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筋力トレーニングの科学と実践 ~効果的なからだづくりのために~

筋力トレーニングは、一般の人からアスリートまで、老若男女を問わず多くの人に取り組まれるようになりました。健康づくりやダイエット、競技力向上など、その目的も多岐にわたります。しかし、効果的なトレーニングを行うには、正しい知識と実践方法が不可欠です。

本書『筋力トレーニング』は、スポーツ科学の研究者として長年この分野に取り組んできた著者が、最新の研究知見をもとに、筋力トレーニングの基礎から実践までを網羅的に解説した一冊です。単なるメニューの紹介にとどまらず、筋肉の構造や働き、トレーニングのメカニズムといった基礎理論から、効果的なプログラムの作成法、フォームのポイントまで、トレーニングに必要な情報がこの1冊に凝縮されています。

基礎理論から学ぶ、筋力トレーニングの科学

本書の大きな特徴は、筋力トレーニングを科学的な観点から丁寧に解説している点です。著者は、筋肉の解剖学的構造や生理学的特性といった基礎知識を、わかりやすいイラストや図表を交えて説明。筋力やパワーを高めるメカニズムについても、最新の研究データを引用しながら論理的に解き明かしていきます。

例えば、「筋力トレーニングで筋肥大が起こるメカニズム」の章では、筋タンパク質の合成と分解のバランスが筋肥大の鍵を握ることや、それを促進する因子として「機械的張力」「代謝ストレス」「筋損傷」の3つが重要だと指摘。そのうえで、具体的にどのようなトレーニング方法がそれぞれの因子を高められるのかを解説しています。このように本書は、各トレーニング方法の「なぜ」に踏み込むことで、読者自身が原理原則を理解しながら取り組めるよう工夫されているのです。

プログラム作成から実技指導まで、即実践できる内容が満載

本書のもうひとつの魅力は、理論だけでなく実践面でも有用な情報が豊富なことです。特に「プログラムの作成法」の章は秀逸で、初心者からアスリートまで、対象者の特性に合わせたプログラムの組み立て方を手順を追って解説。エクササイズ選択の基準やセット数・反復回数の設定など、効果的なプログラムを作るためのエッセンスが余すところなく説明されています。

また、本書には200点以上のカラー写真が収められており、主要なエクササイズの正しいフォームとともに、間違いやすいフォームとその修正法も丁寧に解説。「言葉だけではイメージしにくいが、写真があると一目瞭然」というのが私の率直な感想です。

時代を先取る斬新な発想 ~ロコモ予防など新たな可能性にも言及~

本書のさらなる特長は、「ロコモティブシンドローム」など、近年注目を集めている新たな概念についても積極的に言及している点です。高齢化社会を迎え、日常生活に支障をきたすような運動器の障害を予防することの重要性は増すばかり。本書は、筋力トレーニングがその有力な対策になると指摘し、高齢者向けのプログラム例なども提示しています。

また、心の健康という観点からも筋トレの意義を説いている点も新鮮です。「自己効力感の向上」や「ストレス発散」など、身体面だけでなく精神面でのメリットにも目を向けることで、新たな価値を創出しているのです。

運動の科学と実践の懸け橋に ~最新の知見を誰もが活用できるように~

以上、本書『筋力トレーニング』の概要を紹介してきました。著者の有賀誠司氏は、第一線の研究者であると同時に、コーチとしてのキャリアも長く、まさに「科学と実践の懸け橋」を体現する人物。本書には、そんな著者ならではの知見と経験が余すところなく注ぎ込まれています。

私自身、本書を読むまでは、筋トレというとメニューをこなすだけの単調なイメージを抱いていました。しかし、その背景にある科学的根拠を知り、自分の目的に合わせて的確なプログラムを組めるようになると、トレーニングが格段に面白くなるのです。本書は、筋トレをする全ての人にとって、まさに「教科書」とも言うべき1冊だと感じました。

最新の研究成果をわかりやすく解説し、それを実践につなげるための創意工夫。本書はそんな「サイエンスの力で、もっと自由に、もっと楽しく運動する」ためのヒントに満ちています。筋トレを始めたい人はもちろん、より効果的なトレーニングを求める上級者にもぜひ一読をおすすめしたい1冊です。


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