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イチ書店員が9年ぶりに読みたい「青春小説の傑作」

なんと。

昨年6月にコーマック・マッカーシーが亡くなった際も思いましたが、なぜこの方にノーベル文学賞が与えられなかったのか。。。

私がオースターの本を初めて読んだのは2015年。↓です。

ひとりの若者が人生に絶望して街を彷徨い、やがて師となる存在に出会う。住み込みで働き、奇妙な暮らしを続けるなかで、彼は少しずつ成熟を遂げていく。青春小説の傑作です。

当時、まさに人生に絶望しかかっていました。長年勤めていた書店がなくなると決まっていたからです。

いい機会だし、失業手当をもらって少し休もうかなと考えていたのは事実。一方で正社員にだけ新たな職場を用意し、現場を支えてきた非正規雇用を全員切る会社のやり方に憤りも感じていました。こちらが受けるにせよ断るにせよ、せめて雇用を維持する意志があることぐらいは示すべきだろうと。

もっと腹が立ったのは、近隣にオープンした新店舗で働く新人たちを鍛える役目を我々に押しつけてきたこと。それも超繁忙期に。その店へ移るのは社員だけなのに。そもそもオープンをこちらの閉店後まで遅らせ、我々がスライドすれば新人を雇う必要などなかったのに。

そんなタイミングで「ムーン・パレス」を読み、自暴自棄になった主人公に己の魂を重ねた記憶があります。エフィングとの暮らしのなかで作家修業めいたこともしていたし。

読書を経て魂が救われたかどうかは、、、よく覚えていません。違う会社とはいえ、いまも書店員を続けていることが答えかもしれない。

好きな本は何度も読み返す派です。しかし本当の意味で心に深く刻み込まれた作品は、迂闊に再読できない。宝物みたいな前の印象を壊したくないから。

あれから9年。感謝を込めて「ムーン・パレス」を再び手に取ろうと決めました。

ご冥福をお祈りします。

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