腰痛くん

　腰痛くんはある日突然やってくる。まるで人の家に土足で上がるように不定期にやってきては狼藉三昧を行い、やがて去っていく。腰痛くんがくる前触れはない。無理をしたとか、無理な姿勢をとったとか、そんなことはお構いなしに、やってくる。
　整形外科に行っても、整骨院に行っても、結局は何ら解決しない。せいぜい湿布を貰うくらいである。ひょっとすると腰痛くんは、整形外科や整骨院の回し者なのかもしれないが、僕はそれらの施設には行かないことにしている。行っても無意味だからだ。
　仕事で腰を使い過ぎたのであろう。重いものを独りで担いだり、無理な姿勢で作業をしたり、それで腰痛くんが頻繁に訪問するようになったに違いない。
　腰痛くんを怒らせたら、体全体にも痛みが渡り、こうなったら寝ているしかないが、寝返りもうてなくなる。最悪である。せっかく運動して体重を減らそうと思っていたのに、これでは逆に太っていくばかりではないか。
　せめて食事の制限でもと思うが、寝ているばかりでは、卑しいので何か食べたくなる。これはちょっと問題だ。
　月1回心療内科にいかなければならない。過去2度、病院へ行く日に腰痛くんがやってきて、行けなくなったことがある。1度は薬を送ってもらい、1度は息子に取りに行って貰った。
　掃除洗濯炊事もなかなか苦労である。妻がいる時は妻がしてくれるが、そうでない時はせざるをえない。買い物などは地獄だ.。腰痛くんが僕を虐める。
　まあそれも3、４日くらいの辛抱で自然と痛くなくなってくる。腰痛くんが僕の体から抜けていく。またいつやってくるかはしらないが、もうこなくていいのだが、確実にその日はやってくる。