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読んだ本の感想

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卍丸的な読書感想文集
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記事一覧

パレスチナ文学 『とるに足りない細部』アダニーヤ・シブリー

 過酷な気温と土埃の中、燃料や何かの腐ったような臭い、汗、犬の吠える声、誰かの叫び声やす…

卍丸の本棚
3週間前
14

『近代日本における植民地主義とジェンタイル・シオニズム』──日本の植民地主義とイ…

はじめにかつて日本が帝国主義に基づく植民地主義を通じて、アジアの他国の文化や経済を抑圧…

卍丸の本棚
1か月前
6

『隷属への道』と『なぜガザなのか』の交差点

サラ・ロイの『なぜガザなのか:パレスチナの分断、孤立化、反開発』は、ガザ地区におけるイス…

卍丸の本棚
1か月前
6

ページと瓦礫のあいだで

ポール・オースターが死んだ。 そのようなニュースを見たとき、僕は偶然にも『ムーン・パレス…

卍丸の本棚
5か月前
13

『非-知』と現代社会の危機

はじめにジョルジョ・バタイユが提唱する「非-知」の概念は、合理性や理性主義に対するラディ…

卍丸の本棚
6か月前
12

運命の彼方へ ──ミラン・クンデラとカール・ヤスパースに寄せて

はじめに ヤスパース──懐かしくも親しみ深い名前が飛び込んできた。須藤輝彦さんの『たま…

卍丸の本棚
7か月前
16

震災から13年──読書、知ること、考えること

『日米地位協定入門』前泊博盛他著、『戦後史の正体』孫崎享著(いずれも創元社)を再読した。 講和条約がアメなら日米安保と地位協定はムチだろう。 戦後、地位協定を結んだ国は、ドイツ、イタリア、韓国、イラク戦争後のイラクなどあるが、日本以外は、主権国家として、自国の憲法や法のもとに、協定があり、改定してきた。 しかしながら、日本だけが、 日米安保、日米地位協定>日本国憲法という図式があり、日本がいまだに植民地であることを知らないのは日本人だけかもしれない。 『日米地位協定入門』前

ふたつのエクリチュールの差異──紙に書かれたものと虚無に書かれたものの暴力性

 僕の読書スタイルは書写になりつつある。詩人、思想家や文豪の美しく洞察力にすぐれた文章、…

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絶対的空間の欠如と回復──非暴力の企て

妻と週末に庭の柿をいくつか収穫した。キッチンに無造作に置かれた柿と同化するかのような西日…

9

『恋する虜』 ジャン・ジュネ

 デモクラシーとは、他民族排斥に立脚し、自民族中心的な平等を謳うものかもしれない。 宗教…

19

鏡、レダと白鳥、ローマ悲歌

 朝は少し曇っており、太陽が顔を隠すと少し肌寒い。紺色の作業着も長袖のものを紺色のシャツ…

15

『土神と狐』 宮沢賢治

はじめに 僕の拙い文章を、いつも読んでくださるSさんに、『土神と狐』宮沢賢治 著 をおし…

12

憲法について

非常に刺激的で暑い日だった。 憲法と聞いて右左、じぶんには関係ない、と感じるひともいるか…

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至高の感性──『ヒロシマの人々の物語』

もうすぐ、78回目の終戦記念日がやってくる。 長崎──原爆投下地として最後の土地であることの難しさをここ最近の時事問題から核の抑止力などとともに考えさせられる。 2023年5月に開催されたG7広島サミットで各国の首脳たちは即時停戦を呼びかけることを強調しなかった。また、日本は唯一の市民が原爆投下犠牲になった国であるにも関わらず、核兵器廃絶を強く訴えてもいなかったように思えてならなかった。 そのような中で、ここ最近、身内で『ヒロシマの人々の物語』著者ジョルジュ・バタイユ