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「雑誌が売れる社会」にしよう

道内の書店数はここ10年で765から563まで減ったそうです。

ただ、この記事に出てくる「出版科学研究所」の「ネットから無料で情報を得るのが一般化」したために「雑誌の売り上げが大きく減少」したのが原因という見解はどうなのでしょう。

業界の現状分析としては正しい。でも現場の人間からすると首肯し難い。左脳が理解しても右脳が納得しない。

売れ数が落ちたのは事実です。長年担当をやっていたので、月々の数字で実感していました。横田増生「潜入ルポ アマゾン帝国の闇」にも、雑誌の売り上げはピーク時に比べて5割以上落ち込んだとあります(書籍の落ち込みは3割強とのこと)。

でもじゃあ毎月前年比を割っていたか、というと実はそうでもない。アンテナを張り、取次と連絡を取り、売れそうな号を事前に多めに指定する。もしくは初日の動きを見て、いけそうなものを版元品切れになる前に素早く注文する(なくなってからでは間に合いません。基本的に雑誌は重版しないので)。このふたつで対処していました。

たぶんガンガン売れていた頃よりも担当はずっと大変です。人手が減った分、レジや荷受けや検品、備品の発注など他の業務に費やす時間が増えています。しかも女性誌や芸能誌の予約に関しては、いまの方がはるかに多いのです。

個々の奮闘に触れず、ただ「雑誌の売り上げが落ちた」「だから本屋が減った」と全体的な傾向を唯一の事実として書かれると、書店員が無力な存在に思えてきます。

雑誌は本とは少し違います。いくらか肩の力を抜いてパラパラ捲れる。雑誌が売れるという事実は、その社会における「心と懐の余裕」を体現しているのではないでしょうか? 雑誌を読めるだけの精神的&時間的なゆとりがある、買えるだけの金銭的な余剰がある。それらの証明。

なので「雑誌を売るための方策」として「余裕ある働き方実現」「消費税ゼロ」を掲げます。ホントに。

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