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アーユルヴェーダという生命の科学 ──「サバイバル時代の健康術」を読んで

高城剛さんの著書「サバイバル時代の健康術 ~アーユルヴェーダで頭と体のバランスを整える」は、インドやスリランカで長年実践されてきた伝統医学・アーユルヴェーダの奥深い世界に読者を誘う一冊です。

古代から連綿と受け継がれてきたアーユルヴェーダの叡智は、現代人の抱える様々な不調や病を根本から改善する力を秘めています。本書は、著者自身のアーユルヴェーダ体験を軸に、その思想と実践法を丁寧に解き明かしていきます。

体質を知り、自分本来の姿に戻る

アーユルヴェーダでは、人の体質を「ドーシャ」という3つのタイプに分類します。ヴァータ、ピッタ、カパの優劣バランスによって、心身の特徴や傾向が決まるのだそう。本書には、自分のドーシャタイプを見極めるためのチェックリストも掲載されており、読者は楽しみながら体質理解を深められます。

アーユルヴェーダでは、人間の体質はこのドーシャによってタイプ分けできると考えられている。病を退ける身体や心に至るには、一人ひとりの体質を理解し、それに合った最良の状態へと近づけなければいけない、というのがアーユルヴェーダの教えだと説明したが、この体質を見極める上で活用されているのがドーシャである。

著者いわく、生まれながらに備わった体質のバランスを維持することが健康の秘訣。日々の生活習慣や環境の影響でドーシャバランスが崩れると、様々な不調や病気の芽が生じるのだとか。アーユルヴェーダの目的は、一人一人が本来持っている自然治癒力を最大限に引き出し、心身のバランスを整えることにあります。

食事と暮らしを見直す

不調の原因の多くは、自分の体質に合わない食事や生活にあるようです。

間違った食事法は不必要なドーシャもアーマも増やしてしまい、病気に向かって一直線に突き進んでしまうということである。

体内に毒素が溜まると自然治癒力は低下の一途を辿ります。本書では、ドーシャを整えるための食事法が体質別に細かく解説されています。また、季節や住環境、日々の過ごし方によってもドーシャバランスは左右されるため、ライフスタイル全般を見つめ直すことが大切だと教えてくれます。

アーユルヴェーダの考え方に基づいて暮らしを改善することで、生命エネルギーに満ちた健やかな状態を目指せるのです。

スリランカの英知に触れる

著者は、本場のアーユルヴェーダを体感すべくスリランカへ幾度も通っています。古くから伝承の地として知られるスリランカには、数多くのアーユルヴェーダ施設があり、滞在型のホテルも充実しているそうです。心身を癒すハーブたっぷりの料理に舌鼓を打ち、験量豊かな医師の施術を受ける。自然と一体になって過ごすリトリート体験は、日本の日常からはかけ離れた別世界のようです。

スリランカ政府もアーユルヴェーダを国の重要資源と位置付け、医師の育成や研究開発に力を入れているのだとか。現地の人々にとって、アーユルヴェーダは暮らしに溶け込んだ身近な存在なのでしょう。本書のスリランカ取材録からは、アーユルヴェーダへの敬意と愛情があふれ出ています。

人生を楽しむための健康法

読後、アーユルヴェーダとは単なる不調改善のためのものではなく、人生をより豊かに生きるための思想なのだと実感しました。心身の健康があってこそ、私たちは人生の醍醐味を味わえる。だからこそ、体調管理を自分の手に取り戻し、よりよい人生を切り拓いていくことが大切なのだと。

アーユルヴェーダは「生命の医学」であり、そこからもたらされた技術や知恵は国や文化、人種といった違いに左右されることはない。(...) その意味で、アーユルヴェーダは世界中のどこにでも根を下ろすことが可能なユニバーサルサイエンスである。

本書を読み進めるうちに、アーユルヴェーダの哲学に心が洗われ、生き方そのものを見つめ直したくなりました。時に専門用語が出てきて難解に感じられる箇所もありますが、丁寧な解説と実体験に基づいた言葉で、理解の糸口をつかんでくれます。

人生100年時代を健やかに生きるためのヒントが本書には詰まっています。日本でもゆっくりとアーユルヴェーダの波が訪れ始めていますが、その先駆けとなる一冊といえるでしょう。ぜひ多くの方に手に取っていただき、アーユルヴェーダの叡智を日々の暮らしに活かしてほしいと思います。

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