、聞き流してもらえたら。
円香は黙って、肯定する。
どれだけの価値があるだろうか。利口になることに。
そのせいで見えなくなってしまうものもある。
…それは、未熟を肯定する言い訳、と円香。
はは、言い訳かもしれないな、と笑う。けれど……
寂しさ、苦しさ、もどかしさ……そういうのも未熟ゆえのほころびなんだろうか
………俺は、今の円香が感じたことを否定したくない

詭弁、と怪訝な顔で返す円香。

今の言葉はプロデューサーとしての?
それとも、あなた自身としての?
円香の問いかけに聞き流してくれって言っただろう、と答える。

それならしっかりと聞いてしまいました、と答える円香。
じゃあ、とプロデューサー。
ここの食事は俺持ちで、口止め料ということにさせてもらおうか。

こちらを黙って見つめる円香は目線を下ろした後、口を開いた。
……でしたら。
ホットのレモンティーを追加で

円香GRAD 「椅子の背もたれに」
プロデューサーではない一個人』と『アイドルではない樋口円香』のため取引が成立する



今まで、諦めるって道から離れることだと思っていました。
GRADの選考を終え、決勝を残すのみとなった円香がそう言った。
でも、そうじゃなかったんですね。
諦めるのは、踏み出すこと。
──始める時と同じように。

……………そうだな。と返す。
知っていたんですか?あなたは。

円香GRAD 敗者復活後コミュ 勝利


そして、決勝の舞台の日。
舞台袖の円香に言う。
想いを言い尽くすのは難しい。だから歌やダンスが生まれたんだと思う。
決勝のステージに言葉はいらない。表現したものが伝わるんだ。

言葉がなければ、表現が軽くなるだけ。円香は答える。
軽いんじゃない、軽やかなんだ。後押しするように言う。
言葉遊び、と返答する諌めるような声。
肩の力を抜いて行こう。きっと、楽しいステージになる。

黙っていてもらえますか?
───もう言葉はいらないんでしょ

そう彼女は言って、決勝の舞台へ進んだ。

円香GRAD 決勝前コミュ



GRADで優勝し、とある日の円香も交えての先方での打ち合わせ終わり。
エレベーターのドアが開くと、そこにはバラエティ番組で同席した彼女がいた
バツの悪そうな雰囲気が一瞬流れたのち、1階で大丈夫ですかっ?と元気な声。

この間はすみませんでした、と彼女が謝る。
あれは私が──と円香が話すのを遮り、彼女が話し出す。
聞いてください、私、すぐに降りちゃうので

樋口さんのことが好きでした。
凛々しくて、迷いがなくて、たくさんのことを知っていて。
だから、本当は少し嫌い、なんて。
───私、樋口さんに会えてよかった

ポーン、と目的の階に着いたことを告げる音が鳴る。
着いちゃいました、じゃあ私はここで!と彼女が言う。
これからも頑張ってください、樋口さん。
エレベーターの扉が開く。彼女が一歩を踏み出す
───またどこかで!と言う。




円香GRAD 「願いは叶う」

エレベーターの扉が閉まる。
終わりも始まりも、同じように
軽やかで、しかし───


目的の階に着いたことを知らせる音が鳴る。
エレベーターの扉が開く。

二人は、一歩を踏み出した



めちゃくちゃ長くなってごめん……カットするところ全然なくて……

それじゃあ……
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

ここマジで好き

円香らしい敗北の感想、そして非常に重要なセンテンス群と思っています。

GRAD円香全体を通して、この特殊敗北が、利口でなくともいい、あなたはあなたのままで間違っていない、というメッセージをアイドルだった彼女のみならず、円香にも、プロデューサーにも、そして私たちにも感じさせる、と思いませんか?

もしかしてと思う瞬間の自分が嫌い、というのも期待なんて背負いたくないとかつて言っていた自分自身が自分に期待する瞬間だから、というのもなんというか………彼女らしい

円香WING 「心臓を握る」

さすがにちょっと一言書きたいんですが透GRADと円香GRADはカットする箇所がなさすぎて書くのがさすがにしんどかった
だっていろいろな表現が密接に絡むんだもん……
でも各アイドルのGRADシナリオは本当に最高なので、魅力が伝わるように頑張ります。



