【これで完璧】放射性核種まとめ

お互い時間も多くないので始まりの言葉は控えめに。

中部圏で薬学6年生をしている真田と言います。
模試上位1%くらいをウロウロしつつ、国試が終わったら忘れる知識ではなく、現場に出た後も使える勉強を心がけています。

さて早速ですが、放射性核種みなさん苦手ですよね。
同じような作用だったり同じような原子だったり。

覚えたつもりでもすぐ抜けてしまったり、そもそも覚える気にならなかったり。

ですが、基本をおさえていけば、実は暗記はそれほど多くありません。
このnoteを最後まで理解できれば放射性核種について不安はなくなることを約束します。

少しスパルタですが、ぜひついてきてください。

覚えるべき放射性物質

まずは覚えるべき放射性物質の一覧です。

薬学ゼミナール 青本  改定11版①物理 61ページより引用

青本物理 1.4.4 放射線核種 ってところにあります。
結論としてはこれを全て暗記できたらゴールというわけですね。

原子、放射線の種類、半減期、集積性など色々ありますが、ひとまずここではそうだったそうだったくらいの感想で良いです。

見てのとおり、放射線には色々ありますね。
α線、β+線、β-線、γ線、X線…

こういうものは覚えやすいものから覚えることが定石です。
α線からいきましょう。

α線放出核種

そもそもなぜ原子は壊変を起こすのでしょうか。

答えは無理をしているからです。

と言われてもさっぱりな人が大半でしょうから、復習しつつ理解していきましょう。
ここは他の単元との繋がりになってくるところで難しくもありますが、ここが一番の山場ですから、少しだけ頑張ってください。

核融合と核分裂

核融合は水素が有名ですね。名前のとおり核と核が合体してデカくなります。
核分裂は原理力発電をイメージしたら良いですね。核が分裂して小さくなります。
人間の悪き歴史で言うなら、前者が水爆で後者が原爆ですね。

さてこの二つ。核がデカくなる反応と核が小さくなる反応ですが、永遠にデカくなり続けたり永遠に小さくなり続けるわけではありません。

これらは鉛を目指して反応が進んでいます。
原子界の理想が鉛なわけですね。

では、なぜ鉛を目指しているのでしょうか。
それは鉛が安定だからです。

自然界では基本的に安定を目指してみんなが行動しています。
人間でも簡単な方に、楽な方に向かって行動しますから、それで考えてくれたら良いです。

今までの反応も基本的に安定になる方向に進んでいます。
それを理論的に考えるのがエンタルピーとかエントロピーとかギブズエネルギーですが、そこに深入りしすぎるとアナフィラキシーを起こして倒れる人が出るかもしれないので触れません。

単純に、安定な方に反応は進んでいくんだなと考えて貰えばいいです。

さて、話は戻ってα線です。

α線の壊変も、不安定な原子だから起こるわけです。無理しているわけです。
上の表をみてもわかる通り、α崩壊を起こす原子は総じて原子量が200を超えています。

これは最も安定な鉛の原子量が206だからです。
ここに向かって質量数を4減らす崩壊を起こすのは大きい原子以外ではあり得ません。

例えばですが、原子量131のヨウ素は質量数4を減らすと鉛から遠ざかるわけですから、そんなことはしません。

表に載っていたのは226ラジウムと238ウランですが、もし、その他に知らない放射性核種が出てきたとしても、原子量を見て「まあα壊変はするよね」と分かるわけです。

以上がα壊変の考え方です。

まとめ
原子量206を超えるでけーやつはα壊変するぞ!

