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マシンガントーク

 1か月ぶりに心療内科の医院へ行った。いつもはズラッと人が並んでいるに、この日は少なかった。寒くはなかったが、天候が今にも雨が降りそうな感じだからだろうか。
 1人、初見の男性、マスクをしているので、年齢は判りかねるが、明らかに僕よりは随分年下であろう。自分で事業を起こし、頑張っているらしいが、眠れないので、ここへ月に1回来て薬を貰っているらしい。
 向こうから話しかけてきた。人懐っこい性格のようだ。僕ともう1人、並んでいる若い女性を巻き込んで、医院が開くまで車座になって話をしたが、それにしてもよく喋る男だった。女性も僕も相槌を打つくらいで、まともに喋れない。彼の独擅場だ。
 まあおかげで待っている時間、暇つぶしができて、よかったのだけれど、ああいう一人で喋り続ける人物はどうも苦手だ。こっちに会話をする間を与えてくれない。いつもは一人ぼっちで仕事をしていて、独り身で、それで人恋しいのだそうだ。
 そういえば妻の2番目のお姉さんも定年で独り暮らしで、普段は喋る相手が小鳥くらいしかいない。会えば、同じようにマシンガントークで、会話が成り立たない。人恋しいのだろう。
 こちらは同じく隠居の身なれど成人した子供が2人同居して、何より妻がいる。会話する相手には事欠かない。恵まれている。
 病院が開くと、会話は止まり、それぞれ診察を受け、挨拶をすることもなく別れた。

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