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1. 自腹で飲もう編

太郎は、今夜も呑んでいる。キャバクラはあまり行かず、クラブ、ラウンジ、スナックが主な店だ。
若い頃から「呑む、打つ、買う」をやらなければ男じゃないと言い聞かせて、借金だらけになっている。それでも呑みに行く。そんなダメ人間な自分が好きなのだろう。
太郎はホステスから色んな事を学んだ。太郎の今の昼のポジションがあるのは幾多のホステスのおかげと言っても過言ではないだろう。
まず覚えたのはサービス業のなんたるかだ。
入社2年目の太郎は、東京配属から知り合いもいない名古屋に転勤になった。若さに任せて、日が変わるか変わらないかくらいまで仕事をしていた。

「今日もこんな時間かあ。一杯呑んで帰るかあ。」太郎は店を探した。若い太郎は一人で飲める店を探した。今のように"お一人様"なんて言葉はなく、一人で呑みにいくとすると、バーか小料理屋か。バーという柄やないし、小料理屋はもう閉まっている。そもそも自分みたいな若造にはまだ早いと思っている。ふらふら歩いているとスナックビルが目に入った。太郎の足は自然とそこに向いた。カランカラン。今はもう見かけなくなったが、昔はドアをあけたら鈴がなる仕掛け。
シーバス12年で8,000円かあ。太郎はボトルを入れて、ダラダラ呑んだ。隣についたホステスも色々な話題を持っている。なかなか良い店だな。太郎は満足して帰った。
1週間後、太郎は、また新しい店を開拓していた。ここはシーバス12年15,000円かあ。まあ、内装も凝ってるし、しょうがないか。女の子がつく。名前聞いて、歳聞いて…いつもの感じ。んー、8,000円の店の方が楽しかったな。
またまた1週間後、また、新しい店に入った。シーバス12年か20,000円かあ。女の子がつく。心地よい会話が続く。もうこんな時間かあ。めちゃめちゃ楽しかった。これで20,000円は安いな。
同じ酒で違う値段、違う満足感。サービス業とはこれなんだなと太郎は思った。
10,000円でも高いと思う事あるし、20,000円でも安いと感じることがある。
太郎は昼の仕事も一緒やなと思った。いかに付加価値をつけられるか。期待値以上の働きをするか。常に考えるようになった。若い頃はがむしゃらに頑張った。ある程度歳を重ねると、お客様の期待値をコントロールする事を覚えた。
最近の、若者は飲みに行く人が減っていると聞く。是非、自腹で飲みに行って欲しい。まずは相場感を、そして、サービスの違いと値段の違い、満足度の違いを肌で感じて欲しいものだ。
太郎はサービス業の本質をホステスから学んだ。


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