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鬱と酒

 酒はわりかし飲んだ方だろう。その報いか、酒が飲めない体になってしまった。鬱の薬のせいである。鬱の薬と酒は相性が悪い。両方飲むと、肝臓に負担がかかり過ぎ、アルコールも薬も十分に分解されることができなくなってしまう。つまり酔いやすく、酒が残りやすいということだ。酒に弱い人が酒を飲むとすぐに寝てしまうが、あれと同じようになってしまうようだ。
 それ以来、というかそれ以前から僕は酒を一滴も飲まなくなってしまった。実は鬱が原因で酒をやめたわけではない。バセドウ病で、酒がまずくなったように感じて以降、飲んでいないのだ。だから鬱になって酒は控えるようにいわれても平気だった。
 酒は基本的には好きである。吟醸酒などは大好きである。勿論ビールも好きである。そのビールが水っぽく感じてまずくなったから飲むのをやめた。
 そういう訳で、飲み屋になんぞ、この数年行っていない。レストランでビールを注文することもない。今や仕事もせず、車も手放したのだから、昼間からビールを飲んでも、なんの差し障りもないところであろうが、それができない。ノンアルコールビールさえ飲まない。あれはあまりうまいものではない。最近はCMでかなり宣伝をしているようであるが、アルコールが無くて、なんでうまいはずがあるであろうか。
 そんなわけで、多分一生僕は酒が飲めないのだろうと思う。治療には時間がかかるようである。会社を辞めたらストレスがなくなって、病気が治るのかと思ったら、そういうわけではなさそうである。寛解するのに相当時間がかかるらしい。とんでもない話ではある。
 鬱なんかになる前に思い描いていた隠居後の生活とは甚だかけ離れたものになってしまったが、酒代が浮いたと思えば、それも悪くはないかもしれない。これから新しい隠居後の生活を描いていかなければならない。


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