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『DUNE デューン 砂の惑星』がスゴかったねという話

みなさん、こんにちは~!
2024年3月15日公開、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督映画「デューン 砂の惑星 PART2」、もう観られましたか?

PART1は、映像美のすばらしさ、迫力、スケール感……まさに現代の映像技術があってこそ実現できた映画という印象で、PART2の公開をいまかいまかと期待していました。
なので公開されてすぐのお店の休みの日に観にいきました!

どうやらちまたではIMAXで観なきゃダメという意見もあったようですね。私は普通のシアターで鑑賞しましたが、平日の昼間というのがあったとしてもかなり席がすいていて、まぁ…ゆっくり観れたというべきか……。個人的には普通のシアターでも十分に楽しめました。

貴重な香料が採掘できる砂の惑星デューン。ティモシー・シャラメ演じる主人公ポール・アトレイデスは、デューンの支配権をめぐるハルコンネン男爵との争いで家を滅ぼされ、命からがら身重の母親とともに砂漠を彷徨う。そして砂漠の民フレメルと出会い、ハルコンネン男爵への復讐に燃える…!

PART1から引き続き映像美の素晴らしさは言うまでもありません。
サンドワームを使ったダイナミックな砂漠の移動!
血湧き胸躍る激アツなアクションシーン!
ハルコンネン男爵の居城のグレートーンの無機質な威容はまさに圧巻でした!

父と家の復讐に燃える主人公のポール。
ポールを救世主と仰ぐ砂漠の民フレメン。
後継争いにもめるハルコンネン男爵家。
陰謀を企てる皇帝とその皇女。
そして得体の知れない女性だけの集団ベネ・ゲネリット……。
さまざまな人間の思惑が絡み合うのもドキドキハラハラ!

役者陣も本当に素晴らしい。
ティモシー・シャラメの美しさはもちろん、
ポールと恋仲に陥る砂漠の民チャミを演じるゼンデイヤの凛々しさ。
高慢で一筋縄ではいかない帝国の皇女イルーラン役のフローレンス・ピュー(ラストに出てくる衣装がまた既視感がなくて素晴らしい)。
そして、ポールの敵として立ちふさがるハルコンネン家の跡継ぎフェイド=ラウサを演じるオースティン・パトラーの酷薄でいかにも悪者という感じにもうずっとゾクゾクしっぱなし…!

PART1では、ただただ映像に圧倒されるばかりでしたが、ポールのハルコンネン家への復讐に向ける思いや、帝国、ベネ・ゲセリットなどの様々な錯綜する思惑、そしてポール対フェイド・ラウサの一騎打ちと胸アツの見どころも満載でした!

映画の予習復習に最適な原作に忠実なグラフィックノベル版

さてこの「デューン 砂の惑星」。
実はPART1を観た時点では、映像はすごいけど、ストーリーはちょっとついていけないところもあったのが事実……(私だけ…?!汗)。
もちろん主人公ポールと、彼の父を殺しアトレイデス家を滅ぼしたハルコンネン家との対立という、まぁよくあるシンプルなストーリーといえばそうなんですけど…! 

どうしてもSF作品では覚えきれないくらいたくさんの固有名詞が出てくるし、映像にただただ圧倒されている間に終わってしまったという印象も拭えなかったのですよ…。

そんなときにめちゃくちゃタイムリーに刊行されたのが『デューン 砂の惑星 グラフィックノベル版』

全3巻の予定で、2023年の年末に1巻が、映画公開の直前の2月に2巻が刊行されました。

「デューン 砂の惑星」の原作は、半世紀以上前の1965年に刊行されたフランク・ハーバートの小説。早川書房さんから全3巻で刊行されています。
(ちなみにこの「デューン」は『砂の惑星』からスタートし、『砂漠の救世主』『砂丘の子供たち』『砂漠の神皇帝』『砂漠の異端者』 『砂丘の大聖堂』と全6シリーズとなる長大な物語です……)

原作小説を読むのはちょっとハードルが高いけど、マンガなら…と思っている人は私だけじゃないはず…!

しかもこのグラフィックノベル版は、原作者の息子であり原作権利者のブライアン・ハーバートが総監修。
原作小説に忠実な公式コミカライズなんです!

ブライアン・ハーバートは、グラフィックノベル版の脚本を共同で執筆したケヴィン・J・アンダースンとともに「デューン 砂の惑星」の前日譚にあたる小説「デューンへの道」も手掛けています。

ちなみに『デューン 砂の惑星』のコミカライズは、今回邦訳されたバージョンの他に映画版のコミカライズも存在します(未邦訳)。

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の映画世界をマンガとして再現したものだそう。映画のコアなファン向けという感じでしょうか……。

さて、今回邦訳されたグラフィックノベル版に話しを戻して…!

グラフィックノベル版は全3巻。
アトレイデス家の滅亡を描く第1巻。
ポールと母レディ・ジェシカが砂漠の民に認められるまでを描く第2巻。
そして第3巻でハルコンネン家との対決を描いていくわけですが、これはまだオリジナルの英語版も2024年6月に発売予定なので、邦訳はもう少し後になりそうです。

これは個人的な体感ですが、グラフィックノベル版の2巻までで、映画PART2の前半4分の1くらいが語られるようなイメージ。
まさしくこれからPART2を観にいくよという方には予習復習に最適!

