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4. ボートレースはやめられない編

太郎は喫煙所でタバコを吸っている。手にはスマホ。悪魔の機械だ。ボートレースは全国24場どこかで365日やっている。そしてその全てをこの悪魔の機械から買えるのだ。
余談になるが、iPhoneの画面は24個のアイコンを置ける。太郎のiPhoneのひとつの画面は、ピッタリ全国の競艇場のアイコンが配置されている。かのスティーブジョブズも実はボートやっていたのかもしれないと太郎は思う。
しかし、時間さえあればすぐボートレースをやってしまう。なぜなんだろう?
太郎は、競馬や競輪、オートよりも中毒性が高いと感じている。

とある日、会社の連中と飲み会があった。太郎も後輩の奈緒も出席していた。しかし、今日は蒲郡でSGの予選最終日をやっているのだ。ナイターなのでちょうど飲み会中もレースをやっている状況だ。
10R 19:40発走
11R 20:10発走
12R 20:40発走
10分前にアラームをセットする。
乾杯して、しばし歓談する。
ブルル、ブルル…胸ポケットでスマホが鳴る。太郎は話しながらスマホを取り出した。ちらっと後輩の奈緒を見る。奈緒も何やらスマホをいじっている。
10Rの展示タイム、オリジナル展示タイムをみる。慣れた手つきで、舟券を買う。そして、また歓談に加わる。
しばらくすると、またスマホが震える。10Rのリプレイを見る。アウトからの大まくりを期待したが、3コースの選手に引っかかってしまった。外れだ。あともうひと伸びなんだけどなあ…次や次や。11Rの展示タイムをみる。舟券を買う。歓談に戻る。
この繰り返しだ。
ボートレースに興味のある人は少ない。これが競馬なら皆で見ようとかになりそうだが、ボートレースはそうはならない。
後輩の奈緒がこそっとVサインを送ってきた。当たったのか…相変わらずよく当てる子だ。
このこそっとしたマイナー感も良いのかもしれない。
奈緒が、ボートレースを始めた頃、ボートレースは沼だと伝えた。太郎なりの理由は以下の3つだ。

まず、いつでもどこでもできる事だ。
他の公営競技もネットでできるが、ユーザーインターフェースはボートレースが一番使いやすいと思う(これは太郎個人の感想だが)。

次に、予想がしやすい事だ。
公営競技の中でレースに出走する数が一番少ないのはボートレースだ。ボートレースは6艇でレースをする。3連単でも120通りだ。そしてインが強いのが基本となる。
ボートレースは見れば見るほど色々悩んで予想は難しくなるが、基本的にはインが強いので初心者でも予想はしやすいと思う。
また、6艇なので展開も考えやすい。競馬のように10何頭もでていると、全頭の展開を考える事はなかなかできないが、6艇だと全艇の予想というか想像ができる。
ちょっとした時間でも1.2着が固まったら3着を流しても4点だ。すぐ買える。

レース結果については大体惜しい事だ。
6艇から3艇を選んだ組み合わせなのでどこかが、かするのは当たり前だ。
「3着は流さなあかんかったな。」「展開は読んでいたのに買い方が悪かったな」とかなんか惜しい。惜しいから「次こそは!」となってしまう。やめられない。
そして、たまに飛び出す万舟券。アドレナリンが噴出してしまう。

これらが太郎を沼にはめていく。
奈緒も既に片足突っ込んでいる感じだろう。

太郎は、昼の客も自分の沼にはめられないか考えていた。
・いつでもなんでも相談しやすい関係
・基本的は考えはしっかりしている事
・たまに出す飛び道具
といったところができればはまるのではと思う。
太郎は、もちろんわかっているけど、なかなかできていなかった。
いつでも相談されると、たまには自分で考えろよと言ってしまう。
太郎インターフェースは、お客様からみると、きっと使いにくいのだろうなと思った。
飛び道具もだしすぎなのかもしれない。
最初は一緒にやってくれていると思っていたのに、急に牙をむくような感じだった気かする。どちらかというと競輪タイプだなと思った。
今まで、自分にのめり込んでくれた客がいなかったのもしょうがないのかと反省した。
太郎はお客様を惹きつけるコツを自分の中毒具合から学んだ。できるかどうかは別として。

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