見出し画像

頭の良い人ほど陰謀論を否定しがたくなる件と山崎元さんのこと

やや旧聞に属するが、先月亡くなられた経済評論家の山崎元さんについて少し書いておく。

私が山崎さんの存在を知ったのは、2000年ごろ村上龍のメルマガでだった。端的かつ明快な表現で日本経済の問題点を語る山崎さんの文章を読んで、世の中には頭のいい人がいるもんだなあと感心したのを覚えている。

ベーシックインカムとか持ち家賃貸論争とかいろいろなことを語られていたが、一番の功績はインデックスファンドを普及させたことだと思われる。

山崎さんはもともとガチのファンドマネージャーであり、こんな本も残しておられる。

専門的な内容だったのであまり理解できなかったが、ファンドマネージャーはベンチマークと0.01%単位で勝負しており、だからアクティブファンドの2%とか3%とかいう信託報酬は論外であることがよくわかった。

いちばん有名な著作は、個人投資家でインデックスファンドブロガーである水瀬ケンイチさんとの共著だろうか。



山崎さんは食道癌で亡くなれた。それに関して、近藤誠のがんもどき理論に幻惑されて、内視鏡検査を忌避していたことを残念がる声が多数聞かれた。私も残念に思う。

しかしそのことを記したご自身のnoteを読んで、やはり山崎さんは頭の良い人だったのだと納得した。

(2)癌には、転移して害をなすような基本的に治らない「本物の癌」と、転移せずに治療で治せる「癌もどき」とがあり、前者は早期発見しても治らないし、後者は症状が出てから対処しても間に合う。本物の癌が早期発見で治らないという理由は、転移の細胞分裂のスピードを考えると、原発病巣を発見して治療した段階では、まだ見えないものの既に転移が行われていると考えざるを得ないからだ。(中略)
近藤氏の考えが正しいのか否かは、私の中では、今も結論が出ていない。特に(2)の部分に関しては、医師の友人達なども含めて、論理的に有効だと思える反論を聞いたことがない。多くの医師達は、近藤氏に対して、「一部の事例を一般化してセンセーショナルに伝えて、患者の利益を損なっているのではないか」等の批判を浴びせるのだが、「癌に、本物の癌と、癌もどきがあるとした場合にどうなのか」について納得の行く説明をしてくれたことがない。そして、直ぐには見分けられないが、「たちの悪い癌」と「そうでもない癌」があることに関してはリアリティーがある。

まともにものを考える人間ならこういう思考過程になるのが自然と私には思われる。

なおこれを書いている私は、食道癌で医学博士を取得し、日本食道学会会員である外科医だ。よって山崎さんのようにハードリカーを嗜む方が、上部消化管内視鏡検査を忌避することはけっして推奨しない

それでも山崎さんの行動を理解できると考える理由を以下に述べる。

ここから先は

2,395字
この記事のみ ¥ 250

サポートは執筆活動に使わせていただきます。