福丸小糸

がむしゃらにレッスンをする小糸。
ふと、雛菜に言われたことが胸を去来する。
なんのためでもない練習」───

ある日、GRADに出てみないか、とプロデューサーに持ちかけられる。
出てみたい、と即答する小糸。
みんなに笑顔を届けるためには、何かのためにがんばらなきゃ──

小糸GRAD 「いつかとべるように」

小糸のために何かできないか。
そう考えたプロデューサーは、練習風景をSNSにアップしてみないか、と小糸にもちかける。
小糸の頑張りを知ってほしい。そうすれば応援したくなるんじゃないか、と。

それを聞いた小糸はプロデューサーに、
それって、わたしが───
と言いかけて口を噤んだ。

やっぱりよくわからないので、プロデューサーさんがいいと思うようにやってください、と言う小糸。
かくして、GRADに向けた練習風景がSNSにアップされるようになった。

小糸GRAD 「空で呼吸する方法」

ちゃんと、やらないと。

SNSにアップされている、自分の練習風景。
───全然、できていない
でも、できるように、がんばらなきゃ。
もう、なんのためでもない練習じゃないんだから。

ある日のレッスンの帰り道、電話が鳴る。
プロデューサーさんからの連絡。
今日の練習の動画や写真があったら送っておいてほしい、というものだった。

溜め込んでいた想いが、口をついて出る。
「わたしって……やっぱりそうですよね
 下手な練習風景を見せて、こんなに頑張ってるんだって言わないと……
 だめなんですよね……」

小糸GRAD 「わたし」


GRAD予選後に話し合いの場が設けられた。
まずはプロデューサーが小糸へ謝罪をした。

小糸が頑張ってるところを見られるのが好きじゃないかもしれないこと、ちゃんと知っていたはずなのに、GRADへのプロモーションの手段として練習風景を伝える方法をとってしまったことに。
小糸が、もっといろんな仕事に挑戦したいと思っていること、そのためにどうしたらいいか、と考えるうちに一番大事な小糸の気持ちをないがしろにしてしまった
それは、一番やってはいけないことだったのに。

小糸もそれに応える。
自分は結果を出せていない
オーディションもほとんど受からない、ユニット活動以外はほとんど仕事もない。
それでは応援するきっかけも、魅力もない。
だから、アイドルとしてやっていくなら、『頑張っている』ところを見せて応援してもらわなきゃいけないってことは、よくわかる。

どんな形だって、応援してもらうのはありがたいこと、と小糸は続ける。
けれども、やっぱり自分は、下手くそでかっこ悪いところを全部曝け出して、それでもこんなに頑張ってるんだ、これが私の良いところなんだ
───そういうことをステージで言えるほどには、まだ、強くなれそうにない

教えてくれてありがとう、とプロデューサーが言う。
小糸のことをしっかりサポートしたい気持ちは変わらない。
だから───ちゃんと小糸をサポートできるように、小糸に手伝ってほしい

びっくりしたような顔をしたあと、微笑んで小糸が言う。
それって、私のサポートのサポートじゃないですか…?

はは、そうなんだ、と笑ってプロデューサーが言う。
もしサポートのサポートの、そのまたサポートが必要な時も言ってくれ。
一緒に頑張っていくって、多分、そういうことなんだ
少し笑った後、小糸も応える。
うん。……そうかも、しれないです。

小糸GRAD 「カナリヤは歌わない」


それから、SNSの更新はストップした。
GRADの本戦も近づいてきたある日、夕暮れのレッスン場で小糸がプロデューサーに言う。
どんなアイドルになりたいか考えるのが私の最初の課題って言ったこと、覚えてますか?

小糸WING 「なりたいものなあに」
小糸WING 「ここにおいでよ」
みんなの居場所になれるアイドルになりたい』がこの課題の回答だった

でも、どうなりたいか、そればっかりで。
どうやったらなれるのかって事は、ちゃんと考えられてなかった。
どうやったらみんなに見てもらえるか、応援してもらえるか。
一番難しいことはプロデューサーさんにばっかりお願いしていた。
なんとなくなんのためでもない練習をして。
『何か』のために頑張りたいと思っていても、その『何か』が来るのをずっと待っているだけだった。
……今までずっとそうだった。

だけど、と小糸は続ける。
もう、できること、できないことを自分と向き合って理解して、どうやったらなりたい目標に近づけるのかを考えていきたい。

だからわたし……考えてきたんです!と意を決したように小糸が言った。
目標に近づくために、今自分にできる事はなんだろうって……!
ぐ……『GRAD』で……優勝しようと思います

