見出し画像

「結局そういうこと...」

「おい!新人!お前が行ってこいよ!(笑)」
「ボケっとしてんじゃねーよ!(笑)」

先日、臨店に入った店で起こったできごと
2年目の〝新人営業〟が起こしたステキなお話。

閉店まぎわ、1人のお客様がご来店された。

性別は男性、年齢は60代半ばから後半と
いったところだろうか....
また厳しく冷え込んだ日の夕方のこと

そのお客様の姿を見て
2人の先輩が文頭での
言葉を叫んだ....

なぜか?

自転車(カゴが落ちかけてるくらいの)で
ご来店されたからだった。

〝その姿〟を見て先輩Aと先輩Bが
そう叫んでいた。
しかもニヤニヤしながら...
まるで...
(ここから先の発言はご想像にお任せします)

「はい!ありがとうございます!」
と 返事をして新人営業はすぐさま駆け寄った。

確かにチェーンはこぐたびに
音が鳴るくらいサビサビ
サドルはビリビリの自転車だった。

手には上からビニールを被せた
デパートの紙袋をぶら下げていた。
それを大事そうに両手で抱え込みながら
持ったまま会話が始まった。

新「ものすごくモノを大事に
  されていらっしゃるんですね。」
客「そうなんだよなぁ...
  こんなんでもずっと生活の一部として
  助けてもらってるからねぇ。」
新「ですよね、すごく色々な思い出が
  詰まってるのが伝わります!」
客「まだ使えるのに古くなったら買い換える
  これが正解だとは限らないからなぁ。」
新「分かります!   
  自分も、モノもちいい方なので
  すごく共感できます!」
客「そっかぁ、わかってもらえて嬉しいよ。
  ところで、君はなんで車の話しないんだ?」
新「あ、すみません。
  この時期の夕方の商談は営業が有利に
  なってしまうんです(笑)
  寒さで心理状態も冷静ではないのと
  特に1日ずっとクルマ屋さんを
  回ってきた方なら尚更...
  疲れてますし〝もうこれでいっか〟
  という投げやりな結論を出してしまう方が
  多いので...
  可能であれば昼間、明るいお時間帯で
  ご来店いただき再度お話させて頂く
  ことは可能でしょうか?」
客「あんちゃん、なんで自分が1日クルマ屋を
  回ってきたってわかるんだ?」 

新「手も真っ赤ですし、1日クルマ屋回って
  自転車だから、ろくに相手にされず
  色々と回るはめになって、
  たまたま帰りがけにあった当店にふらっと
  立ち寄った的な...
  こんな感じでしょうかね。
  直感です!違ったらお詫び申し上げます。」
客「その通りだよ(笑)
  すごいな、やっぱこれじゃわかるか(笑)
  そっかぁ、そこまで言うなら
  明日の朝イチまた来るわ!
  ゆっくり話させてくれや!
  ....あ、ちょっとトイレ貸してくれるか?」
新「はい!どうぞ。奥になります。」

と同時に
私は彼に〝目くばせ〟をした。
(頼む!伝わってくれ!!)と思いながら。

幸い、彼には伝わったらしく急いで行動に移した。

そしてお客様は トイレから出てきて自転車に乗り
出口に向かった すると

5秒ほど止まり…なにやらもの言いたげに…
そのまま、そして振り返らずに出ていった。

見送りが終わりショールームにもどってくると
直後に先輩Aと先輩Bがドヤ顔でよってきてこう
言い放った...

先輩A
「ただの冷やかしだっただろ?
 時間かけすぎなんだよ!あんなんすぐ帰せよ」
先輩B
「トイレ借りに来ただけのやつなんかと
 世間話すんなよ、お前ひまなのか(笑)」

........。

新「はい。時間かかってしまいすみませんでした!
  でも、ありがとうございました!」 

(翌朝…)

約束どおりそのお客様は〝朝一番〟
でご来店された。

もちろん昨日の自転車、かみ袋とともに
(ほーら、やっぱきた。ここまでは予想どおり)

新人営業の彼も、かけ足でお出迎え…
何やら笑顔で話している様子に

先輩AとBがザワつきだす…

ショールームにご案内して、さぁ商談!!
と思いきや…
席につくなりお客様から... 