しかも映画では当たり前ですが原作から割愛された部分もあります。
なので、映画を観てからもう少し深堀したいという方にとっても最適な書になってます!
個人的にはポールの父上レト公爵の人となりや、母上レディ・ジェシカのフレメンの中でベネ・ゲネリットとして認められていく過程、両親のエピソードを興味深く読みました。
それから、続編へとつながっていくんだろうなと予想される生態学者カインズ博士やフレメンたちの悲願……。

映画もどうやら続編『砂漠の救世主』を描くPART3の制作が決定したようです!!

ポールの復讐劇はPART2でいったんの結末を迎えるわけですが、次にどのような展開が待ち受けているのか……。グラフィックノベル版を読んでいると期待がいや増しに膨らみます。

加えて『砂漠の救世主』のグラフィックノベル版も出るのだろうか……?
それもすごく楽しみですね。

海外マンガ好きで「デューン」と言えば……「ホドロフスキーのDUNE」!

さて「デューン砂の惑星」はこれまでにもデヴィッド・リンチによって映像化されていますが、そのさらに以前に頓挫した大企画がありました。

はい、以前ドゥニ・ヴィルヌーブ版のPART1が公開されるタイミングで動画も作ってました。

そう、SF好きはもちろん、海外マンガ好きにとっては語り忘れてはならないアレハンドロ・ホドロフスキーのデューンです!!

アレハンドロ・ホドロフスキー。海外マンガ、特にSFのバンド・デシネ(フランス語圏マンガ)好きであれば一度は聞いたことがあるバンド・デシネ脚本家でもあり、カルト映画監督でもあるキュートなおじいちゃんです!

その彼が、実はデヴィッド・リンチ版の前に「デューン」の映像化企画を立てていました。
しかもそのためにものすごい豪華キャストが集結していたのです!!

「この映画に携わる全ての人間は魂の戦士だ。最高の戦士を探す」と、ホドロフスキーによって集められたのは、スタッフにバンド・デシネのカリスマ作家メビウス、SF画家のクリス・フォス、『エイリアン』『トータル・リコール』の脚本で知られるダン・オバノン、画家、デザイナーのH・R・ギーガー、73年の『狂気』をはじめ現在まで絶大な人気を誇るサイケ/プログレの代表的バンド、ピンク・フロイド、キャストにシュルレアリスムの代表的作家サルバドール・ダリ。『市民ケーン』など映画監督としてのみならず俳優としても知られるオーソン・ウェルズ、ミック・ジャガーなど、様々なジャンルから非凡な才能を持つアーティストたち。

ホドロフスキーのDUNE公式ページより

すごくないですか? サルバドール・ダリなんてもう美術の授業で習うような人ですよ。そんな人を確か皇帝役か何かに起用しようとしてたんですよ!

しかも12時間に及ぶ上演時間を予定していたという超絶大作!

しかし残念ながらその企画はあまりにも壮大すぎて現実のものとはなりませんでした。
その経緯はドキュメンタリー映画「ホドロフスキーのDUNE」で語られています。

この「ホドロフスキーのDUNE」が超絶面白い!

以前はAmazon Primeなどでも配信されていたのですが、今は上のリンクの「アップリンクのオンライン映画館」で観ることができるようです。

まあよかったら予告編だけでも見てください!

「デューン」に興味がある人はもちろんなのですが、ものづくりをしている人、創作活動をしている人、創作物が大好きな人にとっても、ワクワクドキドキさせられることこの上ない! 飽くなき「夢」がいっぱい詰まった勇気と元気を与えてくれるドキュメンタリーです!

そしてこの未完の大作が「スターウォーズ」や「エイリアン」などのその後のSFシーンに重大な影響を与えることになります。

海外マンガでいうとホドロフスキーとメビウスが組んだSF傑作『アンカル』を生み出すきっかけとなりました!
メビウスは言わずもがな、宮崎駿や大友克洋など日本の作家にも大きな影響を与えた伝説的バンド・デシネ作家です。

『アンカル』。80年代に描かれたものなので、現代から見るといささかレトロ感あふれる印象を受けますが、壮大なストーリー、スケール感のある画面など、海外マンガに触れたならば一度は読んでもらいたい傑作です。

なお、メビウスはその後もホドロフスキーと組んで『天使の爪』や『アラン・マンジェル氏のスキゾな冒険』なども上梓していますね。

そのほか、未完のデューンの企画段階に出会った脚本家のダン・オバノンと組んで『ロング・トゥモロー』というマンガを描いたりしています。『ロング・トゥモロー』はフランス語版ではありますが、フランスの伝説的SF誌「メタル・ユルラン」の新創刊バージョン第2号にも掲載されています。

『ロング・トゥモロー』は、リドリー・スコット監督の「ブレードランナー」などにも影響を与えたと言われる作品ですね。

バンド・デシネというと1960年代にスタートした『ヴァレリアン』というスペースオペラの原典とも呼ばれるSFマンガの金字塔的作品が生まれたお土地柄。

『ヴァレリアン』はリュック・ベッソン監督によって映画化もされましたね。

そしてこうしたバンド・デシネ界におけるSFの血脈とでも言うべきものは、日本のマンガやアニメといった新たな息吹を織り交ぜつつ、私の大好きなアーティストであるマチュー・バブレ(Mathieu Bablet)やギヨーム・サンジュラン(Guillaume Singelin)へと受け継がれているように思います。

バンド・デシネというフルカラーで判型も大きいことが多いマンガ形態は、スケール感のあるSF作品が本当に映えるんですよね!
願わくばこうした若手SF漫画家の作品も日本でもっと紹介が進みますように!
映画「デューン」を観られた方、観る予定の方もぜひ海外のSFマンガにもご興味を持ってくださると嬉しいです!

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