小糸GRAD 「ゆううつな受動態」



硬いタイルの床をビジネス用の大きな革靴と学生用の小さな革靴が並んで歩く音がする。
優勝したら何かがすごく変わるってわけじゃないかもしれない、って思ってましたけど……ほんとに、ほとんど今までと変わらないんですね、と、小さな革靴の主が言う。

大きな革靴の主は歩幅を彼女に合わせながら、はは、そうかもしれないな、と笑う。
でもだからこそこうやってこつこつ挨拶回りするのが、大事なんじゃないか?
目標に近づいて行くためにはさ!とGRADを優勝したアイドルへ振り向いてそう言った。


あれ、283さんじゃないですか!とTV局のディレクターが言う。
今日はぜひご挨拶させていただきたくて、とプロデューサー。

は、はじめまして!283プロダクションの福ま───
ああ!福丸小糸ちゃん!と、言い終わる前に返事が返ってくる。
ご存知だったんですか!とプロデューサー。
当たり前じゃないGRAD見たよ!とディレクター。

うちの番組にも遊びに来てよー!と去って行くディレクターを眺める二人。
これは結構大きな変化じゃないか?と小糸に問いかけるプロデューサー。
はい、わたしの名前知ってましたよね!と興奮気味に答える小糸。

じゃあ帰って、この次どうするか、考えようか!
……一緒にさ
と、プロデューサーは小糸に言った。

小糸GRAD 「すこしだけはねて」



では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

ノクチルのシナリオの中でも、GRADは初期の方にあたるため、小糸も同様に活躍できていないといった旨の内容が多い。
でもなんの結果も出せてないとか言わないでくれよ、頼む。
そんな願いを持って特殊敗北を見たので、本当に救われた気分になりました。

応援したくなる、応援する人にとってそこが居場所になる、そんなアイドルでもある小糸さんですが、この続きものとしてマイコレ小糸を見るのも嬉しい内容ですよね。
テーマからずれてしまうけれども、ライブの内容にも触れると我儘なままでの『わたしの主人公はわたしだから!』の大声援が今でも忘れられません。



市川雛菜

──あの大人気シリーズが帰ってくる!
修学旅行にやってくる高校生たちは──全員『恋愛禁止』!?
最終日に選ぶのは、夢か、恋か──……
青春ジャーニー♡恋愛リアリティショー
『これは恋ではありません』-3rdシーズン-放送決定!

恋愛リアリティショーとして一定の人気を博している『恋ませ』に雛菜も出演することに。
男女混合の10人との2泊3日の修学旅行、最終日の『進路調査書』に書くのは、そこで恋に落ちた相手か、はたまた追いかけてきた夢か───


『恋ませ』の中で雛菜はノクチルのメンバーと同じ響きの名前をもつ男子高生アイドル、「トール」に出会う。
そんな「トール」に恋心を寄せる女子高生モデルに、もしトールに興味がないなら、協力してくれないか、と持ちかけられる。
聞けば、この番組にトールの名前を見た時から、事務所にも言わずに、恋の成就を狙って出演したそうだ。
そんな女子高生アイドルに、雛菜はこう言う。
今言った事、雛菜にじゃなくて本人に言えばいい、と。

その後、そのモデルが「トール」のファンから攻撃されてしまっていることをプロデューサーから聞く。
元々、トールが出演することをファンは快く思っていなかったらしいが、初回の放送で『ユニットの知名度に貢献したい』という発言があり、それ以降応援ムードになっていた。
だが、このモデルの発言で兼ねてからの懸念が蒸し返された、ような形になってしまったのだ。

それを聞いて雛菜は「なんか大変だね〜」と言う。
誰かを攻撃しないといけないくらい、すきな人が自分のしあわせの全部ってことでしょ?と。

雛菜GRAD 「F/F」

そうだな、とプロデューサーが言う。
付け加えて、雛菜にもそういうファンがいるかもしれないぞ、と。

へ〜〜!?と驚いたのち、雛菜はそっか〜〜と、何か納得したような顔を見せた。


夜の海が見える場所で、ダンスの練習をする雛菜に「トール」が近づく。

トールは、最終日の『進路調査書』に夢を……『アイドル』を書くつもりでいる、と話す。
ただ、先ほど僕の名前を書きたい、と言ってきた子がいた。
こんなことは予想していなかった、ファンのみんなを驚かせるかもしれない。
こんな時、雛菜ならどうするか、聞いてみたい。