客「もう、○○さんのおすすめの車でいいから
  オプションも一般的なものをつけて
  見積もり出してください。」
新「え…?はい!かしこまりました!
  いま、お作りして参ります!」

見積もりを提示して
少しの説明と談笑...商談はそのまます進み
すんなり決まった。

すると…
お客様が嬉しそうな顔をして彼に話し出した

客「なんで、もう一度ここに来ようと
  思ったか分かりますか?」
新「いえ、いままさに私も聞こうと
  思っておりました。
  昨日遅かったのでしっかり車を
  見れなかったからでしょうか?」
客「まあ、それもあるんだけど...
  あなただけだったからですよ。
  自転車のことを褒めてくれたのが。
  そして昨日....
  恐らくトイレに行ってる時だよね?
  ハズれかけてたカゴも
  サビれかけてるチェーンの補修も
  してくれたでしょ?
  帰りにこぎ出して音がしなかった時に
  すぐに気づいたよ。」
新「はい!
  余計なお世話だとは思ったのですが
  手を加えればまだまだ大事に
  ご使用いただけますので...
  余計なことをすみませんでした!」
客「その気配りと、目配りに感動した。
  この人なら自分の車も大事に
  してくれるんだろうなっておもえたから
  だから車を決める前に、あなたに決めた」

(帰り、5秒くらい止まったのはそういうことだったのか…) 

客「あなたはきっとあんな時間に
  しかも自転車で来たお客さんに 
  あてがわれた新人くんでしょ?
  私も若い時すこし営業をしてたから
  それくらいはわかるよ。」
新「いえいえ、そんなことはございません!
  自分はまだまだ未熟ものですが
  人の役に立ちたくて営業になったので
  大変貴重な経験をさせて頂きました!」

一部抜粋での会話にはなりますが...

商談の終わり
ご成約の御礼のあいさつに伺った際に
こう言われた。

客「すごく気持ちのいい買い物が出来ました。
  ありがとう!」

すると、昨日から大事に抱えていた〝あの紙袋〟
を私に差しだし、こう伝えた...

客「数えてください。足りてると思います。」と。
(やはり〝あの紙袋〟には現金が…)

最近ではあまり見ない光景だが
昔は確かにこういう光景はあった。
足りるどころか
あと二台は購入出来るほどの余裕を残して
お支払い頂き商談は終了した。

そのあと、少し話をさせて頂いた。
どうやら昨日
帰宅後に〝何年か〟ぶりに 奥様と〝笑顔〟
で会話ができたという …

そう〝彼〟のおかげで。

すごくいい青年と出会ったこと
自転車をもっと大切にしようと思えたこと
昔ばなしを含めていろんな会話をしたと
〝満面の笑み〟を浮かべて話してくれた。

実は今回の〝車の購入〟は
病気で自由に生活が出来なくなった
奥様を気遣っての買い物だった。

今まで仕事ばかりでどこにも
連れて行ってやれなかったから
車をもって恩返しをしたいと…

彼に聴かれたという…
「今の生活に車が加わったら何を一番したいですか?」と。

そんなことどこの店も聞かなかった。
そこまでの話すら出なかった。
彼のおかげで、モヤモヤがなくなり気持ちのいい買い物ができた。
と 何度も頭を下げて御礼を繰り返す姿を見て…

私は これなんだよなぁ…

と改めて〝理想のセールス〟
というものを学ばせてもらった気分になった。

彼は〝車(モノ)〟ではなく〝奥様との未来(コト)〟
を売ったんだ(買っていただいた)

そして理想のクロージング要らずの商談をした
〝また来たい〟と思わせる
〝自転車への気配り(コト)〟を売りながら
お客様の〝期待〟に応えて魅せた。

(タイトルコールどおり)
結局そういうこと...

営業がお客様を選ぶ?
いつからそんな時代に?
お客様にも選ぶ権利はある。

人として〝当たり前であれ〟
普通のコトを普通に。
寒い中、一日動いて疲れてるからだで
暖房も効かない自転車でご来店頂いたこと
数多くあるお店の中から
たまたま当社に入って来てくれたこと

そして何より貴重な時間を頂戴したこと
全てのできごとに感謝をもって接したから
〝感謝〟が返ってきた

結局そういことなんだよな
ありがとう。

そして、どうやらこの素敵な商談(エピソード)
には続きがありそうなのでまた機会があれば
記事にしたいと思います。

最後まで読んでいただき 有り難うございました。

お気軽にフォローしてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?