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9. 媚びを売る編

太郎は、久しぶりにキャバクラに行った。
久しぶりに舞がついた。近況の確認からたわいもない会話が流れる。相変わらず相槌だけはする。舞はいわゆるYESマンだ。太郎の言う事には基本的に賛同する。太郎が犬が好き言うと「舞もー」だし、違う日に猫の方がええよね言うと「うんうん」だ。太郎との過去の会話はほぼ覚えていない…流石にここまで極端ではないが…いわゆる客に媚びを売るタイプだ。
もちろん仕事だから媚びを売るのは必要で、接客業であれば皆、媚びを売っている。当たり前だ。
しかしながら、戒めも込めた「客に媚び売るやつやな」と言われるキャバ嬢やホステスと、「話してるとおもろいわ」言われるキャバ嬢やホステスがいるのはなぜだろうか。
媚びを売る事自体は悪くないし、皆やっている。太郎も昼の仕事で大なり小なり売っている。
そこに違いがでるのは、何かが違うのだろう。
太郎は3つ思った。
まず、虚偽とわかるかどうか。媚びを売っている直接の相手に虚偽だとバレるのはもちろん、周りにバレるのも。媚びを売る以上、基本は嘘であることには違いないが、嘘とバレない、もしくは相手がのれる嘘ならokかと。
次に、自分を捨てる媚び。自分の考えやプライドを捨ててまでの媚び。自分を捨ててまでの媚びは見ている方も痛々しい。たまに相手にすぐ合わせるどM体質のホステスもいるがw
3つといったがこの2つが重要かな。
あえてひとつつけくわえるとしたら目的がどこにあるのか。短期的に何かして欲しいのか、長期的か。今日、泡を入れて欲しい時の媚びか、コンスタントに来て欲しい時の媚びか。短期的なのが悪いとまでは言わないが、客からみたらちょっと違うのではと、思う瞬間はあるなと太郎は思った。
太郎は昼の仕事での媚びの売り方も今一度整理できた。
活かせる自信はないが…

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