雛菜はそれに応える。
雛菜たちはアイドルだけど、『同じ』じゃないと思う。

雛菜は誰かのためじゃなくて、自分が楽しくしあわせでいられるようにアイドルをしている。
そういう雛菜を見て、誰かが楽しくなったり、しあわせになったりしてくれるから。
だから、いつも雛菜がしあわせな方を選ぶようにしている

雛菜GRAD 「IMyMeMine」


決勝、楽しみだな!
GRAD決勝の舞台袖で雛菜に話しかける。
なんかそんなことプロデューサーが言うの珍しいね〜?と雛菜。
いつもは心配が勝つけど…と前置きし、
勝っても負けてもどっちでもいいんだ
雛菜が楽しめて……これが『市川雛菜』なんだって思えるステージになるのが、もうわかりきってるから。

それに笑顔で、絶対、そうなっちゃうもんね〜?と彼女は答えた。

雛菜GRAD 決勝前コミュ


『恋ませ』3rdシーズンの最終回。
進路調査書に何を書いたのか。
市川雛菜の発表順が巡ってくる。

『進路調査書』に人の名前を書いた、と雛菜は言う。
そうしてめくられた進路調査書には。
市川雛菜』と書いてあった。

今回の番組の中で、『夢』や『恋』について考えた。
今やっている活動がすっごく楽しくてしあわせ。それを続けていきたい。
でも、それは『夢』や『アイドル』という書き方でいいのかな?
なりたいものや、好きなもの、大事なことに名前をつけるなら。
なので、これからも『市川雛菜』をよろしくお願いします〜!と彼女は元気いっぱいに言った。

夜の事務所。
『恋ませ』の進路調査書、いい答えを見つけられたな、とプロデューサー。
雛菜もそう思う、と彼女は言った。
別にアイドルになりたくて283プロにきたわけじゃないけど、アイドルはすっごく楽しい。
でも、今までいた誰かみたいにとか、こういうアイドルになりたいというのも、ない。
『アイドル』はこういうもの!とかいわれてもよくわからない。

だから、雛菜は雛菜になればいいよね

雛菜GRAD 「A.H.I」
アイドル 雛菜 市川 の頭文字




特殊敗北

これも千雪などと同じで、勝ってても負けてても成立するシナリオだった、と言えます。

ただやはりこのシナリオの中でも大きく成長しており、何が市川雛菜にとってのしあわせなのかを発信できるようになっている。
WINGシナリオの中盤までは、プロデューサーとのコミュニケーションでも若干の齟齬があったと考えると、雛菜にとって良い期間だったんだなあ、と感じることができます。

しっかりと伝えるところまでやりきって。
それが『市川雛菜』の『GRAD』
特殊敗北まで回収しきると、重要視する部分が少しずつ移り変わっており、成長が窺える嬉しい内容です。



七草にちか

…………にちか。
GRAD予選の舞台袖で、声をかける。
何かに怯えるかのように、震える、小さな体。

───勝ち上がったとして、どうなる
その辛さは、苦しみは消えるのか?
それが、にちかのやりたいこと、なのか?

………にちか。
びくっと体が震え、こちらに気づく。
……いってきます。
そう、虚空へと消え失せるような音が彼女の口から出た。



ボク、なに教えたらいいんでしょーかね
そんな言葉がダンストレーナーの口から出た。
なんかすごいこだわってるでしょ、ヒールとか履いて。それでがっつり踊るとか。
ええ、と相槌をうつ。
そのへんの子たちと差をつけたいのはまーわかって、と続けるダンストレーナー。
でも、なんかそこー?みたいな。スキルだけじゃないし、差をつけるのなんて。
痛めつけたいだけなんじゃないかなー?

きっかけは、わかってる。
出演するバラエティ番組が、隔週出演となり、間に入ったアイドルだ。
斑鳩ルカ
にちかの相方である、美琴の元相方。

もっと……もっと違うものをつかんでくれてるのかと思っていた。

WINGでの、優勝。
283プロ感謝祭での堂々たるステージ。
美琴との絆の深まりも感じていた。
シーズの七草にちかに、なってくれたと思った。

わかってるんです。彼女には、今はそれしかないんだろうって……
───自分を痛めつけることしか。それにすがるしか……

にちかGRAD 「うっすら透明になる」

無理なレッスンが、ずっと続いていた。
GRAD自体も、こちらから打診したものではない。
にちかが、一人でエントリーしたものだった。
元は、自分が彼女に望む仕事を充てることができないことが悪い。
彼女が望むなら、サポートするのが自分の仕事だ。
だが、自分自身を痛めつける彼女をサポートするのは…………


