【中学受験】家庭教師の利用法@2024年時点の考え

 中学受験では、わりと家庭教師を付けることが一般的なことのようです。私は、今まで集団指導しかしてきていないので、「家庭教師」という仕事がよくわかっていません。その仕事を想像すると、「自分にはできない」と感じてしまいます。集団指導とは求められる能力が異なるもので、おそらく全く違う仕事だと考えます。その能力を考えると、私にはできないと感じています。

 また、集団指導をしてきた立場からすると、家庭教師にあまり良い印象を持っていません。大手集団塾時代に聞こえてくる家庭教師の話題に、良いものはありませんでした。それは家庭教師を付けているという子の家庭教師を付けていることが発覚する理由が、変な勉強の仕方をし始めていて成績を落とすことが多かったからです。「成績が落ち始めているな」と感じて、その子を注意深く見るようになると「あれ?変なことしているな」ことが見えることがあり、「どうして、そんなことをしているの?」と聞くと、「家庭教師の先生に、やれと言われたから」という話が出てきます。集団塾で家庭教師を付けていることがわかるときは、そんな風に不具合が発生したときです。だから、基本的に集団塾からは、家庭教師が良く見えていませんでした。
 そもそも、集団指導と個別指導は相反する性質のものなので、互いに良く思わないのは当然のことなのかなと。集団授業が「主」であることが多く、個別指導が「副」になりがちです。集団指導の不備を補完する立場で個別指導が成り立っているところが多く、それゆえに個別指導は集団指導を悪く言いがちです。それが情報として蔓延しているからこそ、感情的にも集団指導側は個別指導を良く思えない構造になっています。ゆえに、今まで「家庭教師」という存在に悪い印象を持っていたのが本音です。加えて言えば、個別指導や家庭教師を利用するとすれば、年間で最低でも100万程度は掛かるので、その費用対効果にも疑問を抱いていました。
 それは、以前の記事にでも言及しています。

 しかし、今年の受験でその印象が変わる経験をしました。実際に家庭教師の仕事と結果を身近で見たことで、「家庭教師」の仕事に価値や可能性を感じました。
 今年は、学習相談で「どうしても家庭教師を紹介してほしい」とい言われ、「時給10,000円」を「安い」と言っていただけた御家庭に信頼できる家庭教師を紹介しました。集団指導塾で豊富な経験があり、カリキュラムにも精通している講師です。元々、学習相談にお越しいただいた家庭でも、私たちの教室と目指しているレベルが異なる家庭には、積極的に転塾を勧めるようなことはありませんでした。

そのまま通塾していただき、「有料学習相談」という形で後方支援のサポートをしておりました。志望校に対して適切な難易度の学習量になるように、テキストの問題を取捨選択するなどのサポートです。
 ただ、それはそれで難しさがあるので、サポートにも限界がありました。実際に指導することで、その子の状況を把握しているわけではないので精度を欠くことは事実です。また、現実的な話をすれば、お通いいただいている御家庭のサポートもあるので、学習相談の御家庭に完璧にコミットするわけにはいきません。そこに指導価値があるとは感じていましたが、そこに全力を尽くすわけにはいきませんでした。

 そんなことを感じているときに、その個別指導の価値に全力でコミットしている家庭教師の仕事を身近で垣間見たのが、今年の受験でした。そのため、今は「難関校以上を目指すのであれば、年間100万円程度を投資する価値がある」と感じています。今までは「家庭教師」という仕事に懐疑的でしたが、今はその価値を信じています。
 ただし、それには条件があると考えています。その条件は、以下の通りです。

1.SAPIXに通っている。

 SAPIXの偏差値50以上の戦いをしている御家庭に限ります。部分的にはGnobleの御家庭も当てはまると思いますが、私がGnobleの偏差値を把握しきれていないので、ここでは具体的な言及を避けます。
 SAPIXの偏差値50以上の戦いは、「真面目に勉強していれば勝てる」というわけではなく、detailの争いになります。その世界で戦う場合は、家庭教師を付けることに年間100万円以上の価値があると思います。
 そのレベルでなければ、個別に成績を上げることよりも現状を改善した方が効率が良いと思われるので、年間100万円の価値を出すのは難しいと考えます。大手であれば、SAPIXとGnobleの2社のみ、小さな学習塾に通っている場合は、おそらく学習塾のサポートのみで事足りると思います。

2.算数の指導を受ける。

 無条件で付けていい教科は、算数のみです。
 それ以外の教科は、志望校によります。たとえば、国語であれば、麻布や桜蔭のような記述力勝負の学校に関しては、家庭教師と一緒に過去問に取り組むことに価値があるとは思います。ただ、それにどこまでの費用をかけるかは、判断が難しいところです。
 入試においての重要度、点差の付き方から考えると、劇的に点数を改善できるという点において、算数が一番費用対効果が高いです。次点を選ぶとすれば理科でしょうか。物理・化学・天体などの単元で、しっかりと理論を理解していないと解けないような問題を出してくる学校を志望する場合は、集団指導だけでは克服できない可能性が高いからです。
 そうでない場合は、基本的に算数の家庭教師だけで十分です。腕の良い家庭教師は、横のつながりで他教科の腕の良い家庭教師と連携を取っていることがあります。そういう家庭教師に当たれば、専門教科ではなくても相談に乗れるものです。ゆえに、特別な指導を必要としていない学校に関しては、腕の良い算数の家庭教師を一人雇うだけで、何とかなるものです。

3.指導実績を出している家庭教師を選ぶ

 具体的にオープンにしている家庭教師は少ないようですが、できれば指導実績をオープンにしている家庭教師が望ましいです。オープンにしていなくても、相談時に具体的な指導実績をもとに話を進められる講師を選ぶのが良いでしょう。

 このような記事にまとめて示すことは、指導者としての良心だと思います。「主」として指導する集団塾と異なり、個別指導は指導の責任の所在が曖昧になりがちなので、しっかりとした指導実績を掲げることに自信と責任を果たしている講師の方が信頼できると考えています。

 以上の条件で家庭教師を利用することは、年間100万円以上の価値を生み出すと考えています。
 だからといって、私自身が個別指導をし始めるかというと、今のところそういうつもりはありません。それは冒頭でも書いた通り、自分の特性が個別指導に向かないと考えるからです。ただ、自分ができるできないとは関係ないところで、場合によっては家庭教師の存在が大いなる助けになるという認識のもと、柔軟に学習相談を受けようと考えるようになりました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?