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レティシア書房店長日誌

松永弾正「本屋の周辺 II」(ミニプレス990円)

 松永さんの文庫サイズ「本屋の周辺」(990円)は、本屋好きの人ってやっぱり沢山いるんだと思うほど、よく売れた本でした。第1号を出されて店に来られた際、次号も出すよとおっしゃっていました。いつかな〜と期待していたら、出ました!今回も京都の古本市の帰りにご来店、本屋巡りを楽しそうにお話しされてました。

 「旅をして、本屋に赴き、話を聞く。資料を探り、事実を整理し、書き残す。本屋の歴史を繋げていく。『そこに本屋があった記憶』を留める本屋訪問記。シリーズ二冊目である本書は、札幌、山形、長野、松本、名古屋、京都、鹿児島に、松山・大街道にかつてあった本屋の来歴を調査した書き下ろしを加えた、全八店舗を収録。」
 そう、今回は京都の書店も登場です。寺町御池を南に入ったところにある新刊&古書店「其中堂」。映画館に行くときなど、いつも前を通り過ぎるので、その堂々たる店構えは目にしていました。仏教関係の書籍がメインのお店です。建物は昭和5年のもの。もともと京都の店だと思っていたのですが、名古屋に本店があったことを初めて知りました。松永さんは資料を駆使しつつ、お店の歴史を深掘りしていきます。仏教関係は関係ないや、と思わずに一読されることを京都の本屋好きに強くお勧めします。
 閉店したんだ!と驚いたのは、名古屋市内にあった「ちくさ正文館」です。ずっと前、個人的に付き合いのあったジャズ喫茶がこの書店のそばにあったので、二度ほど行った記憶があります。名古屋で質の高い人文書が揃っているお店として有名でした。残念ながら当時の私は、人文書って何?と言うぐらいの物知らずだったので、何も買えませんでした。けれども店の落ち着いた佇まいに、本屋さんってこういう所だと思いました。こちらは昭和36年創業。松永さんはやはり資料を駆使してここの歴史を描いていますが、堅苦しくない文章がいいですね。
 本書の最後に収録されている「大街道の古本屋 松菊堂書店」は、松山の古本屋で何気なく買った「愛媛県の市町村史」から、その発行元松菊堂に注目します。調べて行くと、この出版社が古本屋もやっていた事実に突き当たります。さぁ、ここからです、著者の本屋探索がスタートします。「愛媛県の市町村史」を購入した古書店、愛媛堂に出向き、松菊堂に関する情報を仕入れます。好きでなければできない探究心、行動力!楽しく最後まで読みました。本好き、本屋好き、地方の歴史好きの方、ぜひお読みください。

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