レッスン室の扉を開ける。
こちらを睨むにちか。
………ヒールを履いている
少しの静寂の後、休んでるわけじゃ、ないので。という声が返ってきた。
………わかってるよ。
あーーー、集中できないな……!という苛立った声。
ヒールを床に叩きつけるようなステップを始める。
待ってくれ、とにちかに言った。

靴、脱いでくれないか

……靴を脱いでほしい、にちか
そう、少し語気を強め言った。

………………意味わかんない
練習中なので声掛けないでもらえたら嬉しいです……!と、声を荒げるにちか。
予約時間は5分前に終わってるよ。と冷静に告げた。
そして、延長したから出ていかなくて大丈夫、とも。

なんで……練習を続けたいんだ
そう、にちかに問いかけた。

練習続けない理由ってなんです……?
理解できない、という声色でにちかは言った。
今持ってるの、ぼちぼち飽きられてる準レギュラー1本と目立てなかったら終わるステージ1つですよね?やれること練習しかなかったですけどまずかったです?
矢継ぎ早に捲し立てるにちか。

練習して、次のステージで目立って……それで、どうなる?
そう、さらに問いかけた。
外は強い雨が降っている。

───どうなる……って、アイドルなんですよ……!
自分、アイドルのプロデューサーじゃないんですか……!?
イライラしたような声が返ってくる。

違うよ。
にちかのプロデューサーだ。
そう、彼女に告げた。
窓を、雨が叩く音がする。

痛めて、使えない自分になって、そういう自分を嘲笑いたい。
自分を痛めて、ステージで笑われて破滅すればいい。
どこかでそう思ってるんじゃないか
絶対………………絶対にそんなことはさせない。


そしてにちかにこう告げた。
決勝は、裸足で出てほしい。
────次の選考、落ちてきてほしい。

口から息が出るだけのような、え、という消えいるような声が聞こえた。
裸足で出て、落ちてきてくれ
…………それで何も終わらないってこと、俺が証明してみせるよ。

にちかGRAD 「いたい、いきてる」



靴、持ってきたんですよ、今日。
履きませんけど、べつに
GRAD決勝の舞台袖でにちかはそう言った。

落ちろって言うから、落ちてきます。けど………
────誰のせいでとか、誰が気にするんです?
私………私のせいで落ちてくるので。
決心したような、諦めたような眼差しで、素足で彼女はステージに向かった。

にちかGRAD 決勝前コミュ




箱を開ける。
靴。

その………買ってきた。
夜の事務所、その箱を差し出した当人、プロデューサーがそう言った。

練習してた靴、脱げないように小さいサイズにしてるよな、とか、
これは紐がしっかりしてるんだ、とか、
クッションがしっかりしててヒールも丈夫なやつなんだ、とかなんとか言って。
真顔で彼を見つめた。

それで……
履いてもらえないか
痛めつけるんじゃない。一緒に、歩いて行ってほしいんだ
一緒に、この靴と
真剣な眼差しで、私にそう言った。

にちかGRAD 「そうな の」





特殊敗北

ちょっといいですか?
にちかのGRAD、まとめるのムズ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!
かなりカットして重要なところばかり抜き出していますし、これまでのシナリオとの接続についてはかなり省略しています。
見てない人はぜひシーズシナリオを追いかけてほしいなあと感じます。
今年中には各アイドルのロードマップ的なnoteも出したいなあ、と思っています。

さて、特殊敗北ですが、プロデューサーの行動が非常に印象的な負けコミュですね。
初見プレイでは全国のプロデューサーに、負けに行った人もいるんじゃないでしょうか。その際は多分通常敗北を見ていると思いますが……

意図としては通常敗北も特殊敗北も変わらず、最後の印象的なセリフも「次はにちかが始めてくれ」に変わってたりしますが、にちかのセリフが違います。
自嘲するような言動があるんですよね。

