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花も実もない

〔解説〕

 「花も実もある」ということわざは古くから親しまれているが、この反対の意味をもつ「花も実もない」が近年多用されている。しかし、「花も実もない」は正式な格言とされていないため、「格言に寄りそう花と実の市民クラブ」から、日本格言制定委員会に登録申請がなされた。
 ところが、日本格言制定委員会はいいかげんすぎて話にならないため、新たに「全国格言提案協会」が設立され、簡単に審査して新たな格言として登録された。

 参考までに、本来の「花も実もある」は、木に花が咲いて実もなるという意味から、「見た目が美しいだけでなく、内容も充実している」「名実ともに要件が備わっている」ということを言ったものだ。また、「道理も人情もわきまえた処理のしかた」などを例えたものでもある。
 類語に「色も香(か)もある」がある。
(注/この段落はパロディーではない)


〔さらに解説〕

 「全国格言提案協会」の阿波多々志会長と「格言に寄りそう花と実の市民クラブ」代表の筒餅すき代氏による事前協議のようすを盗聴した録音があるので、そこから用例などをみてみよう。

「こんにちは阿波会長。今日はお忙しいのにすみません」
「なあに、忙しぶってるだけですよ。こんな美人だったら万難を排してお会いしますよ、ひっひっ」
「ま、おじょうずですこと。今日は花も実もある協議になりそうですわね」
「おっ、さっそく出ましたな、ひっひっ。ぜひそうなってもらいたいものですよ。そうでなければ身も蓋もないですからな」
「あら、阿波会長さんなら身も蓋もありますわよ」
「身も蓋もあるという言い方は変ですよ。それは違います」
「じゃあ、蓋で悪ければ何があればいいんですか」
「いや、何があればとかじゃなくて、身も蓋もあるという言い方はないんですよ。「身も蓋もない」が正しい言い方です。このままでは花も実もない話し合いになってしまいます」
「あ、うまく締めましたね。これなら花も実もありますね」
「筒餅代表には色も香もありますな。近くに行きつけの店があるんですが、どうです、このあと軽く一杯、ひっひっ」



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