p.s. だから、原子量201のチタンは原子量が大きいながらもα崩壊はしません。別にα崩壊しても安定にならないからです。

β線について

次に覚えやすいのはβ壊変ですね。
α壊変とは打って変わって、今度は原子番号が小さいやつらの話です。

β壊変も起こる原理はα壊変と同じで、無理しているからです。
不安定だから安定になろうとします。

ところで原子にとっての安定とか不安定ってなんでしょうか?
これは自然界に存在する核種の量だとか半減期を見ると分かります。

少ない同位体は不安定であり、半減期が短い同位体は不安定です。
これは同じことを言ってますから一度考えてみてください。
これが分かるとゴールに大きく近づきます。

例として炭素について考えてみます。

環境省 放射線の基礎知識 原子核の安定・不安定より引用
公益財団法人 環境化学技術研究所 用語解説 炭素14より引用

炭素は質量数が11、12、13、14と四種類あります。
しかしこの中で圧倒的に多いのは質量数12の炭素であり、存在比で99%をしめます。
つまり、炭素界では質量数12になりたいのだと分かります。

逆に考えると質量数が12でない炭素は無理をしている、不安定であるということを意味します。

そのため、原子は中性子を陽子に変えるβ+壊変や陽子を中性子に変えるβ-壊変をするわけです。

質量数11の炭素はどう頑張っても質量数12になることは出来ませんから、原子番号の一個小さいホウ素になることを決意します。

そのために陽子からe+を捨てて中性子に変え、原子番号が下がったことで炭素からホウ素に変わりました。陽子が中性子に変わっただけなので質量数に変動はありません。
ですが、もう劣等感に苛まれていた11炭素君はもうそこにはいません。嬉しそうな11ホウ素くんがいるだけです。良かったですね。

安定かどうかは、基本ふだん使っている原子量を安定だと思えば良いです。
酸素なんかでも、ふだん16で計算しますよね。質量数が15の酸素はいつもより軽いなと思ってもらえたら良いです。

余談ですが、β+壊変を起こす原子はサイクロトロンという機械で無理やりエネルギーを与えて作ります。原子量15の酸素や18のフッ素は院内の小型サイクロトロンで作られます。

少し話が逸れましたが、β崩壊の考え方としては以上になります。
安定な同位体と比べて軽ければβ+線を出し、重ければβ-線を出します。

覚え方としては、β+だけ覚えて、この後γ線を出すものを覚えて、残ったものをβ-線を出すものと考えると楽ですね。

β壊変 まとめ
いつもより軽いやつはβ+壊変、重いやつはβ-壊変するぞ!

p.s. よくひっかけとして出されるけど、β+は診断用です。PETに使うからね。これに対してβ-を出すやつは治療に使います。攻撃してくれないとダメだからね。逆に攻撃しちゃうようなやつは診断には使えません。危険だから。だから、比較的安全なγ線も診断用で、超危険なα線は治療用です。間違ってもα線放出核種を診断に使わないように!

p.p.s. サイクロトロンで作るってなると陽子をぶつけることになるんだけど、すると当然ながらぶつけられた原子は陽子が多くなるよね。したらどうするかって、陽子を減らす方向に動くわけよ。その方法がβ+壊変(陽子→中性子)か、その辺に浮いてる電子を捕まえて陽子を中性子に変えるか。後者の場合はその時に特性X線が出るね。

γ崩壊

反響あれば書きます。
参考になったらリツイートで教えてください。リツイートですよ!

予定表
崩壊について(ほぼ済)
放射性核種 各論(集積など)(未)
放射性医薬品の使い方(未)
実践対策問題・解説(未)

γ崩壊おまけ

γ線を出すやつは少ないので覚えちまってください。ヨウ素、インジウム、テクネチウムくらい覚えておけば良いです。
ヨウ素では123、125、131の放射性核種がありますが、123は半減期が短いので診断用です。125は長いのでラジオイムノアッセイに、131はβ-線も出すため甲状腺治療に使います。
123は3、2、1って感じするのでなんか半減期短そうですよね(強引)。
131は13を遠目から見てください。徐々にβに見えてきたら成功です。
125は残ったやつです。
インジウムは気合いで!テクネチウムはミルキングがどうのこうのしてたやつです。過渡平衡とか永続平衡とかどの辺も見といてください(雑)

では。要望、文句、訂正あればご連絡ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?