決勝後コミュ 敗北②

実は敗者復活での敗北コミュは、もっと悲惨で、斑鳩ルカの幻影が消えないという状況で幕を閉じたりします
クッソ最悪すぎる。

敗者復活後コミュ 敗北
目を閉じても消えないルカの幻影
「消えない……」のボイスが悲痛すぎて辛い

でもこれがあるからセヴン#スというコミュが輝くとすら思っています。

モノラル・ダイアローグスとセヴン#スの間にあるのがにちか・美琴GRADですから。
敗北コミュも含めて楽しんでおくことで、わたしがわたしになるための1000カラットの物語が完成するのかもしれません。



緋田美琴

前所属事務所を退所し、天井社長のツテで283プロにオーディションを受けにきた彼女、緋田美琴はこう言った。
私、アイドルになりたいの。………死ぬほど


彼女は今、北海道の空港にいた。

美琴、しばらく休んで、ご実家の方に帰ってみるのはどうだ?
ほら、美琴のご実家は空気も綺麗だろ?
咳も少しはよくなるんじゃないか……

ここに来る前に、プロデューサーが事務所で言ったことを思い出す。

私は、別に来たくなかった。帰ってなんて…
こんなところに来たって───
ごほ、と咳が出る。

時を同じくしてプロデューサも事務所で思案をめぐらせていた。
練習以外のものがあった時に、美琴は帰っている。
原因不明の咳に悩まされている現状。
『GRAD』。見送るべきなんだろうけど───

美琴GRAD 「hello」



もしもし。
聞き慣れた落ち着いた声が電話越しに響く。
どうしたの?プロデューサー。と、その声の主──美琴は続けた。

調子、どうかな、と思って。実家の方でゆっくりできてるか?と訊く。
どうかな……よくわかんないや。と返答。
ここには何もなくて、何もすることがなくて。
時間がゆっくり進んでいつまでも終わらないみたいでなんだか怖いの。
美琴は続ける。
昨日できてたことも、もしかしたらもうできないかもって。
何もしていない時間がゆっくり過ぎて行くのはすごく───

電話越しに咳き込む声が聞こえる。
大丈夫か、と美琴に問いかける。

少しの静寂ののち、
全然、大丈夫じゃないみたい。という憔悴した声が聞こえた。

美琴GRAD 「distant」


片付け?
問いかける声。お母さん。
うん、ごめんね。うるさかった?と返答する。
咳、少しはよくなった?心配する声。
どうかな、わからないけど。と答える。

少しの静寂ののち、
ピアノ、調律してもらおうか?と聞かれる。
帰ってきた時に実家のピアノの鍵盤をひとつ、押してみた。
ひどく狂った音。前に自分がこの家にいた時以来、調律をしていないそうだ。

ずっと居てもいいのよ、美琴。
優しい問いかけ。
母を見つめ、素直な疑問を投げかける。
どこに?
私の部屋もないのに、この家。

いいの、やっぱりもう、帰らなきゃ。
……帰りたいの。だから調律しなくてもいいし、なんなら処分してもいい


どうせ息苦しいなら、帰りたい。
生きたい場所に行きたい
そのためなら、私────


もしもしプロデューサー?
あ……美琴!よかった繋がって……と安堵する声を電話越しに聞く。
もう空港か?
プロデューサーの声に混じり、飛行機の発着を知らせる音。
電話から聞こえている。

プロデューサーも空港にいるの?と問いかける。
そうなんだ、とプロデューサー。
美琴に昨日の夜に連絡をもらって、迎えに行こうと思って。

いいのに、迎えなんて。
はは、俺が来たかったからさ。といつもの声。
プロデューサー。帰ってきても、よかった
空港の出口に向かいながら、言葉を投げかける。

私、結局──ひとりで考えても、よくわからなかったの。
電話に向かってそう言いながら、早足で歩く。見慣れた顔が見える。
だけど───
耳から電話を持った手を下ろす。プロデューサーのすぐ近く。私が帰るべき場所。
ステージのない場所で生きるなんて、死ぬより辛い
……だから、帰ってきたの。
電話越しでなく、直接プロデューサーに言った。

彼は少しびっくりしたような、安心したような顔をして、そうか、と息を吐いたあと。
──おかえり、美琴
と言った。

美琴GRAD 「dead」


やっぱりここか、とレッスン室の扉を開けて言う。
プロデューサー、と美琴。

ねえ、ここのピアノいつ調律した?
ちょうど美琴が帰ってくる前日かな……と答える。
綺麗な音だったから、と美琴。続けて言う。

実家に戻って実家のピアノを触ったらすごく音がおかしかったの。
私以外、誰も弾かないから調律していなかったみたい。
それでね、昔ピアノを習っていた時に言われたことを思いだしたの。
1日弾かないと3日分腕が鈍るって。
だからかな、怖いの。毎日練習しないと。
ここにはなんでもあるでしょう?
レッスン室も、音の合ったピアノも。
だから、帰ってきたかった。すぐにでも。

