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6. 勝てるコースから勝負する編

今日は、悲しいニュースが、入ってきました。
ボートレースは危険と隣り合わせとはいえ、やはりショックです。
ご冥福をお祈りいたします。
※※※

時は、令和となって初めての年末を迎えていた。
2019年12月21日土曜の朝、太郎はいつも通り目を覚ました。「今年もいよいよこの日がきたかあ」とつぶやいた。

年末は有馬記念を始め、国営、公営ギャンブルはその年を締めくくる大きなレースが続く。
ボートレースは、賞金王決定戦「グランプリ」が行われる。グランプリは、その年の賞金獲得上位18名で行われる優勝賞金1億円の最高峰のSGだ。また、同時に19位以下の上位者でグランプリシリーズも開催される2部並行開催となっている。
その5日目は、グランプリシリーズの準優勝戦が8R、9R、10R、グランプリのトライアル最終戦が11R、12Rに組まれている。ここで残った6名が翌日のそれぞれの優勝戦に進む事となる。したがってレースもかなり熱くなる。太郎は、この日が一番好きだ。毎年この日は、太郎にとって一番熱い日となっている。
太郎は、改めて出走表を眺める。ここまでは、勝ったり負けたりでトントンくらいできた。ここで勝ちたいと朝から真剣に考える。「松井さんは動くのかな?誰もいれてくれないかなあ…」

ボートレースは、インが強い。ピットから出て、スタート位置につくま待機行動という時間があって、ピットのコースは決められているが、スタートはどこからしてもよい。その為、6コースのピットの選手が強引にインを獲りに来る事もある。当然インのピットの選手はインを奪らせまいとする。そんな駆け引きがスタートまでに行われる。
スタートがどんな体形になるかなど、考えているとすぐに時間がたつ。
この年のグランプリも住之江だ。ナイターなので昼すぎからレースが始まる。太郎は万全の準備のために、午前中に買い物に出かけた。

この一番熱い日から翌日の優勝戦にかけては、太郎は飯を作るのも面倒なので、大体おでんにする。毎年の恒例行事になりつつある。季節的にもちょうど良く、深めのホットプレートで2日間、具を継ぎ足しながら、焼酎を飲みながら二日間を過ごす。一般的にはかなりダメ人間な生活だ。

太郎は、この日もネットでLIVEをみながら昼からおでん、焼酎を楽しんでいた。いよいよグランプリシリーズの準優勝戦がはじまる。
8R ⑤松井さんがゴリゴリ動く③西山さんが抵抗し①③⑤②/⑥④の並び。結果は①西村さんの逃げ
9R 枠なり3対3。①②③/④⑤⑥イン①木下さんの逃げ
10R ここも枠なり3対3。①②③/④⑤⑥。横一線のスタートで、またイン逃げかあと太郎が思った瞬間、⑤馬場さんの高速捲り差しが入った!太郎は万舟を仕留めた。
「これでトライアルも勝負できる!」
11R ここも枠なりだが、⑤に峰さんがいる。しかもエース機だ。10Rの再現を想像していたが、1マークで接触、転覆…太郎の舟券は紙屑となった。実際は悪魔の機械の中で数字が減るだけだが。
12R ②池田さんがピット離れで遅れる。⑥菊地さんの前付け。①⑥③②/④⑤。4号艇石野さんは5コースカドを選択。伸び強めの調整をしているので勝てるコースは内側のコースより外になってもカドと決めていたようだ。結果は見事な締め捲り。太郎の悪魔の機械の数字も一桁あがった。

太郎は、このレースをよく覚えている。ボロ儲けしたからではない。普通は、ひとつでも有利な内のコースを守りたいと思うが、石野さんの有利な内にこだわらず、勝てるコースから行った判断と覚悟をもった実行力が脳に刻まれている。

太郎は、外から捲る選手が好きだ。昔は阿波さん、今は、菅さん、藤山さん、ひかるさん、平尾さんも…
インが有利とわかっていても外からでも気にしない、むしろ外からの方が破壊力が増す、そんな選手が好きだ。
最近では、この伸びる選手の外で、展開をもらおうとする選手もいる。
要は、自分のモーター、腕、展開予想を総合して勝てるコースからいくというのは、プロのアスリートとして当然なのだろう。

太郎は、どんな仕事においても自分の持っているものが最大限活かされるようにはどうするかを考えるようになった。

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ぼちぼち太郎も成長したので、次週以降は不定期に反面教師コラム等をあげれたらあげます。


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