ごめんな、と返す。
環境を変えたら何かが変わるかもしれないって思ったんだ。
だけど、それが余計に美琴に負担をかけたのかもしれない。

ううん、よかったの。戻ってみたから気づいたの。
私……いつかは帰る気でいたのかもしれないって。
うまくいっても、いかなくても、いつかは帰ることになるかもって………
………だけどもう、私の帰る場所はなかったの
………だから、よかった。

落ち着いた、しかし決意を帯びた声が続ける。
前に言ったよね。
目指す通りのアイドルになれるなら、死んでもいいって

よく覚えてるよ。
すごく驚かされたから、と答える。

その言葉に嘘はないの。だけど、少し間違っていたのかも。
ここで死んでもいいくらいのステージをするには、ここで、生きていかなきゃいけないんだって。
苦しくても、わからないことばかりで何もできなくて。
……何にもなれなかったとしても。
他のどこでもない、ここで生きていたいんだって

……それにね。にわかに明るくなったような、肩の荷を下ろしたような声で美琴は続けた。
ここにはプロデューサーがいるから
私を待っていて、『おかえり』って、迎えてくれる。
すっごく世話焼きなプロデューサーがいるでしょう?
だから、生きていけそうな気がするの

美琴GRAD 「alive」




……できるかな。という単純な疑問をGRAD決勝の舞台袖で美琴が言った。
少しは練習で取り戻せているといいけど。休んで、鈍っていた分。続けて言う。

うん、できるよ。と後押しするように言う。
できるように練習してきたんだから。

……そうだね、と呟くような声。
今日できたことが明日できるとは限らない、だから毎日、毎日練習するの。だから、もう止めないでね。プロデューサー。

うん、と答えながら眩しいくらいに耀く彼女を見る。

……それから、と美琴が続ける。
一緒に考えて、一緒に苦しんだり、悲しんだり喜んだりして、
ステージに立つために私と一緒に生きてほしいの
美琴もこちらを見つめながら言った。
決勝のステージが、始まる。



やったな、優勝だ!
舞台から戻ってくる美琴に声をかける。
あ………うん………、とそっけない美琴。
どうした、もっと喜んでいいんだぞ、と声をかける。
プロデューサーはどうだった?今日のステージを見て。と何か納得のいかない美琴から問いかけられる。
良いパフォーマンスだったよ、美琴はそうは思わなかった?と答える。

私は、もっと……──
もっと、できると思ったの。だから──
どこか遠くを見つめながら美琴が言う。
じゃあ、これからが楽しみだな。
え……と気の抜けた返答。
まだまだ、頑張っていこう。一緒に。
そう言うと、彼女は少し微笑んだ。

美琴GRAD 決勝後コミュ 勝利




では………………
ありうべからざる今を見ろ』。

特殊敗北

美琴さんの敗北イベは、特殊敗北も通常敗北も本当に名コミュだと思っています。
通常敗北では、狂気的なまでのステージへの憧れを垣間見ることができます。こちらも好き。

美琴GRAD 決勝後コミュ 敗北②

GRAD全体通して、死ぬほどアイドルになりたい、と言う彼女の"死ぬほど"が形を変えたコミュでした。
ステージで生きて行くために。
決意を新たにした美琴さんのかっこよさは、セヴン#スでも遺憾無く発揮されます

セヴン#ス 第5話「shhh」
そこ=ステージ このセリフほんまに好き

その決意がやはり特殊敗北でも大きく出ている。
勝利コミュも好きですし、今回は概要ではカットしていますが、エピローグのコミュも好き。電子レンジすらうまくあつかえないみーちゃんだ〜〜〜〜〜いすき。



おわりに

以上、25人分のGRADの概要と、特殊敗北コミュをご紹介しました。
かなり長いnoteになりましたが、しっかりとGRADシナリオの魅力を伝えるものが出来上がってよかったです。

もちろん、各アイドルの概要は大きくカットしていますし、なによりSEや劇伴やボイスがないので、きっちり回収したいな、と思った方はしっかりプレイしてくれると僕は嬉しいです。いちシャニマスファンとして。

今後もなんやかんや書きます。

では、さようなら。


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